第3話





 私は長い長い廊下を歩いている。

 時代劇に出てくるみたいな内装の廊下。

 一定の間隔で明かりが灯っている。

 いつも、この『夢』はここからスタート。


 だから私は、この建物が外から見てどんな形をしているのか分からない。

 いつだって、夢の始まりは長い廊下から。


 私の先をもぞもぞ動いてるのは、子イヌくらいある大きさの茶色いクモ。

 目が覚めている時に見たら悲鳴を上げちゃうくらい大きいけど、今は怖くもなんともない。

 なんだかもこもこしていているし、いっしょうけんめい八本の足を動かして私の先を進んでいると、ちょっとかわいく見えちゃうかも。

 クモがふすまの前で止まった。私も立ち止まる。


「……誰?」


 ふすまの向こうからか細い女の子の声がした。


「オオヒメちゃん、遊びに来たよ」


 私が名前を呼ぶと、向こうから嬉しそうな気配が伝わってきた。


「里子ちゃん、よく来たね」


 私はふすまを開く。

 その先は広い部屋になっていた。薄暗いオレンジ色の明かりに照らされて、真っ赤な着物を着た長い髪の女の子が座っている。

 私と同じくらいの年齢の女の子。色白で、すごく手足が細い。なんだか長い間病気だったみたいな感じ。


「――待ってた」

「うん、知ってる」


 オオヒメ。それがこの女の子の名前。

 正確にはあだ名みたいなもので、本名は月代撫子つきしろなでしこっていう。

 でも、それは秘密の名前みたいな感じで、オオヒメって呼んでほしいって最初に会った時に頼まれた。

 だから私は、それ以来ずっと撫子ちゃんをオオヒメちゃんって呼んでる。

 名前がいくつもあるなんて、江戸時代とかそういう昔の人みたい。





 オオヒメちゃんとの遊びは、すごく昔からあるものばかり。

 お手玉、花札、坊主めくり。初めて見るものもあって、オオヒメちゃんは丁寧にルールを説明してくれた。

 そんなにものすごく面白い遊びじゃないけど、ぼんやりとした明かりに照らされて、二人っきりでするとすごく落ち着く感じ。


「ちょっと待ってて。今、お茶をいれてくるね」

「うん。待ってるね」


 オオヒメちゃんは長い着物の裾を引きずるような感じで、ふすまを開けて部屋の外に出た。


「……なんだか、すっかり慣れちゃったなあ」


 私は座布団に座ったまま壁により掛かる。

 自分が夢を見ているってはっきり分かるこの感じはすごく不思議。

 しかも、この夢は目が覚めたら忘れちゃう。でも、夜眠って夢を見た瞬間に、また思い出すんだ。

 夢の中の私と、起きているときの私が二人いるみたい。


 初めてこの夢を見たときはびっくりしたなあ。

 気がついたら薄暗い廊下に一人でぽつんといたんだから。そして大きなクモが出てきたときはもっとびっくりしちゃったし。

 なぜか夢だってことは分かってて、早く目が覚めないかな、って思ってた。

 でもどうせ夢なんだから、ってクモの後についていって、私はオオヒメちゃんに出会った。

 オオヒメちゃんもすごくびっくりしてて、なんでここに人がいるんだろう、って顔をしていたなあ。

 自己紹介して、少しずつお話しして、いつの間にかオオヒメちゃんは私の夢を見ている間だけの友だちになっていた。


「お待たせ。里子ちゃんの口に合えばいいけど」

「ありがとう、おいしそうだね」


 オオヒメちゃんはしばらくしてから、お盆にお茶の入った湯飲みを二つと、大福を置いたお皿を乗せて戻ってきた。

二人で「いただきます」と言ってから口に運ぶ。夢の中なのに、ちゃんと味が分かるしすごくおいしい。


「どうして――私に良くしてくれるの?」


 ふと、オオヒメちゃんが口を開く。


「え?」

「だって、私と里子ちゃん、こんな形でしか会えないのに、いつも一緒に遊んでくれるでしょ。なんでだろう、ってつい思っちゃって……」


 オオヒメちゃんは少し恥ずかしそうにそう言うと、うつむいちゃった。


「オオヒメちゃんは、『夢見ゆめみ』なんだよね」

「うん。私は○○○○○○様の夢からあふれる『悪性』を封じなくちゃいけないの。これが私のお役目。眠り続けることが、私の仕事なの」


 ○○○○○○のところは、急に雑音が入ったみたいに聞こえない。

 なんだか嫌な感じのする音だったなあ。


「お父さんとお母さんと、お兄さんに会えないのは辛いよね」

「……うん、夢の中の私はいつもひとりぼっちだった。兄さんに――会いたいよ。いつになったら、目を覚ませるのかな」


 オオヒメちゃんには年の離れたお兄さんがいるって言ってた。名前はアシダカ。ずっと眠っちゃう前は、いつも優しくしてくれたんだって。

 オオヒメちゃんは今、ずっと眠っている。

 眠って、夢を見ている。

 それが夢見っていうお仕事なんだって。その夢と私の夢が、なぜかつながってしまったのかも。

 だから、私はオオヒメちゃんの夢の中にいるのかな。


「私のお父さんとお母さんも、いっしょうけんめい働いてるんだ。ずっと『今、一番大事な時なんだ。もう少しで一段落して、そうしたらもっと里子と一緒に過ごす時間を取れるよ』って言ってる。でも、いつまで経ってもその『一番大事な時』は終わらないの」


 お父さんとお母さんの言う『一番大事な時』はずっと続いている。

 二人とも嘘をついてないのは分かってる。

 でも、家に帰れば誰もいない。

 だから私は学校が終わってもまっすぐ家に帰らないで、神社に行く。そこには大抵あの人がいる。安倍晴明のそっくりさんが。


「だから、ひとりぼっちが辛いのは、少しだけ分かるんだ。オオヒメちゃん、こんな広い家に一人だけで寂しいでしょ? また呼んでね。一緒に遊ぼう?」


 私がそう言うと、弱々しくオオヒメちゃんはほほ笑んだ。


「うん――ありがとう、里子ちゃん。でも……」

「でも?」

「私……いけないことをしちゃったかも」


 突然、部屋がぐにゃりと歪んだような気がした。

 部屋じゃなくて、私の目の方がぐにゃりと歪んだのかもしれない。


「え?」

「ごめんね、里子ちゃん。あやまっても、もう遅いかも」


 オオヒメちゃんが、泣きそうな顔で私を見た。


「私の夢が、あなたの夢を呑み込んでいく――」


 私は、悲鳴を上げて手を伸ばした。


「オオヒメちゃん!?」





 気がつくと、私はなぜか夜の加茂神社にいたみたい。

 街灯に照らされて、野火桜の下に晴盟さんが立っている。

 晴盟さん、と声をかけようとして、気がついた。

 声が出ない。

 下を見ようとして私は心臓が止まっちゃうほどびっくりした。

 体がないよ。

 まるで幽霊になっちゃったみたい。これも夢の続きなのかな。


「――姿を現せ、まつろわぬ民たちよ」


 晴盟さんがそう言うと、暗闇の中からぞろぞろと人が出てきた。

 晴盟さんみたいに古めかしい格好をした男の人や女の人だ。みんな猫背で、手足が長い。


「ツチグモの一族か。ずいぶん剣呑けんのんだが、あいにく私は朝廷の手先でもなければ、源頼光みなもとのよりみつとゆかりがあるわけでもないぞ」


 そうだ、クモだ。

 この人たちはなんだかクモにそっくり。クモという言葉で、私はオオヒメちゃんを思い出した。

 あの泣きそうな顔を思い出すと、胸が痛くなる。

 私が見ていると、一人のクモの巣が描かれた着物を着ている男の人が出てきた。

 目つきの鋭い、少し怖そうな顔をした人だ。その男の人は背筋を伸ばすと、丁寧に晴盟さんに一礼する。


「陰陽師、安倍晴明様にお頼み申す。俺はこのツチグモの郎党ろうとうを率いる月代晃三郎つきしろこうざぶろうと申します。あざなはアシダカですので、そうお呼び下さい。以後、よろしく」

「ほう、少しは話の分かるようで結構。して、この晴盟に頼みとは?」


 相変わらず晴盟さんはのらりくらりとしているなあ。丁寧な物腰のアシダカさんがかわいそう。

 ……え? アシダカってまさか、この人がオオヒメちゃんのお兄さん?


