24日目 椅子取りゲーム
私が机に向かってテスト勉強をしていると。
「ね、椅子取りゲームしよう」と、また急に夕映が思い立った。
「この部屋、椅子ないけど」
私が普段使っているのは座卓で、床には絨毯を引いてあるから椅子はない。
「座れるとこなら、ベッドがあるじゃん」
「一つだけね……って、二人ならそれでいいんだっけ」
二人で椅子取りゲームなんてしたことがないから、イメージがつかない。
「ほら、汐璃も立って!」
「……はい」
言われるがままに渋々私は立ち上がる。
「それじゃ、音楽流すね。ざーんーこーくーな天使の」
「夕映が歌うんだ……」
カラオケの時に思ったけど、相変わらず鈴を鳴らしたような美声だ。
……でも、夕映が歌うってことは私に勝ち目なんてない気がする。
なんてことを考えながら部屋の中を二人でぐるぐる周回していると、私がベッド前に来た辺りで、ぴたりと夕映が歌うのをやめた。
私がゆっくりとベッドに座ると、夕映は私の足の間にちょこんと座った。
「ふふ。私の負けー」
嬉々として首を振り向かせてきながら、夕映が告げる。
何というか、顔が近い。夕映の長くて少し癖のある髪から、甘い匂いがする。
「その割には嬉しそうだけど」
「特等席だからね」
「……じゃあ、特等席に座れなかった私の負けかな」
夕映がご機嫌なみたいだから、それでもいいけれど。
「……汐璃の足の間、安心する」
「なんだか変態ちっく」
「でも、私はそろそろ勉強に戻るね」
「ええー……」
不満げな夕映を置いて、私は身体ごと後ろに下がってベッドから立ち上がる。
「……テスト明日からだけど。夕映はやっぱり、勉強しないの?」
「だって私、その前に死んじゃうんでしょ?」
そう言われると何も言えなくなる。……でも、私は勉強しないといけないし。
「…………。でも、夕映が勉強できたら、私も見直しちゃうよ」
「なんだか急に頑張りたくなってきた。汐璃、数学の教科書貸して? あとルーズリーフも」
思った以上に簡単に釣れた。
「はい、これ」
「じゃあ、一緒に勉強しよっか」
「うん」
そう言って勉強を始めたのだが、夕映は手元を隠しながら熱心にペンを動かしていた。
私が覗き込もうとすると、さっとルーズリーフを隠された。
「……夕映。なにやってるの?」
「見ちゃダメ」
「絶対落書きしてる……」
残り、6日。
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