26日目 デート




 テストを体調不良と偽って休み、私は夕映と一緒にショッピングモールに来ていた。

 ──ちなみに今は、普段とは違って制服じゃなく私服を着ている。


 一緒に歩いて。こっそり手を繋ぎながら、モール内を散策する。


 服屋さんに行って服を試着して、夕映の好きなゲーム屋さんに行って新作のゲームを見て、フードコートでクレープを交換して食べて。私たちは沢山遊んだ。


「デート、久しぶりだね?」

「……そうかも」


 私がやや素っ気なく返すと、夕映は心配そうに顔を覗き込んできた。


「汐璃、あんまり元気ない?」

「……ううん。ありがとう。大丈夫だよ」


 ここ最近。私の元気がないことがある理由は、多分夕映にも伝わっている。

 だから、本当は私が気を遣わないといけないはずが、夕映から気を遣われてばっかりだ。その優しさはもちろんとても嬉しいけれど、どうしても元気が出ない時は出ない。


 本当はせっかくのデートだから、もっと元気を出したいのだけど。


「ね。一か所行きたい場所があったんだ。着いてきてくれる?」

「……いいけど、どこ行くの?」

「こっち! ほら、行こ?」


 夕映に手を引かれるままにやってきたのは、アクセサリーショップだった。かわいいものにおばちゃんがつけてそうなもの、高いものから、安価で手に取り易そうなものまで様々だ。


 目をきらきらとさせながら「どう?」と夕映が聞いてくる。


「かわいいけど……何か買いに来たの?」

「うん。汐璃とお揃いのアクセサリー買おうと思って。どんなのが好き?」


「私は……」


 どうだろう。夕映と違ってあんまりアクセサリーをつけるタイプじゃないし、かわいいと思うものがあっても、私がつけているという想像があんまりつかないというか。


「わ。これかわいい……! 汐璃、これは?」


 と、夕映が見せてきたのは、飾り気のないシルバーのペアリングだった。

 これならあまり目立たないし、お値段も手ごろでお財布にも優しい。


「……いいかも」

「じゃあ、これにしよっか!」


 そうしてペアリングを買った後、夕映はお店を出て、早速箱からリングを取り出した。


「ね。はめて?」と、分かってやっているのか左手を差し出してくる。

 私が無言で中指に指輪をはめると、ちょっとだけ不満そうな顔をされた。


 ……けれど。


「……今はこれで、限界だから。ごめん」


 そう私が告げると、夕映はびっくりしたように目を見開いて、それから笑みを浮かべた。


「今は、ってことは?」


「……ん。また、いつかね」









 残り、4日。

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