「俺の妹であるオオヒメを、夢から解き放っていただきたいのです」


 私の予想は当たったみたい。はっきりとアシダカさんはオオヒメ、って言ったから。


「夢、とな」

「はい。この野火桜の下にのたうつ、数多あまたの幸いと災いをもたらすオロチ――オオマガツヒの夢から」


 アシダカさんが野火桜の根元をにらむ。元々怖い顔がもっと怖くなった。

 オオマガツヒ、ってアシダカさんは言った。その名前……もしかしてあの夢の中でオオヒメちゃんが言った聞き取れない音かも。

 私の予想だと、すぐに晴盟さんはOKするはず。

 いい加減で勝手気ままだけど、晴盟さんは野次馬みたいに頼まれればすぐに首を突っ込んでくるはず。

 でも、晴盟さんは首を左右に振った。


「――せっかくの頼みだが、気が進まぬ」

「なぜですか!?」


 頭ごなしに否定されて、アシダカさんが大声を上げた。うん、あっさり断られちゃったら怒りたくなる気持ちも分かるなあ。


「こちらにも都合がある。この晴盟を動かすのは千金ではないぞ。すべては私の気分次第じゃ」


 あんまりな物言いに、アシダカさんは歯がみしてうなった。


「このえせ陰陽師め」

「おお、その通りじゃ。確かに私は陰陽師ではない」


 火に油を注ぐような意地悪なことを晴盟さんは言う。

 なんでわざわざそんなことを言うんだろう。少しは話を聞いてあげればいいのに。

 アシダカさんは晴盟さんをにらんでいたけど、話しても無駄だと思ったのか、ちょっとだけ頭を下げてから背を向けた。


「……またうかがいます。今夜はこれにて」


 ほかのツチグモと一緒にアシダカさんの姿が闇の中に消えてから、野火桜の影から導満君がのっそりと出てきた。


「何が気分次第じゃ。下手な嘘をつくでないわ」


 板チョコをぼりぼりと噛み砕きながら、導満はにやつく。


「嘘ではありませんよ、導満殿」

「まあ、気が乗らぬのも仕方ないのう。あ奴ら、人に仲介を頼んでおきながら手みやげ一つよこさぬケチじゃ」

「また、導満殿の差し金ですか」


 晴盟さんが呆れた顔になる。

 あのツチグモの人たちは、導満君の案内で晴盟さんのところに来たっぽい感じ。じゃあ、普段どこにいるんだろう。

 オオヒメちゃんは大きな家にいたけれども、あれがどこにあるのか分からない。

 だって私は、夢の中で一度も家の外に出たことがないから。たぶん、出られないんじゃないかな。


「おう、晴盟よ。この件をうまく解決できればお主の勝ちじゃ」


 ツチグモのトラブルを押しつけておいて、導満君はそれを勝負だって言ってる。晴盟さんに負けず劣らず、この人も自分勝手だなあ。


「賞品もない勝負など、ごめんこうむりたいのですが。しかし、あるいは――」

「うむ?」


 晴盟さんが野火桜を見上げながら、独り言みたいにつぶやく。


「勝ちを拾う者が、別にいるかも知れませんなあ」


 気のせいかも知れないけど、晴盟さんの目は私の方を見ているような気がした。





「なんなのこれ……どうなってるの?」


 次の日。私は学校に行かずに八百古里市の中を走り回っていた。

 震える足で近くのコンビニに飛び込む。

 私が入っても、店員さんは誰一人こちらを見ない。


「あの、すみません!」


 私はレジに駆け寄って、店員さんを大声で呼ぶ。

 それなのに、店員さんはこちらをまったく見ない。


「ねえ、聞こえますか!? ねえ、返事して下さい!?」


 私がテーブルを叩いて大声を出しても、全然反応がない。

 後ろからお爺さんがレジに来た。

 私を完全に無視して、お爺さんは店員さんに持っていたパンを差し出して、楽しそうに話してる。


「どうして……?」


 コンビニから出た私は、吐き気を我慢しながらその場にしゃがみ込んだ。

 今朝起きたときから、ずっとこうだ。

 お父さんもお母さんも、コンビニの店員さんも、私がここにいるのに見えていないみたい。


 最初はなにか意地悪されているのかと思った。

 けれども、手を思いっきり引っ張ってもお母さんが何の反応もしないのを見て怖くなった。

 適当にバナナと冷蔵庫にあった牛乳を飲んで朝ご飯の代わりにして、私は家を飛び出した。

