第1章 なんだこの数え役満みたいな展開は。

第1話 魔王軍を養うことになりました

ある日。


急に地面に魔法陣が現れた。


「え?」


そんな……情けない声が僕が生まれ故郷で出した最後の言葉となった。


そして不思議な感覚が身を包んできた。


そして不意に、


 君にとって、養うとはどういうことだい?


そんなことを……聞かれた気がした。




目を開けると、そこは異世界アニメなんかでよく見る王様らしき人が立っていた。


「よく来た勇者たちよ!」


大声でそんなことを言われた。


僕はもともと教室にいた。ということは、当然他のクラスメイトもいるわけで大パニック。


「どこだここ!?」

「おかあさーん!!!!!!」

「えっ!?え!?」


しかし人間というのは恐ろしいかな、少しすると冷静になってくる。


「突然召喚してすまない。事情を説明しよう」


それから色々と情報をもらった。


まずこの世界は自分たちのいた世界ではなく、自分たちからすると異世界に当たること。そして、この世界では人間軍と魔王軍が絶えず争っているのだとか。しかし最近魔王軍の足取りが掴めないのだとか。

しかし、魔王軍以外にも敵はいるらしく、それが魔物……という生物らしい。

魔物は魔族や人間と同じく魔力?というものを持っているらしいが、知能はないらしい。魔族は人間と同じく知能を持っているらしいが、魔力が桁違いな個体が多かったり、人間には見られない体の構造をしているらしい。

最近、魔物が活発化しているらしく、魔王軍の危険も度外視できないため、異世界から人を召喚した……というわけらしい。


そして、この世界には魔法があるらしい。魔法があるのにも驚きだが、魔法以外にスキルというものもあることに驚いた。


スキルは一個人が持っているもので、転移する際に異世界者も持っ

た状態で転移するらしい。そして異世界人は強力なスキルを持つんだとか。


「よ、よし。や、やってやろうじゃねぇか。魔物と魔王軍討伐!」


クラスの中心人物がそんな声を上げた。

その声を皮切りに、みんなも声を上げた。どうやら魔物と魔王軍討伐にやる気らしい。正直面倒くさい。


というか勝手に生死がかかっている戦いに巻き込まれたくはない。


それから続々とスキル鑑定が行われた。


そして僕の番になった。


「す、スキル……な、なしです……」


「なぬ!?」


「えっ」


再度情けない声が出てしまった。


あからさまに王様の目つきが変わった。


「兵士よ!即刻その者を摘み出せ!」


そうして僕は城から追い出されてしまった。


ラノベよりも綺麗な追放だった。もっとあってもいいだろ……。スキルなしだからっていきなり態度を変えやがって……現金な王様だな。


「さてどうしたもんかなぁ……」


正直魔物と魔王軍の討伐は乗り気じゃなかったから追放されたのは好都合かもしれない。


「帰りたい」


しかし帰る方法は見当がつかない。


ザワザワ……


「おっと……そりゃこの格好は目立つよな……」

彼らからしたら見たこともない服だもんな……そりゃ目立って当然か。

僕は、その場から離れた。


追い出される際にすこーしだけの食料はもらっているため、すぐに飢え死ぬということはなさそうだ。


僕は街を離れ、少し離れた森へ行くことにした。



「ん〜」


見渡す限りの木。そして着く頃には日も暮れはじめ、今現在はもうすっかり夜だ。


「野宿かぁ……」


僕は適当な木になんとか登り、寝ることにした。




「………げん」


………?


「おい………げん」


……ん?


「おい人間!!!!!」


目が覚めてしまった。下を見るとツノが生えた少女が一人、立っていた。


「君は……」


王から教えてもらった魔王の情報と一致している。つまりは……魔王。頭から生える二本のツノ。そして魔王とは思えぬ子供のような体。

え、僕もしかして殺されるのかな?


すると、背筋が震えるぐらいの迫力で、魔王が喋る。


「恐れ慄け……にんげ」


グギュルルルルルルルル


「……………」

「え?」


台無しすぎる音がその場を支配したのだった。



「えっと……魔王様でいいんだよな……?」

僕は恐る恐る尋ねてみる。

「そうじゃ」

自分の持っている食料を魔王様はばくばく食べている。よほどお腹が空いてたんだな……。というか食いしん坊なのか……?


