第7話 噂の新人
10年後の未来から回帰して、早3日。
俺は順調に攻略を進め、第10階層の入口に存在する『グロウスタウン』に到着していた。
ここに到達するまでの道のりは驚くほどスムーズだった。
モンスターを蹴散らし、
まるで時間を巻き戻したかのように、一周目で得た知識と経験が、俺の冒険を加速させていった。
「っと、そうだ……」
ここでひとまず、俺は現時点のステータスを確認する。
――――――――――――――――――――
名前:
性別:男性
年齢:18歳
レベル:26
HP:3003/3003 MP:1348/1348
筋 力:424
持久力:341
速 度:442
知 力:267
感 覚:301
幸 運:293
スキル:〈共鳴〉LV1、〈水滴石穿〉LV1
称 号:【最速踏破者】
――――――――――――――――――――
【
・ダンジョンの階層最速踏破者に与えられる称号。
・フロアボスとの戦闘時、HPとMPを除く全パラメータが9%上昇する。
上昇率は、最速踏破数が増えることに加算されていく。
・現在の最速踏破数:9
――――――――――――――――――――
「うん、ひとまずここまでは順調だな」
ステータスは普段から活用しているパラメータほど伸びやすい特徴がある。
そのため速度や筋力はガンガンと伸び、魔法系のスキルを持たない現状では知力などのパラメータがあまり伸びていないという状況だ。
「まあ、このあたりは今後の戦闘スタイル次第で変わっていく部分でもあるから、現状だとそこまで気にする必要はないだろう。それよりも今、気にするべきは……」
俺は息をひそめながら、周囲の声に耳を傾けた。
「おい、聞いたか? とんでもない早さでチュートリアル階層を駆け抜けている新人がいるらしいぜ」
「ああ、ノーネームとかいう奴だろ? 過去の記録では、8階層までの到達最速が10日だったはずなのに、たった3日で駆け抜けたんだとよ」
「いや待て! たった今更新が入って、9階層も突破したみたいだぞ!」
「はあ!? 8階層をクリアしたのが数時間前だぞ!? いったいどうなってるんだ!」
……どうやらここまでの躍進ぶりが、冒険者の間で噂になっているらしい。
彼らに限らず、他の冒険者たち……それこそ第8階層まででも同様の噂を耳にすることが多々あった。
「……やっぱり、名前を変えておいてよかったな」
本名を登録したところですぐに俺だとバレるわけではないが、この様子だと念を入れて偽名を使ったのは正解だろう
最前線に追いつくまでは、できるだけ目立ちたくない。
この調子で身を隠しながら攻略を進めるつもりだった。
と、そんな風に考えていた最中――
「ん、待てよ? そのノーネーム、たった今9階層を攻略したってことは、今はこの階層にいるってことだよな?」
「確かにそうだ! なんならもう、この町にも来ているかもしれないぞ」
「見つけ次第パーティーにでも誘ってみるか。こういうのは早い者勝ちだしな」
冒険者たちの話す内容が、俺にとって都合の悪い方向に変わっていく。
俺は踵を返し、とりあえずその場から離れることにした。
十分に距離を置いた後、俺は改めて今後のことについて思いを馳せる。
「そろそろ、次のことを考えないとな」
ここまでは効率重視で、ひたすらにボスを倒して次の階層を目指した。
だが、この第10階層ではそうもいかない。
チュートリアル階層の最後を飾るこの階層では、第1階層と同様ある条件を満たすことでエクストラボスに挑戦でき、優秀な報酬が貰えるからだ。
ちなみにその条件とは、第10階層に広がる『迷いの森』と呼ばれるエリアのボスを討伐し、あるアイテムを入手するというもの。
そのアイテムをボス部屋で使用することによって、エクストラボスへの挑戦権が得られるというわけだ。
そのため第9階層までとは異なり、この階層にはいつもより長い間、滞在することになるだろう。(とはいっても数日程度だが)
そして、俺にとって重要事項がもう一つだけ存在する。
「欲を言えば、〈共鳴〉を活かせる仲間も欲しいところなんだが……」
第1階層のエクストラボス戦で得た、隠しスキル〈共鳴〉。
苦労して手に入れたスキルだが、その仕組み上、一人では真価を発揮できない。
力を引き出すためには、信頼できる仲間が不可欠なのだ。
理想を言えば、強力な冒険者をパートナーにしたい。
それもできれば、〈共鳴〉と相性のいい
「……まあ、それが難しいのは分かってるけどな」
トップクラスの冒険者が集うのは、最前線の第42階層。
俺の立ち位置からすれば、まだまだ遠い彼方だ。
それに
確実に入手するための手段自体は存在するが、それも第40階層以降の話。
この階層で保有者が見つかることはまずないだろう。
「まあ、数か月以内に追いつく気だから、もう少しの辛抱だな」
そう自分に言い聞かせる。
焦りは禁物だ。着実に、一歩ずつ前に進もう。
仲間との出会いは、きっとその先にある。
そんな風に考えをめぐらせていた、その時だった。
「だから言ってんだろ! お前が足手まといだから追い出すんだって!」
(……ん?)
怒鳴り声が俺の思考を遮る。
俺は思わず、声のした方向に視線を向けた。
すると、
「あれは……」
そこで目にしたのは、一人の少女が複数の男女に囲まれている光景だった。
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