14日目 例えば、明日世界が




 昨日、私の部屋に泊まっていった私服姿の夕映が、部屋のカーテンを開けながら、快晴の空を眺めてぽつりと呟いた。


「汐璃は、明日世界が終わるとしたらどうする?」


「私は……一縷いちるの望みに懸けて宇宙船に搭乗させてもらうかな。もしくは遺伝子提供をして、宇宙でのクローン技術の発展に期待する」

「現実的SF思考。……そうじゃなくて、最期に何がしたい? ってこと」


 ちゃんと聞き直されて、私は何となく考え始める。


 実際。明日、世界が終わるとしたら。

 ──私は何がしたいのだろう。


 無人島に何を持っていきたい? みたいな質問と同じで、急に考えることになると難しい。


「最期……美味しいものを食べるとか? ……夕映は? したいことないの?」


 この質問は、夕映の寿命と通じるものがある。死んでしまう前に、夕映に何かしたいことがあるなら、できることなら叶えてあげたいと思った。


「いつも通りがいいかな。明日が来るまで汐璃と話して、ご飯もいつも通りのものを食べて。いつの間にか終わってるといいなあって思う」


 ぼんやりとその時を思い浮かべるみたいに、虚空を眺めて夕映が言う。

 なんとなく夕映らしいとも思った。……なんだか私も、そうしている気がする。


「……世界最後の日なのに私といて、家族とは過ごさないの?」


 私が照れ隠しにそんなことを言うと、夕映は首を横に振った。


「過ごすよ。汐璃を家に連れてくる」


 拉致前提だったらしい。


「私も、できれば家族と一緒にいたいんだけど……」

「じゃあ、汐璃の家族も連れてくる」

「気まずいなぁ」


 家族水入りまくりだ。


「でも、最優先事項は汐璃といることだから。約束してくれたでしょ?」


「……一緒にいるって?」

「そう。だから、死んじゃうその日まで、仲良くしてね」


 私の手をにぎにぎと握りながら、夕映は言った。


「なんだか、いい話ふうだ」



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