 そして、今こんな感じ。

 誰も、私が見えていない。

 透明人間になったって言うよりは、意識していないみたい。

 手を引っ張ったり軽くぶつかっても、何かがおかしいと全然感じてないんだと思う。私だけ、ちょっとだけずれた現実に迷い込んだみたいな気持ち悪い感じがずっとする。


「晴盟さんのところに行ってみよう……。何か分かるかも」


 私は立ち上がってつぶやいた。

 晴盟さんは、こういう変なことの専門のはずだ。

 だって、しゃべるネコやタヌキやキツネを平然と受け入れている晴盟さんだ。街中の人から気付かれなくなった私だって、きっと分かるよね。


 ――もし、晴盟さんも私に気付かなかったらどうしよう、と最悪のことを想像しつつ、それでも私が歩き出そうとしたその時。


「――あれ、あなたは里子さんですよね?」


 少し離れた場所から小さな声がして、私はそちらを見た。

 オレンジ色のしましまのネコが、しっぽを軽く左右に振りながら私を見ていた。


「寅吉っ!?」

「うわあっ!? な、なななんですかいきなり!? そうですよ僕ですけど?」


 私がそっちに突進したから、寅吉はびっくりしたように後ずさりした。


「日本語しゃべれるの!? 私が分かるの!? そうだよね、ねえ!?」

「はあ、そうですけど。どうしたんですか、里子さん。ずいぶん混乱してますねえ」


 寅吉が首を傾げて足元にすり寄ってきた。私が脇の下に手を入れて抱っこすると、寅吉の体はぐにゃーんと伸びる。

 やっと話せる相手を見つけられて嬉しくて、私は夢中になって今起きている不思議なことを寅吉に説明した。





「そうですか。大変ですニャン」


 一通り私の話を聞いた寅吉は、地面に降ろされるとアスファルトの上でごろんと転がってお腹を見せちゃった。


「全然そう思ってない感じだけど?」

「まあ、僕はなんともないので。里子さんの苦労はよく分かりません」


 他人事だと思って気楽だなあ、と文句を言いたいけど、ネコなんてみんなそんな感じだよね。

 私はぐっと我慢して寅吉のお腹を撫でた。寅吉はごろごろと喉を鳴らして気持ちよさそうにしてる。


「晴盟さんのところに行こうと思うんだ。晴盟さんなら何か分かるかも知れないから」

「あ~そうですね。じゃ、僕はこれで……」


 私にいっぱい撫でられてから、寅吉はむくりと起き上がる。体をペロペロとなめていた寅吉だったけど、全身の毛がいきなり逆立った。特にしっぽがすごいよ。まるでモップみたいに毛が一気に広がってる。


「ニャ、ニャンですかこれは……僕のおひげがよくないものをビンビンにとらえているんですが……!」


 寅吉が目をらんらんと輝かせてコンビニの向こうを見つめる。

 つられて、私はそちらを見て後悔した。


「なに、あれ……?」


 すごく、気持ち悪いものがあった。

 形はよく分からない。もやのような煙のような、日の光に照らされた道路の上にいるのに、そこだけ暗くどんよりとしている。

 人みたいな形のもの。大きなカエルみたいな形のもの。大きなムカデみたいなもの。

 全部黒い影でしかないのに、寒気がするほど見ていて気持ちが悪い。

 ゆらゆらとその黒い影は揺れながら、こっちに少しずつ近づいてきた。少し近づくだけで、寒気がどんどん強くなってくる。


「と、とにかく逃げよう!」


 私が駆け出すと、大慌てで寅吉が後に続く。

 何かの見間違いだよね。私たちとは関係ないものだよね。

 そうお願いしながら、私はしばらく走ってから振り返る。

 けれども、気持ち悪い影は私たちを追いかけてくる。動きはゆっくりなのに、不思議とだんだん近くなって来る。


「なんで追っかけてくるの!?」

「知るわけないニャン!」


 寅吉が私を追い抜きそうになったその時だった。


「ここにもいたか!」


 突然、太い男の人の声が響いた。

 横道から突然飛び出してきた男の人が、そう叫ぶと黒い影に躍りかかった。

 その手に、一本の刀が握られてる。

 時代劇に出てくる日本刀みたいな感じじゃなくて、もっときらびやかな飾りがついていて、もっと古い感じの刀だ。確か太刀って言うんじゃなかったかな?

