12日目 結婚願望
夕映は私と比べて、喋るのが好きな方だと私は勝手に思っている。
クラスでも他の子とよく話しているし、二人でいる時も話題を振ってくるのは夕映からのことが多い。話題を見つけるのが得意なのだろう。
「ね。汐璃って、結婚願望とかってあるの?」
夕映から話しかけられて、タイムリーだなぁと思いながら私は返す。
「あるよ、一応」
「意外。あるんだ……」
「って言っても、漠然としてるけど。お嫁さんになりたい欲……みたいな」
私がそれっぽい言葉を選んで話すと、夕映はふふんと言って自分自身を指さした。
「それじゃ、私なんかどう? 良い物件だよ」
「それ自分で言うかなあ。……例えば、どのあたりがいい物件なの?」
「築17年、1JK」
「そんな
「他にもあるよ。アピールポイント」
「ふむ」
「まず協調性があって、相手の立場に立って物事を考えられます」
「……。うん、それで?」
「あとは……、そうだ。計画性もあります」
「バイトの面接かな?」
履歴書の自己PRみたいなアピールポイントだった。
結婚の場合は、はい採用! とはならない。
「夕映は? ……結婚願望とかあったの?」
「ないよ。今は、汐璃と一緒にいられればそれでいいから」
「じゃあ、仮に私が先に結婚したらどうするの?」
「間に挟まる」
「純愛過激派に潰されそう」
そこで会話が途切れて、しばらくの沈黙が挟まる。
「ねぇ、汐璃」
「なに?」
「結婚はできないけど、好きだよ」
「……うん。知ってる」
ちょっとしんみりしてしまった雰囲気に流されて、私は隣で寝転がっている夕映を、後ろから抱き枕のようにぎゅっとする。
夕映は「ごろごろ……」と猫みたいに零して、私の手を優しく握った。
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