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雄鶏の鳴き真似をして育つ雛 マイクロフォンに唇押しあて


あまりにも知り過ぎている君らしさ その声 言の葉 瞳の色まで


ゆっくりと死んでく時の再現に守られたのは生命の意義


五月雨に 死んだ樹木とまじないを 紫の花弁 燃やし尽くして


梅雨入りに浮かべた手紙 こめられた意味は別れと諦念と



あなたにはこんな悩みはないんでしょう 恨んでるのはどうせ僕だけ


いつの日か言ってやりたい嫌味のために脳の容量割きたくはない


遺言と僕の心臓 それだけを残して去く意味 理解はできない


君はもう忘れてしまったのだろうか 僕の覚悟とはじまりの緋を


あの夜の君には確かに嘘はなかった ひとの心も恐らくなかった



さようなら 一筋ひいて去る無情 ご自愛ください 救えぬこころ


花吹雪 欲の権化と切実さ まぼろしでもいい そこにいてくれ


好きな服 忘れない歌 背負う影 夏が来るたび君に出逢える


街灯と星の数ほど夢をみる 陽に灼かれてく 恋知らずとも


夏ひとつ、繋いだ日々のその先に 僕らの未来を迎えるために



幾数年 経つほど育った愛情と 返したいもの心に秘めて


画面越し 潤んだ瞳をしらぬ君 それでいいんだ 今はいいんだ


知らぬまに 流れた時間と使えずに終わってしまった映画のチケット


あのときの記念写真などみたくない あれは墓標だ ぼくたちの


塩分を孕んだ雨粒 路を穿つ 削れていくのは時代のさだめ

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