3日目 信頼
私は人の寿命が分かる。だけど、自分の寿命だけは分からない。
けれどもし仮に自分の寿命が分かるとすれば、私は悔いが残らないように残りの時間を気にして生きて、周囲で起きる出来事をもっと大切にするだろう。
……それなのに、夕映ときたら全くそうではないようで。
「夕映は、あと28日で死んじゃうのにマイペースだよね」
今日も私のところでだらだらと時間を潰しているし。まあ元々、何をするにしても楽しそうだから、毎日を満喫していると言われればそうかもしれないけど。
「そうかなあ。そうかも」
ベッド上に座る私の背中に、夕映が背中をもたれかからせてくる。私よりもちょっとだけ大きい背中。普通、小さい方が大きい方にもたれかかるべきだと思う。
手入れのされた長い髪から、ふわっとシャンプーの甘い匂いがする。
「……それは、私の言う寿命を信じてないから?」
私が聞くと、夕映はふるふると首を横に振った。
どうやらそうではないらしい。
「ううん。だって汐璃、生涯で一度も嘘ついたことないじゃん」
「いやまあ。正直者でありたいとは思ってるけど」
流石にそんなわけがない。
少なくとも私は、自分自身をそこまで聖人だとは思っていない。別に嘘を吐いた方が上手くいきそうなときは嘘を使うこともある。面接のときとか。
……というか生涯って言われてしまったら、今後も嘘つけなくなっちゃうし。
「えっと……その絶対的な信頼はどこから来たのかな」
「──あなたの信頼はどこから? 私は喉から」
「喉かあ」
あんまり信頼できなさそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます