第6話 NoName
「世界最強へのリベンジといこうか」
そう意気込みつつ、俺はさっそく第2階層へと向かおうとしたのだが――
『挑戦者が、本ダンジョンの第一階層、最速踏破記録を更新しました』
『ランキングに記載される名称を登録してください』
――そんな俺の元に、新しいシステム音が鳴り響いた。
つんのめるような態勢で、俺は思わず動きを止める。
「忘れてた。そういや、こんな仕組みもあったっけ……」
面白い点と言うべきか、奇妙な点と言うべきか。
摩天城は攻略における様々な記録が計測され、中にはこのようにランキングとして摩天城中に公開されるものもある。
そのランキングに載ることが、冒険者にとって一種のステータス(原義の意味)になったりするのだ。
「冒険者間の競争意識を煽るためのものなのか、それ以外の目的があるのかは分からないが……さて、どんな名前で登録しようかな」
本名をそのままというのはナシだ。
最前線に追いつくまで、できるだけ周囲から目立ちたくない。
ここはとりあえず、俺ということさえバレなければ何でもいい。
ということで、
「そうだな……
そう告げると、さらにシステム音が鳴り響く。
『確認しました。冒険者【NoName】が第一階層のランキング一位となりました』
『【NoName】による初の踏破記録更新であったため、称号【最速踏破者】が与えられます』
称号とは、ダンジョン内で何らかの偉業を達成した際に与えられるもの。
中にはスキルを上回るほど、優秀な効果を有している称号もある。
その点、この【最速踏破者】はと言うと……
――――――――――――――――――――
【
・ダンジョンの階層最速踏破者に与えられる称号。
・フロアボスとの戦闘時、HPとMPを除く全パラメータが1%上昇する。
上昇率は、最速踏破数が増えることに加算されていく。
・現在の最速踏破数:1
――――――――――――――――――――
一周目で知っている通りだが、非常に優秀な称号だった。
現時点ではパラメータの上昇率が1%だから効果はそこまでに思えるが、今後、ダンジョンを最速で駆け上がっていけばこの数値も膨れ上がっていく。
俺が摩天城を攻略する上で、かなりの助けになってくれるだろう。
「最速踏破者……これが二周目で初めての称号だな。
ちなみにだが、姉妹称号として階層初攻略者に与えられる【初踏破者】という称号もあったりする。
もうしばらく後になるだろうが、その称号を獲得できる日が今から楽しみだ。
「よし。これで今度こそ、この階層で済ませるべきことは全部だな」
そう呟きつつ、俺は今後の計画を再確認することにした。
チュートリアル階層である1~10階層のうち、俺が次に手に入れるべき物は最後の10階層に存在している。
逆に言えば、それ以外の階層はそれほど重要ではないのだ。
もちろん、2~9階層にも優秀なアイテム自体は存在するが、最速でダンジョンを駆け上がりたい俺にとって必須と呼べるほどのものではない。
それならガンガンと攻略を進め、【最速踏破者】のパーセンテージ上昇に務めた方がよっぽど効率的だ。
「それじゃ、行くとするか」
そうして、俺は第2階層への扉を潜るのだった。
――――――――――――――――――――
名前:
性別:男性
年齢:18歳
レベル:17
HP:1933/1933 MP:520/862
筋 力:254
持久力:213
速 度:270
知 力:160
感 覚:177
幸 運:168
スキル:〈共鳴〉LV1、〈水滴石穿〉LV1
称 号:【最速踏破者】
――――――――――――――――――――
◇◆◇
それから二日後。
俺は順調に攻略を進め、第10階層の入口に存在する『グロウスタウン』に到着していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます