8日目 10回クイズ




 ベッドの上に座ってぼーっとしていると、肩をとんとんと叩かれた。


「汐璃。暇だし、10回クイズでもしない?」

「いいよ」


「じゃ、先に出してー?」

「んー……じゃあ、鹿って10回言って」

「トナカイトナカイトナカイ……」

「間違える気満々だ……」


 先に答え(?)を言われてしまったが、一応続けてみる。


「じゃあ、サンタが乗ってるのは?」

「サーフボード」

「まさかのオーストラリア式。まあある意味正解……かな」


 中学生の頃、写真を英語の教科書のコラムか何かで見たことがある。

 真っ黒に日焼けしたむきむきの上裸に、申し訳程度のサンタ要素としてもさもさの白髭を生やした、水着一丁の人が波に乗っているやつ。


「次、私の番ね。……んーと、じゃあ。スパゲッティって10回言って?」

 今度は夕映が考え込み、出題してくる。


「スパゲッティ×かける10」

「その言い方はずるくないかな」


 夕映は不満げに頬を膨らますが、私は気にせず先を促す。


「クイズは?」

「……スパゲッティを食べるのは?」

「人間。あるいはホモ・サピエンス」

「…………」


 何か言いたそうに、夕映が私の肩を掴んで揺らしてくる。


「私この手のゲーム、慣れてるから引っかからないんだよね」

「……さっきのはズルだと思う」


 ズルじゃない。勝つための手段だ。


「じゃあ今度は。──夕映が好き、って10回言って?」

「……なんだかゲームの趣旨が変わってそうだからやだ」


「えぇー……私は汐璃のこと、好きって言えるよ?」


 私の肩から手を離して、ちょっと落ち込んだみたいに夕映が縮こまる。

 ……そんな反応をされてしまうと、何か悪いことをしたみたいで罪悪感がある。


「……。私も好きだよ」


 なんて仕方なく言っておくと、急に夕映に元気が戻った。


「──え。ね、今のもう一回言って?」


「……なんだかゲームの趣旨が変わってそうだからやだ」

「それじゃない」

「スパゲッティ×かける10」

「それでもない……‼」

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