ファジーマル迷宮攻略
第1話
私は噺野音(はなしのおと)、今年の春に新社会人となった22歳の女の子。そして今日は初出社の日!楽しみだなぁ...。
ボブの髪を整え、スーツを着た私は期待を胸に家の玄関を開ける。
「わっ!」
その期待は箱崎空(はこざきそら)の脅かしにより、ぶち壊された…。
「きゃ!」
私は情けない悲鳴を上げ、後退りする。そして相手が空だと分かり、
「何してんのよ!」
私は思いきり彼の頭に拳骨を喰らわした。
「はぶぉ!」
空は間抜けな声を上げ、倒れる。
「ちょっと!朝から悪趣味ね!か弱い乙女を脅かすなんて…。」
私が怒ると空は自分の頭をさすりながら起き上がる。
「こんな風にぶん殴るやつのどこがか弱いんだ?この怪力女!」
「もう一回ぶん殴られたいようね?今度はどこ?お腹?みぞおち?顔面?」
「なんで段々上に上がっていってんだ!」
今私に殴られたこいつは箱崎空。私の子どもの時からの幼馴染みで。本当なら一緒に大学を卒業するはずだったんだけど、ちょっといろんなことがあって大学を2年ほど休学していた。だから今は3年生かな。
「で、私に何の用?」
「いやほら、お前の会社って俺の大学から近いだろ?だから一緒に行かねぇかなって…。」
「…今日って竜巻警報出てたっけ?」
私はわざとらしく携帯を取り出す。
「そんなに珍しいかよ!俺がお前を誘うのは!」
「なんて冗談よ。じゃあ、お望み通り一緒に行きましょうか。」
「お、おう…。」
そう言うと空は恥ずかしそうにしながら一緒に歩いた。私の会社も空の大学も歩いて20分くらいのところにある。
私は歩きながら、
「空、大変だったね…。おばあちゃんあれから調子はどうなの?」
と聞いてみた。
空は頭を搔き、
「あーあと1~2週間ぐらいで退院できるって。」
「そう…。あのさ空。」
「それ以上…何も言うな。」
「…ごめん。」
それからは会話も続かず、私たちはただ歩いていた。
そして私の勤めている会社に到着した。
「じゃ、着いたからまたあとで…。」
「…おう。」
私は横断歩道を渡った。足元を見ながらただひたすらに
(なによ、一緒に行こうって言ったの空じゃない…。そりゃ私も悪いけど…。)
などと考えながら歩いていると...
「音!」
空が私の名前を叫んだ。
(やっぱり話したかったんじゃん。)
「なに?まだ何か…」
私が振り返ると空がすぐ近くまで来ていた。そして…
私を突き飛ばす。
(え…?)
そのまま空は…
ドン!
大きな物体にぶつかりゴロゴロと転がっていく…一瞬の出来事だった。
(っ!…空!)
そして私は後頭部に強い痛みが走り、視界が暗くなる。
「空!…空…」
薄れゆく意識の中、私は空が飛んでいった方向に目を向ける。
その場所は一面、血だらけになっていてそこには空だったものがあった。
(そんな…。私…あなたにまだ一度も…)
そして私の視界も完全に真っ暗になった。
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次回の話からは
♪…音パート
□…空パート
△…その他の人パート
ー…普通の文章パート
とマークを使って話を分けて進めていきます。
人物・舞台紹介や音と空がいないところの場面を分かりやすくするために普通文章を使いますが、基本的に音と空のやりとりが多いと思うし、音はナレーターという設定なので…。
俺は迷宮の宝箱《ミミック》に、私は異世界のナレーターになりました…。~迷宮攻略のため、箱(迷宮)入り娘を指導する!~ 闇夜 @yamiyo
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