第2話 夢見の摩天城
さて。10年前に回帰して再びダンジョン攻略を志したわけだが、ここで少し摩天城について振り返るとしよう。
【夢見の摩天城】。
それは20年前――否、回帰後の今から見て10年前に、突如として世界中に出現したグランドダンジョンの総称だ。
その数は実に13個にも及び、その一つが日本の首都上空に出現した。
通称『日本ダンジョン』と呼ばれており、現在の到達階層は42階層である。
ちなみにだが、これは世界で見て2番目の攻略速度。
1位は『アメリカダンジョン』の48階層であり、一つだけ群を抜いている。
これはアメリカ以外の国にとって、大きな問題としてよく取り上げられていた。
というのも、摩天城では階層が一つ上がるたびに出現する魔物のレベルは上がり、得られる資源の価値も膨れ上がっていく。
攻略が進めば進むほど、その地域は強力な冒険者とアイテムを抱え込んでいることになる。
そのため、各国は上位陣に置いていかれまいと、こぞって自地域にあるダンジョン攻略を推奨していた。
「まあ、
振り返りも程々に。
俺は今、日本ダンジョンが浮かび上がる真下にいた。
当然、摩天城に挑戦するためだ。
では、地上からどうやって浮上している摩天城に入るのか。
その答えは、ずばり
俺はさっそく、
「摩天城に行きたいんですが」
「かしこまりました。それでは簡易ステータスをお見せください」
「いえ、実はこれが初挑戦で……」
そう告げると、受付の動きが止まる。
「初挑戦の方でしたか。それでしたらガイドをつけることをオススメしますが……」
「大丈夫です。中に知り合いがいるので、その人にお願いしようかと」
当然、この言葉は嘘である。
こうでも言わないと、初心者を中に入れてくれないからな。
その目論見はうまくいったのか、受付がコクリと頷く。
「それでは、よい冒険を祈っております」
許可が出た。
俺はそのまま
すると、次の瞬間。
軽い浮遊感に襲われた直後、俺の前には巨大な町が現れていた。
石畳の広場を中心に、中世風の建物が立ち並ぶ。
街灯は魔法の光で明るく輝き、多くの冒険者たちが行き交っていた。
武器や防具を売る露店が並び、遠くには上層へと続く巨大な螺旋階段が見える。
活気に満ちた空気が、この場所の特別さを物語っていた。
「……回帰前を含めて、ここに来るのは久々だな」
ここは第1階層の入口に存在する、通称『始まりの町』。
全ての冒険者が初めて足を踏み入れるダンジョン内都市だ。
摩天城の中は非常に巨大であり、一階層につき幾つもの町やフィールド、さらには摩天城とはまた別のダンジョンすら存在する。
そのため、多くの冒険者は地上に戻ることなく、摩天城内で生活するのが一般的だったりもするほどだ。
「懐かしさを噛み締めている暇はない。さっそく行動を開始しないと」
目的のスキルを得るためには、とにかく時間がない。
具体的には、1時間以内に第1階層のボス部屋へ辿り着かないといけないのだ。
俺はすぐに始まりの町を抜けると、走って5分ほどの場所にある『ゴブリンの森』へと向かった。
すると――
「ギィィィ!」
耳に障る鳴き声と共に、緑色の小鬼――ゴブリンが出現する。
それを見た瞬間、俺は事前に用意していた短剣を腰から抜いた。
そして、
「はあっ!」
「ギィ!?」
たった一振りで、その首を斬り飛ばす。
この森に出現するゴブリンは第一階層の魔物ということもあり非常に弱く、武器さえあれば生身の状態でも十分に討伐が可能だ。
そして、本番はここから。
生身の人間が初めて魔物を倒すと、ステータスを獲得することができる。
ステータスがなければ、このダンジョン内で生きていくことはできない。
俺がそう考えていた直後だった。
『初めての魔物討伐を確認しました』
『対象者にステータスが与えられます』
そんなシステム音が鳴り響いた直後、俺の前にステータスウィンドウが出現する。
――――――――――――――――――――
名前:
性別:男性
年齢:18歳
レベル:1
HP:100/100 MP:50/50
筋 力:10
持久力:10
速 度:10
知 力:10
感 覚:10
幸 運:10
スキル:なし
称 号:なし
――――――――――――――――――――
「よし! 無事にステータスを得られたな」
見慣れた画面であり、ステータスの値は回帰前と比べものにならないほど低い。
しかしこれは、俺が再びスタート地点に立てた証明でもあった。
「とはいえ、喜んでばかりもいられない。さっさとレベル上げを再開しよう」
そう呟いた後、俺は次々と魔物を討伐していくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます