18日目 テスト勉強




 座卓に参考書とノートを広げて、私は筆箱からペンを取り出す。


「そろそろテストだから、勉強します」

「汐璃が本気だ……」


 私はある程度、真面目に勉強をしてテストに挑むタイプだ。成績をそこまで気にしているわけじゃないけど、学年一桁台順位も取ったことがある。

 対して夕映は、あんまり勉強はしない。でも運がいいのか先生の好みを分かっているのか、テスト勉強の山をよく当てる。そのため毎回ではないけど成績は上位だ。


「……んー」

「さっきから満遍なく勉強してるけど、汐璃って得意教科とかあるの?」


「得意なのはないけど、苦手なのは外国語かなぁ。夕映は?」

「得意教科は日本語!」


 あまりに自信満々に言われたので、そんな教科があったかと一瞬考えてしまった。私たちの通う高校は普通科なので、授業の科目は一般的だ。


「……学校のテストで出る分野では?」

「外国語も分かるよ?」

「そうなんだ?」


 私が聞き返すと、さも自信ありげな表情で夕映が口を開いた。


「Hi! How are you?(や。調子はどう?)」

「Nothing special. How about you?(特に変わりないかな。夕映は?)」


「……What?(……なんて?)」


「As usual. And you?(いつも通りだよ。夕映は?)」

「That sounds like a lot of fun!(とても楽しそうだね!)」

「……Not quite.(……そうでもないよ。)」

「You make it sound like it's my fault!(まるで私が悪いみたいに言うね!)」

「Well…….(そうかなぁ……。)」

「Incidentally, I am a Pen!(それはそうと、私はペンです!)」

「…………」


 ひと呼吸おいて、私は夕映に詰め寄る。


「I don't understand what you want to say.(何が言いたいかよくわからない。)」

「う……I don't speak English.(う……私は英語が話せません。)」


「Then……why did you use English?(じゃあなんで英語を使ったの?)」

「Sorry. I didn't quite get that.(すみません。よくわかりません。)……ねぇ、そろそろ普通に話そ?」

「……。Ты мне нравишься」

「今の英語でもなかったよね……⁉」

「Твоя улыбка пленительная」

「元に戻ってよー……!」


 夕映で遊ぶのは、やっぱり楽しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る