第34話 第18階層

 第11階層以降の攻略は、驚くほど順調に進んでいた。


 俺と祈が第10階層のボス部屋で討伐したのは、本来のボスよりも10レベル高い【魔帽の指揮者ウィザード・コンダクター】。

 与えられる経験値は多く、報酬も破格だった。

 そのため第11階層以降ではほとんど苦戦することなく、凄まじい勢いで駆け上がることができていた。


 結果的に、俺たちはわずか3日で第18階層に到着。

 俺のレベルは51、祈は48まで上がっていた。



――――――――――――――――――――


 名前:佐伯さえき 奏多かなた

 性別:男性

 年齢:18歳


 レベル:51

 HP:6249/6249(+1249)

 MP:2952/2952(+590)

 筋 力:963(+192)

 持久力:721(+144)

 速 度:989(+197)

 知 力:585(+117)

 感 覚:684(+136)

 幸 運:670(+134)

 SPスキル・ポイント:60


 スキル:〈共鳴〉LV2、〈水滴石穿〉LV1、〈重奏撃〉LV1

 称 号:【最速踏破者】、【編纂者】


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 〈共鳴きょうめい〉LV2

 ・対象者と、魂の共鳴を行うことができる。

 (両者の信頼度が一定数値に達した場合のみ使用可)

 ・共鳴者との間にパスが生まれ、両者のステータスが20%上昇する。

 (上昇率はスキルレベルと、共鳴者の人数によって変動)

 ・現在の共鳴者数:1/2

 ・共鳴者:白河祈


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 〈思念伝達しねんでんたつ〉LV1

 ・共鳴者と思考を伝え合うためのスキル。

  一定範囲内であれば、パスを通じて会話することが可能。

 ※〈共鳴〉の派生スキル


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最速踏破者さいそくとうはしゃ】(称号)

 ・ダンジョンの階層最速踏破者に与えられる称号。

 ・フロアボスとの戦闘時、HPとMPを除く全パラメータが22%上昇する。

  上昇率は、最速踏破数が増えることに加算されていく。

 ・現在の最速踏破数:17(ボーナス+5%)


――――――――――――――――――――


編纂者へんさんしゃ】(称号)

 ・スキル発動時、演算力と技術力に高い補正がかかる。

 1.高度演算補正

  初めて発動するスキルでも直感的に使用法を理解し、複数を同時に発動する際の難易度が下がる。

 2.???(条件を達成していないため未開放)

 3.???(条件を達成していないため未開放)


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 名前:白河しらかわ いのり

 性別:女性

 年齢:18歳


 レベル:48

 HP:4942/4942(+988)

 MP:3438/3438(+687)

 筋 力:561(+112)

 持久力:594(+118)

 速 度:587(+117)

 知 力:830(+166)

 感 覚:717(+143)

 幸 運:704(+130)

 SPスキル・ポイント:330


 スキル:〈調律〉LV1、〈慧眼〉LV2

 称 号:【調律士】


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 〈調律ちょうりつ〉LV1

 ・魔力の波長を整え、様々な効果を生み出すことができる。


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調律士ちょうりつし】(称号)

 ・魔力の操作に高い補正がかかる。

 1.魔力視認

  自身、他者、および環境中の魔力の流れを可視化できる。(オンオフの切り替え可能)

 2.???(条件を達成していないため未開放)


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 町の食堂に腰を下ろし、俺たちは改めてステータスを確認する。

 俺は溜まったSPを200消費し、〈共鳴〉のレベルを2に上げた。

 これでステータス上昇率は15%から20%に増加。

 さらに共鳴可能人数が2人になった。


 祈のSPについては、まだ保留にしてある。

 〈調律〉のスキルレベルを上げるには400SPが必要だが、現時点では330SPしか溜まっていないからだ。


 俺が黙々とステータス画面を見ている間、祈が少し不安げな表情で呟いた。


「なんだかこれだけSPが溜まっているのを見ると、勿体なく感じますね。他のスキルを獲得するか、レベルを上げた方がいいんじゃないかって……」


 俺は祈の心配そうな顔を見て、優しく微笑んだ。


「短期的にはその通りかもしれないが、〈調律〉はスキルレベルを上げていくことでどんどん真価を発揮していく。長い目で見たら、今は我慢するべきだと思う」

「……これ以上強くなるんですか? 現時点でもう、すごく役に立ってくれていますが……」


 祈の言う通り、〈調律〉の効果はすさまじい。

 【調律士】の称号効果によって魔力操作技術が上昇していることもあり、今の祈が使うバフとデバフは、最前線組と比べても引けを取らない領域に来ているはずだ。


 だけど、俺が〈調律〉の持ち主を仲間にしたいと思った理由はそれじゃない。

 スキルレベルを上げることで獲得できるが、〈共鳴〉を十全に活かす上で必須だからだ。


(もっとも、それには次の共鳴相手をさっさと見つける必要もあるんだが……)


 俺は内心で苦笑する。

 祈のように優秀な人材が見つかればいいんだが、この階層では難しいだろう。

 〈共鳴〉のスキルレベルを上げても、その真価を発揮するのはしばらく先になる。


 それを解決するには、一刻も早く最前線組に追いつくことだが――


 そんなことを考えていた矢先だった。

 隣のテーブルから、大声が響く。


「マジか!? 『古代神殿跡こだいしんでんあと』が出現したのか!?」


 俺の耳に、聞き逃すことのできない名前が飛び込んできた。


「古代神殿跡……」

「知っているんですか、奏多さん?」

「ああ、この階層にごく稀に出現するレアダンジョンだ」


 レアダンジョン。

 それを説明するためには、この【夢見の摩天城】の仕組みについて説明する必要がある。


 まず大前提として、この世界でダンジョンと言えば、グランドダンジョン【夢見の摩天城】のことを指す。

 しかしそれ以外にもダンジョンと呼ばれる場所は存在し、各階層には様々な魔物やマジックアイテムが現れる小規模なダンジョンが常設しているのだ。

 特定の階層内でダンジョンと言った場合、その階層に存在するダンジョンのことを指すことも多々ある。


 その中でもレアダンジョンというのは常設でなく、一定の条件達成時、もしくは完全ランダムで出現するダンジョンのことを指す。

 そしてダンジョンボス討伐など、各ダンジョンごとのクリア条件を達成することで消滅する仕組みなのだ。

 その分、貰える経験値や報酬は優秀なことが多い。


 中でも今回の『古代神殿跡こだいしんでんあと』は、第18階層に出現するレアダンジョン。

 内部に出現する魔物のレベルは同階層に比べて少し高いが、大量の経験値を獲得できる場所だ。

 この機会を逃す手はない。


「少し方針を変えよう、祈」

「もしかして……」

「ああ。せっかくだしここで、祈のレベルが55――〈調律〉のレベルを上げられるSP量を目標に経験値稼ぎといこう」


 かくして、俺と祈の方針が決まる。


 しかし、この時の俺たちは予想していなかった。

 『古代神殿跡こだいしんでんあと』で、ある出会いが待っていることを。



――――――――――――――――――――――――――――


現状の振り返り兼、今後の展開の布石回でした。

次回、『古代神殿跡』攻略開始です。

ぜひ楽しみにお待ちください!

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