25日目 サイズじゃない




「汐璃って、S? それともM?」


 嬉々として夕映が質問してきた。けれど、簡単にその手には乗らない。


「……それ知ってる。服のサイズ聞いてるやつでしょ? S」


 私が何でもない調子で答えると、夕映は両手の指でばってんを作ってみせた。


「ぶぶー。サディズムかマゾヒズムか、でしたー」

「……その聞き方で、そっちが正解なことあるんだ」


「私は性格的にはSだけど、服はL……つまりSLだね」

「蒸気機関車……?」


「恋愛Sの人は、独占欲が強くて、恋人に甘えられるのが好きなんだって」

「Mの人は?」

「心配性で尽くしがち、振り回されやすい、って」


 スマホで検索した文を読み上げて、夕映が私の方をじっと見てくる。


「汐璃ってSっぽいけど、なんだかんだ抵抗せずに振り回されてるよね。実はM?」

「振り回してるのは夕映だけどね」

「つまり、相性ばっちりだ」

「……そうなのかなぁ」


 なんだか上手いこと纏められたような気がしないでもない。

 あと、圧迫感が好きだったりする夕映は、M寄りじゃないかとも思う。


「はい! 汐璃の意外な一面が分かったところで、次の質問コーナーに行きましょう」


 なんだかよく分からないコーナーを始めようとした夕映に、私はジト目で言及する。


「──夕映。今日は一段とテンション高いね」


「そりゃあだって、明日は汐璃とのデートだからね」

「当人が初耳なんだけど……?」


 私の知らない間に、私といつ約束を取り付けたというのだろうか。


「……で、本当は?」

「テストが全然できなかったからその反動」

「そっか……」


 ──まぁ、夕映も私の部屋で全く勉強していなかったわけではないけれど。それでも、勉強量がそこまでじゃないぶん、山を外すと全然できないこともあるだろう。


「次のテストの時は勉強教えてね」

「…………」


 寿命が残り1桁になった夕映が言うと、ブラックジョークみたいだ。


「……そう言えば。デートの約束はいつしたの?」


 ふと、気になって聞いてみる。


「汐璃がうたた寝してるときに、寝言で」

「捏造っぽいなぁ。それに明日、テスト2日目だよ?」


「……汐璃は私とデートに行くの、嫌?」


「……。その聞き方はずるい」










 残り、5日。

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