【あらすじ動画あり】6話(3)【和風妖怪ファンタジー】


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【あらすじ動画】

◆忙しい方のためのショート版(1分)

https://youtu.be/AE5HQr2mx94


◆完全版(3分)

https://youtu.be/dJ6__uR1REU

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銀次は辰政と顔を見合わせた。

「で、何て答えたんだ?」と辰政が聞く。


「えぇ。覗きカラクリのご主人はのんびり屋さんなので、大概、瓢箪池か下宿先で昼寝をしていますよと。だからここに来るのもマチマチでと答えると、娘さんは『そうですか』とだけ言って帰っていきましたわ」


辰政が呆れたように銀次を横目見た。


「お前もうちょっと勤勉に働けよ。妖怪たちよりぐうたらってどうよ」

「は、働いてるじゃんっ! 今!」

「え〜」


不満げな辰政をおいて、銀次は再び花ちゃんに向き合った。


「ってことは、紅子は俺を探してるってこと? でも一体、何のために?」

「さぁ、そこまではわかりかねます」


花ちゃんはコクリと首を傾げた。

銀次も一緒になって首を傾げる。だが、いくらそうしても何もわからなかった。


「辰さんっ!」

丁度その時、黒い数珠を手首につけた男が小屋に駆け込んできた。


黒団員のメンバーの一人、今久(いまひさ)だ。

仲見世で新聞売りをしている彼は黒団員の中でも情報通として知られていた。

辰政は彼に何か頼んでいたのか、報告を受けると銀次たちの方を向く。


「ちょっとうちの団員たちに協力してもらって、紅子や紅団について調べてもらった。そしたら面白いことがわかったぜ。聞いて驚くなよ? 俺たちが今まで紅団だと思っていた奴らは、実は偽物だったらしい」

「え……偽物? どうゆうこと?」

「オイラが説明しますね」


今久が人なつっこい顔を浮かべて横から出てきた。


「えー。オイラたちが今日、エンコ中を走り回って聞き込みをしたところ、紅団員の証とされている紅のハンカチをした連中は、実は紅子の追っかけということがわかりました」

「おっかけ?」と銀次が聞いた。

「えぇ。あれと同じですよ。昔エンコ中に溢れていた堂摺連(どうするれん)やペラゴロみたいな。奴らがこれと違うのは、奴らのアイドルが娘義太夫でもオペラの娘役でもなく、不良少年団の女頭目ということです。たぶん連中は絶世の美少女である紅子に近づきたいがために徒党を組み、紅子を追っかけていたんでしょう。しまいには紅子がいつもしているリボンを真似て自分たちのトレードマークを作ってしまった。それを周りが見て、奴らこそが浅草紅団だと勘違いしてしまったという訳です。しかし実際には、奴らは紅子とも紅団員とも直接的な関係はないそうです」

「ってことは何だ。本物の紅団員は別にいるということか?」と辰政。

「そうなりますね。ただ今のところ本物の紅団員の情報は何も掴めていません。規模もメンバーも」


ふと銀次は、手を上げた。


「ちょっと待って。辰っあんは紅団員に会ったことはないの? ほら会合みたいので」

「ん? あぁ、何度かはあるな。けど紅子の使いだと言って、こっそり来るから公の場所には出てこない。それに来るのはいつも違う奴で、同じ顔を一度以上見たことがねぇ。どっかの館にいる執事みたいな男が来たと思ったら、そこら辺で物売りをしているような女の子が来たりする。その頃から紅団ってのは掴めねぇ連中だと思ってたけど、まさかここまでとはな。たぶん紅子の計算なんだろうけど、実際騙されたぜ。あの紅のハンカチは紅団員の証じゃなくて、逆に本物の紅団員を隠すための偽装だったなんてな」

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