2日目 隣人
夕映と私は、小学生の頃から隣の家に住んでいる。
だから、昔から何をするにしても一緒に居ることが多い。
性格や喋り方が似ていると他人から言われがちなのも、それが理由だと思う。
顔も少し似ているからか、姉妹と間違われることだってある。
明確に似ていないのは身長と、髪の長さくらいだ。私は平均より背が低くて髪も肩まで。夕映はバレー部みたいに背が高くて、髪も腰まである。
「……汐璃って、かわいいよね」
「どしたの、藪から棒に」
すぐ隣で横になっている夕映が、今気づいたみたいに言う。
たまに、夕映はこういう変なことを口走る。
「今日も汐璃がかわいいなあって」
「どの辺りが?」
「髪が長いところ」
「まさか自画自賛だった?」
それだとロングヘアの夕映の方が、よりかわいいということになる。
……まあ、夕映の方が私よりもかわいいという点については異論はないけれど。なんて思いながらも、私は続けて聞いてみる。
「他の部分は? もうちょっと具体的なのとかない?」
「右目の下の泣きぼくろが1.8231……mmなところ」
「有効数字5桁は具体的過ぎてやだなぁ」
何で測ったらそこまで正確にほくろのサイズが分かるんだろうか。
「うそうそ。ほんとは汐璃の全部、頭のてっぺんから眉毛の下までかわいいよ」
「…………」
私のかわいいところ、おでこだけだった。
「なんだかお世辞が苦手みたいだけど。どこで習ったの?」
「現国の授業かな? でもお世辞じゃないよ」
「それはそれで傷つく」
そういうのは言われて嬉しいお世辞を言った時に使う言葉だと思う。
「照れ隠しだよ。ほんとは全部かわい」
ふにゃっとした笑みで、唐突にそんなことを言われた。
さっきまでの落差で、私の胸は不覚にもどきりとする。
また夕映は私の顔をじっと眺めてくる。別に見られるのが嫌なわけじゃないけれど、あんまり見続けられると、どこかで何か失敗してしまいそうで困る。
「汐璃のかわいさを因数分解したい。やり方、教えて?」
夕映がロマンチストな彼氏みたいな言葉を吐く。
むしろ落ち着いた私は、別に照れることもなく素っ気なく返す。
「私、数1苦手だからなあ」
「……そういえば、私もだった」
可愛さを因数分解するのは、なかなか難しい。
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