第3話 智慧の蛇
その後も、俺は次々と魔物を斬り倒しながら第1階層の奥に向かっていった。
ゴブリンだけでなく、レッサーウルフやスライムといった魔物たちを倒すことで順調に経験値を獲得していく。
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『SPを10獲得しました』
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『SPを10獲得しました』
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『SPを10獲得しました――――
そんなこんなで、連続で鳴り響くシステム音を聞きながら突き進むこと約30分。
30体以上の魔物を倒したことでレベルは10まで上がり、無事にボス部屋手前までたどり着くことができた。
俺はここで立ち止まり、いったん現在のステータスを確認する。
――――――――――――――――――――
名前:
性別:男性
年齢:18歳
レベル:10
HP:1127/1127 MP:490/490
筋 力:140
持久力:121
速 度:149
知 力:92
感 覚:101
幸 運:96
スキル:なし
称 号:なし
――――――――――――――――――――
「よし、これならボスとも十分戦えるはずだ」
各パラメータが大幅に上昇し、SPも大量に獲得している。
ちなみにSPとは、新スキルの習得やスキルレベルアップのために必要なポイントのことを指し、レベルが1上がるごとに10獲得することができる。
さっそく今ここで、新しいスキルを獲得してもいいのだが――
「それよりもまずは、ボス部屋まで行った方がよさそうだな」
摩天城に入場してから、既に40分が経とうとしている。
ボス部屋には一組ずつしか挑戦できないという事情もあり、できれば少し余裕をもって現地に着きたい。
そんなわけで、俺はひとまずスキル獲得を後回しにして、目的地へと向かうことにしたのだった。
5分後。
ボス部屋まであと百メートルのところまで辿り着いた俺の視界に入ってきたのは、固く閉ざされたボス部屋の扉だった。
ふむ。これは……
「どうやら、現在進行形で攻略中の奴らがいるみたいだな。とはいえ、第1階層のボスなら討伐に10分もかからないだろうし、特に問題はなさそうだが……」
しかし、分析している最中、俺は気付いた。
ボス部屋のすぐそばに複数人の冒険者が立っているのを。
恐らく順番待ちだろう。前のグループの挑戦が終わるのを彼らは待っているのだ。
普段なら当然、俺も彼らが攻略するのを待ってから、ボスに挑戦するだろうが――
「今回ばかりは例外だ」
数分後。扉が開いたタイミングを見計らって、俺は加速した。
そしてそのまま、順番を待っていた彼らの間を駆け抜けていく。
「えっ? ちょ、ちょっと待て! お前、いったいどこから――」
当然、後ろからは俺を咎めるような声が飛んでくる。
(悪いな。今だけは許してくれ。俺にはどうしても、今すぐボスを倒さなきゃいけない理由があるんだ)
心の中で謝罪した後、俺は内側から扉を閉めた。
その結果、ボス部屋内には無事に俺一人だけとなる。
「ふー」
そこまで来て、俺はゆっくりと深呼吸する。
これで何とか条件を達成することができたはずだ。
第1階層のフロアボスはレベル10の【白き番犬】。
大した特徴もなく、最低限のステータスがあれば倒せる弱小魔物だ。
「だけど今回、俺が戦いたいのはソイツじゃない」
幾つかの条件を達成した場合、出現するボスは変化する。
一周目の記憶を振り返りながらその場に立っていると、システム音が鳴り響いた。
『挑戦者が
『【夢見の摩天城】に入場してから、1時間以内の挑戦であることを確認しました』
『挑戦者は特別に、通常のボスではなくエクストラボスに挑戦できます』
『エクストラボスに挑戦しますか? YES/NO』
答えは初めから決まっている。
「もちろん、YESだ」
頷くと、さらにシステム音が続く。
『挑戦者の意志を確認しました』
『エクストラボス【
直後、俺の目の前に黒い靄が集まり始める。
かと思った、次の瞬間――
『ァァァァァアアアアアアアア!!!』
靄の中から姿を現したのは、漆黒の鱗に包まれた巨大な蛇だった。
鋭い牙を剥き出しにし、赤く光る目で俺を睨みつける。
その姿は、まさに絶望の化身とでも言うべきだろう。
俺は目を凝らし、その蛇をじっくりと観察する。
――――――――――――――――――――
【
・レベル:25
・フロアボス(エクストラボス):第一階層
――――――――――――――――――――
冒険者はステータス獲得後、魔物やアイテムに意識を集中することでその情報を確認することができる。
そこには確かに、智慧の蛇の情報が刻み込まれていた。
レベルは25。
今の俺は10レベルであり、言うまでもないが遥か格上だ。
だけどそれだけ、討伐した時の報酬は大きく――
「〈
俺たちが一周目の先に辿り着くために必須のスキル。
それを手に入れるためなら、この程度大したリスクではない。
今の俺には、一周目で得た経験と知識が存在する。
倍以上のレベルを持つ相手であろうと、負けてやる気は一切なかった。
「――いくぞ」
こうして、二周目における初めてのボス戦が幕を開けるのだった。
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