7日目 形容しがたいけど重たい
うつ伏せに寝転ぶ夕映の背中に乗っかって、私はぼーっと考え事をする。
「……。夕映」
「なに? 汐璃」
「……重くないの?」
「ううん。汐璃柔らかいし、むしろ丁度よく圧迫感あって気持ちい」
夕映は布団も重い派だ。自分の上に適度な重さのものが乗っかるのが好きらしい。あとは暗くて狭いところとか。狭所恐怖症気味な私とは真反対だ。
私は右の頬で夕映のほっぺたをすりすりと感じながら、口を開く。
「──私。夕映と今みたいな関係になるまで。女の子同士って、もっとキラキラしてるようなものだと思ってた」
「ふうん。……今みたいな関係って?」
夕映の面白げな声。絶対想像がついているうえで聞いてきている。
「…………」
「ほらほら、濁さず言って?」
「主従関係」
「思ったより重たい関係だった……っていうか、どっちが主?」
「──2023年に行われた研究で、実は飼い犬は上下関係が分からない可能性が高い、って結果が出てるみたいだよ」
「それ遠回しに私が犬側って言ってない?」
ばれてしまったなら仕方がない。
「気のせいだよ」
「そっか、気のせいかぁ」
何とか誤魔化せた。……あれで誤魔化せるのかぁ。
「逆に、夕映は私との関係を何だと思ってたの?」
「そう切り返してきたか。……んーとねえ。どちらかというとあれだよね。本屋さんのGLコーナーに置いてある漫画みたいな?」
「グランドラインコーナー?」
「地盤面の高さについて語ってる漫画、コーナー化するほど種類あるかな」
まあ、本当は分かっている。ガールズラブのことだろう。
「でも、本屋には普通BLコーナーはあるけど、GLコーナーはあんまりないよ?」
「そうなの?」
「うん。少なくとも、近くの本屋では見かけないかな」
TSU〇AYAでもBOOK・〇FFでも見かけたことはない。ジャンルとしての人気の問題なのか、それとも何か別の理由があるのかは知らないけど。
「ええー……ジェネレーションギャップ」
「カルチャーショック?」
「それかも。……つまり、何を話してたんだっけ」
「──。異文化交流は大事ってことかな」
「そっかー」
適当に返したはずが納得されてしまった。
「うん」
夕映は今日も平常運転だ。
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