 男の人が手に持った太刀を振り下ろすと、黒い影は古い雑巾みたいに引き裂かれて消えていく。

 嫌な感じのもやのようなものがしばらく残っていたけれども、それも次第に見えなくなっていく。


「まったく、悪性がもうこんなにあふれ出しているのか。あの陰陽師、のんきにも程があるぞ」


 男の人はそう言うと、太刀を鞘に収めた。クモの巣が描かれた着物を着た、背の高い男の人だ。

 眉も太くて怖そうな顔つきだけど、悪い人って感じじゃないなあ。


「おい、お前。なんでここにいる。大丈夫か?」


 男の人は、肩で息をする私の方をじろりと見てそう聞いてきた。


「あ、ありがとうございます……アシダカさん」


 アシダカ。

 なぜか私の口から、男の人の名前が出てきた。

 なぜ私は、この人の名前を知っているんだろう。

 そして次の瞬間、その名前に引きずられるようにして、もう一人の名前がよみがえった。


 ――オオヒメちゃん


 どっと頭の中に流れ込んでくる、夢の中の出来事。

 どこまでも続く長い廊下。

 私を案内するクモ。

 奥の部屋で私を待っていた、赤い着物を着た女の子。

 夢見というお役目。

 眠り続けるのが仕事。

 そして私を見つめる、オオヒメちゃんの顔。

 とても悲しそうな、なにかをあやまりたい顔をしていた。


「私の夢が、あなたの夢を呑み込んでいく――」


 オオヒメちゃんのあの言葉は、今の私のことだったのかな? 

