16日目 告白




「汐璃。私たち、付き合ってないじゃん?」

 ──なんて。急に夕映が私の方を見て言い出した。


 私は小さく欠伸を零しながら返す。


「そうだね」


「ね。どういう風に告白したら、成功率が高いと思う? やっぱり『一生君の手料理が食べたい』かなあ。それとも『生涯君だけを愛してる』かなあ」


「プロポーズばりにヘヴィ。あとその生涯、今日入れてあと15日しかないよね。っていうか……そもそも、それ告白相手に聞くことかなぁ」


「じゃあ、誰に聞いたら一番正確な答えが返ってくるの?」

「そりゃあ私かもしれないけど」


 というか。


「……夕映、私と付き合いたいの?」


 夕映が私のことを好きでいてくれていることは知っていたけど。付き合うとか、告白とか。そういう話は今までもちゃんとしてこなかったから、今みたいな関係性が心地よくてそうしているのだと思っていた。……でも、夕映は違うんだろうか。


「なるほど。……汐璃、私と付き合いたいの?」

「今のは告白時の台詞じゃなくって」


 そんな上から目線で告白してこられても、反応に困るだけだ。


「……んー、じゃあ。汐璃は私のこと、嫌い?」

「好きだよ。でも、付き合うとかそういうのじゃない……と思う」


 私は。百合とか、そう言った言葉で私たちの関係性を表すことはあまりしたくない。

 ……夕映は、そうじゃないのかもしれないけど。


「じゃあそれでいっか」

「いいんだ……」


 違った。別に今のままでいいらしい。


「逆に夕映は私のこと、そんなに好きなの?」

「好きだよ。異性として」


 百合じゃなく、そもそも私が異性だと思われている説が浮上してきた。


「……。告白時の台詞としては間違ってないと思うけど、私と夕映は同性だからね」


 私がとりあえず突っ込むと、夕映は「あ」と口元を手で覆った。


「盲点だった」

「そんなに死角だったかなぁ」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る