「で?魔王様はこんなところで何してらっしゃるんです?」

「そもそもお主は何者なんじゃ」

「ただの人間ですよ。まぁ……異世界人ですけど」

「異世界人じゃと?まさかあやつら……人間国の秘術、召喚の儀を行ったのか」

「んまぁ……そうなるんですかね?」

「それならばなぜお主は妾を捕まえてこないのじゃ。お主も妾を討伐するために召喚されたのじゃろ?」

「まぁ……スキルなしで追放された身なので」

「……人間とは身勝手なものじゃ」

「ええ……そうですね」

「なんじゃ、お主も何か人間に悪い思い出でもあるのか?」

「んまぁ……そうですね」

「そうなのか」

それ以上魔王様は聞いてくることはなかった。それが人間に対して悪い思い出がある同士に対する礼儀というやつなんだろう。

もちろんこの話は嘘でもなんでもない。僕は人間運が無さすぎた。

「まぁ……追放されてなくても討伐に参加するつもりはなかったんですけどね」

「なぜじゃ?」

「だって……面倒じゃないですか」

「ただ煩雑だという理由で……?それではお主……どちらにせよ追放されておったではないか……」

「だって人間は身勝手だからですよ。……知り合いは意気揚々としてましたけどね。自分はそれが本当に意味がわからなくて……」

「意味がわからぬとは……?あと、敬語は使わなくても良いぞ。妾が許可する」

「……だって……魔族はただ人と見た目が違い、体の構造が少し違うだけ。確かに人間と違って翼で飛べる種族や皮膚が硬い種族もいるらしいけど……それのどこがいけないんだろうか。彼らが何かしたのか?したとして、人間は何か彼らにしていないのか?それに自分たちは何かされたのか?いいや、されていない。なのに魔族を討伐?意味がわからない。むしろ加害者は王様達と言えるのではないのか?俺らの命を軽々しく見てないか?帰れる方法はあるのか?なかったら加害者はあいつらの方じゃないか。俺らは平和な世界で平和に生きていくはずだったのに、死ぬ可能性がある場所で魔王討伐しろだ?本当に意味がわからない。だから……めんどくさいんだよ」

「………そのように考える人間はお主が初めてじゃ」

「そうなの?」

「あやつら人間は疑おうともしない。奴らは真実なんぞ関係ないんじゃ。大半の人間が信じたことが奴らにとっての真実になるんじゃ」

……その考え方は深く理解できる。

「まぁ……こんな話はやめにして……って……ん?」


急に体の奥底から力が湧いてくる気がする。


「どうしたのじゃ?」

「急に力が湧いてくる気がするんだ……」

「なに?よし、妾に見せてみよ」


少しすると、魔王は口を開いた。


「お主……スキルならあるぞ」

「え?」

「ほれ」


魔王から、自分のスキルが記された紙が渡された。

一体どこから紙を出したのかという疑問は置いておくとして……



『養いの力』

???????????????



養いの力……?本来なら、説明が書いているところなのだが……??となっていて詳細はわからない。


「まぁ、そんなことは置いておいて……じゃ」

「?」

「お主、名は?」

「え?………お……いや、サイトだ」

「サイトか……ではサイト。お願いがあるのじゃ」

急にかしこまった言い方をする魔王に僕は少し身構えた。


しかし、魔王は頭を下げ、


「妾を……いや、魔王軍を養ってはくれぬか!?」


「ええええええええええ!??!?!」


とんでもない提案が出された。


「どどどどどどうしてそうなるんだよ!?」

「お主にしか頼めぬのじゃ!!」

「ええぇぇ……」

「妾は……平凡にあやつらと暮らしたいだけなんじゃ……」


あーあ……嫌なこと思い出したな….。


「わかったよ……仕方ないから養ってあげるよ……」


「てかなんで養うんだ……?普通に救ってとかでいいと思うのに……」

「妾の直感がそう告げているのじゃ。お主に養って貰えば、きっと平凡な日々を送れるとな……」

「子供の勘はあんまし当てにならんことあるしな……」

「子供ではない!!!!!あまりバカにするでないぞ!!!」

「今から人に養って貰おうとしてる奴が何言ってんだ」

「………ぐうの音も出ないのじゃ……」


これからいろんなことに巻き込まれるとはこの頃の自分は思ってもいなかった。


「ていうか……養う以前に自分家すらないんだが」

「あ」



色々と苦労しそうだ……。




ー別所にてー


「何か……強大な気配が近くにいるような……そんな気がする」


とあるは魔王の存在を感じ取っていた。

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