11日目 しりとり
「しりとりしない? 何もないと面白みに欠けるし、何か賭けて!」
夕映がぱん、と手を叩いて提案してきた。
「賭けしりとり……? いいけど、何賭けるの?」
「地位」
「私と夕映の社会的地位は多分同じだと思うけど。クラスメイトだし」
「負けたらクラスメイトの座を剝奪されるんだよ」
罰ゲームが退学のしりとりとかやりたくない。
「そしたら私たち、クラスメイトじゃなくなっちゃうね」
「……。ね、やっぱり賭けはなしにしない?」
夕映が焦ったように訂正してくる。なんというか、ちょろかわいい。
「ん、わかった」
賭けはなくても、口の暇つぶしくらいにはなるだろう。
「ルールは分かる?」
「もちろん」
しりとりのルールをしらない日本人なんて多分いない。
……でも、最近の子供とかって、しりとりなんかやってるんだろうか。こういうアナログな遊びより、機械の方のゲームをやっているような印象がある。
ぼーっとどうでもいいことを考えていると、夕映が頬をつんつんとつついてきた。
スマホから顔を上げて夕映を見ると、夕映は私の目の前で人差し指を立てた。
「でも、一応確認しとくね。定義とか」
「……ああ、うん。……定義?」
「まず、挙げる単語は名詞に限るとする。ただし数詞は通常名詞として扱われるが、本遊戯中は特例として使用不可とする。また一文字の単語、例として『木』や『詩』なども同様に使用不可とする。さらに同一の発音を持つ名詞が複数あるとしても、一度出た単語は同音異句とみなして発言時点で敗北とする」
「……センター試験に出る問題の定義か何かだっけ?」
想像以上にかちこちだった。一つ一つ読み解けば知っているルールだけど。
「じゃあ始めるね。名詞」
「待って。『名詞』っていう単語以外使えないルールじゃないよね?」
「やだな、そんなわけないじゃん」
「ならいいけど……鹿」
「カラス」
「スクラロース」
「スライス」
「す……スウェーデン。あ」
「ンジャメナ」
「……。ナン」
「ンチャンナジ」
「時間」
「ンニイ」
「なにこれ接待しりとり?」
一度負けた気になっていたけど、なんだか負ける気がしなくなってきた。
「だって、最初の定義で『ん』で終わっちゃダメなんて決めてないから……」
「あれちゃんとした定義だったんだ」
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