ひと月後、君が隣にいない日が訪れる
往雪
1日目 私の秘密
家具も物も少ない、部屋主の趣味が少ないのがバレてしまいそうな自室。
花の女子高生の部屋だというのに、ぬいぐるみの一つもない。
狭いシングルベッド。掛け布団の上で、私はすぐ隣に視線をやる。
そこには高校の制服を着たままの女の子が横たわっている。
……かくいう私も、まだ制服から着替えていないから、制服姿の女子高生が一つのベッドに二人並んで横になっていることになる。
ふと、向こうもこちらを見てきて。間近で視線が合う。
目の前で唇が動いて、優しく、けれどどこか気の抜けた声で言葉を紡ぐ。
「ね、
「……えっとね。三十日だから、あとちょうど一か月かな」
──私。
「前にも聞いた気がするけど。それって、頭の上に数字でも出てるの?」
「ううん。……なんていうのかな。朧気に思い浮かぶような感じ」
ある時から、目にした生き物の寿命が分かるようになった。最初は家で飼っていたハムスターたちで知った。一匹一匹、それぞれが何日後に死んじゃうのか。
このことは誰にも言っていない。今、隣にいる
「もしそれが本当だとして。汐璃は私が死んじゃう日まで一緒にいてくれる?」
「それ、前にも言ってた。いるよ、ずっと一緒」
その他にも、他の人には秘密にしていることがある。
それは、彼女──
天然でどこか抜けてて、三十日後に死んじゃうなんて思えないくらい、今も元気そうな顔をしてベッドでスマホを弄っている、そんな女の子。
元は幼馴染みと呼べる関係性だった。家が近くて、たまたま話が合って。
今では、何と称すればいいのか分からない。
恋愛関係ではない。でも、一緒のベッドで寝ている。
キスだってたまにするけれど、外国の挨拶みたいなものだと思っている。
……でも、やっぱり周囲には言えないような、そんな関係性だ。
「あ、時間切れ。あんまりツム消せなかった……。汐璃、ハート……」
スマホのパズルゲームをやっていた夕映が、懇願するようにこっちを見る。
「……送ればいいの?」
「うん、お願い。やったー、汐璃愛してる」
「こんなに心の動かない告白あるんだ」
夕映だけは私の秘密を知っている。
私の一番近いところにいる存在だから。
そんな彼女が、あとひと月で寿命が尽きてしまうことを。
──私は未だに、実感を得られずにいる。
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