 ……それはともかく。私は初対面なのに、いきなりアシダカさんの名前を口にしちゃった。絶対に、アシダカさんは怪しんでいる。


「あ、あの……急いでますからさよなら!」


 私は足元の寅吉を抱き上げて、再び走り出そうとした。したんだけど……


「おい待て!」


 アシダカさんは私を見逃してくれなかった。


「なぜ俺の名前を知ってるんだ?」


 振り返った私の目に、怖い顔をして腕組みをするアシダカさんの姿が映る。


「あ、あはは……気になります?」


 アシダカさんは大まじめな顔でうなずいた。


「なる!」





 加茂神社に続く長い階段を登り終えた私は、真っ先に本殿の階段に目を向けた。

 そこには、いつものあの人がいてくれた。

 烏帽子に狩衣。手には扇。平安時代を描いたマンガから抜け出してきたみたいな、きれいな男の人。


 ――安部晴盟さんがいた。


「ほう、ようやく役者が揃ったようだな。重畳ちょうじょう重畳」


 晴盟さんはこちらを見ると、待ちかねた様子で立ち上がった。

 私に気づいてくれたんだ、と思った瞬間、私は思わず晴盟さんの方へ駆け出していた。


「晴盟さん!!」

「里子よ。どうやら大変な騒動に巻き込まれたようだな。いや、それともお前が騒動の中心と言うべきか」

「私が分かるの!? 見えるんだよね!?」

「うむ。この晴盟の目には、お前の姿がはっきり見えるし、耳にはお前の声がはっきり聞こえるぞ。安心するとよい」


 恥ずかしいからしなかったけど、正直に言えばぎゅって晴盟さんに抱き着きたかった。

 それくらい、誰にも気づかれず、みんなに意識されない時間は辛かった。

 わざと無視されているわけじゃないとは思っていたけど、ここにいるのにいないように扱われるのはすごく傷ついた。

 だからなおさら、いつものようにとぼけた感じで私に接してくれる晴盟さんの存在がすごく嬉しい。


「よかったあ。晴盟さんまで分からなかったらどうしようって思ってたから……」

「ふふふ、この晴盟、コーヒーと牛丼とケーキとラーメンとハンバーガーをおごってくれた里子のことを忘れるわけがなかろう」

「……はいはい、そうだったねー。全部小学生にお金を払わせたんだよねー」


 晴盟さんがわざと下らないことを言って、私の気を紛らわしてくれていることはすぐに分かった。

 私はつい笑っちゃった。

 今日、ようやく笑うことができたような気がするなあ。


「そしてアシダカよ。里子が世話になったな。改めて礼を言おう」


 私の頭をぽんぽんと撫でながら、晴盟さんは目を上げて、私と一緒に神社にやってきたアシダカさんの方を見る。


「お前のためにしたことじゃない。悪性はオオヒメの夢からあふれ出したものだ。俺にとっては見逃せない。ただそれだけだ」


 アシダカさんは、晴盟さんにお礼を言われても気に食わない様子で横を向いちゃった。

そうだよね。私が見たあれがただの夢じゃなければ、アシダカさんは晴盟さんに頼みごとをしたのに、あっさり断られちゃったからね。


「あの……皆様おそろいということで、僕はこの辺で……」


 ここまでついてきた寅吉が、そう言ってするりとみんなの脚の間をすり抜けていく。

 きっと寅吉が私たちについてきたのは、あの黒い変な影が怖かったからだよね。何回かあれを見たけど、その度にアシダカさんが太刀で斬っていた。

 黒い変な影もアシダカさんも、町の人には気づかれていないみたいだ。

 目の前で嫌な感じの影がうごめいても、それを太刀でアシダカさんが斬っても、誰も反応しない。

 今の私と同じ感じ。


「おいネコ。せっかくだからお前もここにいるといい。ネコの手とは言えど、何かの役には立ちそうだからなあ」


 でも、そんな寅吉を強引に抱っこした人が一人いる。

 古びた袈裟を着て、ぼろぼろの錫杖を持った男の子。

 蘆谷導満君だ。


「あ、蘆屋道満様……そんな殺生な……」


 寅吉は体をねじったけれども、導満君が手を離さないのであきらめた様子でおとなしくなっている。


「それで、安倍晴明。何が目的で姿を現した?」


 アシダカさんが口を開く。


「姿を現すも何も、このやしろは私の居場所だが? とにかく気が変わった。此度こたびの騒動、この晴盟も一枚かませてもらうぞ」


 扇で口元を隠しながら、晴盟さんはいけしゃあしゃあとそう言った。

 うわあ、自分勝手。


「昨日は断っておきながら今日はしゃしゃり出てくるのか。移り気だな」


 当然と言えば当然だけど、アシダカさんは嫌な顔をした。


「『朝令暮改ちょうれいぼかい』も悪くないぞ。状況に応じて柔軟なのはむしろ誉めるべきだとは思わないか?」


 相手が嫌な顔をしているのに、晴盟さんは全然悪びれる様子がない。

 仕方がないから、子供の私が大人の晴盟さんに代わって、アシダカさんにぺこりと頭を下げてあげた。


「あの……アシダカさん、ごめんね。晴盟さん、口ばっかりだけど一応役に立つから、怒らないで」


 頭を上げると、ぽかんと口を開けてアシダカさんは私を見ていた。

 けれども、すぐアシダカさんはにやりと笑う。


「おいえせ陰陽師、子供に助け舟を出されて恥ずかしくないのか?」


 私が良かれと思ってしてあげたのに、晴盟さんはなんだか不満そうな顔で私を見る。


「里子よ。この晴盟、そんなに頼りなく見えるのか?」


 私はわざとそっけなく答えた。


「まあまあ」


 ……本当は、誰も私に気づいてくれない中、はっきりと「里子」と呼んでくれた晴盟さんは少しだけ頼りがいがあったんだけどね。

 あんまりにもアシダカさんにそっけない態度だから、私はちょっとだけ意地悪になってみたんだ。





 私はその後、今日自分に起きたことについて晴盟さんに説明した。

 それだけじゃなくて、ようやく思い出すことのできたオオヒメちゃんのことについてもお話した。

 何度もアシダカさんが口を挟もうとしたけど、晴盟さんはその度にアシダカさんを止めて私に最後まで話させてくれた。


「……もう何がなんだか分からないよ」


 最後にそう言って私のお話は終わり。

 さすがに小さな子供じゃないから泣きはしないけど、心細いのは本当だ。


「蘆屋道満、その子はまさか……」


 何度も晴盟さんにあしらわれたからだと思うけど、アシダカさんは晴盟さんじゃなくて導満君に話しかけた。


「そうじゃ、もう一人の夢見と言っていいだろう。いやはや、異な事もあるものよ」

「俺の妹とどちらが先に夢見になったんだ?」


 夢見。

 たしかオオヒメちゃんのお役目だったはずだ。

 アシダカさんが言っていた、オオマガツヒっていう何かを封じるために眠って夢を見るのがお仕事だったはず。

 でも、私は毎日普通に寝るけど、普通に起きている。オオヒメちゃんみたいに眠り続けてはいないはずだよね。


「お主、卵が先かニワトリが先かという問いを知っておるか? 卵はニワトリが生む、しかしニワトリは卵から生まれる。それと同じよ。どちらが先かを問うなど無意味じゃ」


 アシダカさんの質問に、導満君はよく分からないことを言って一人でうんうんとうなずいている。

 外見は男の子なのに、声も仕草もお爺さんというちぐはぐさが不気味だよ。


「――里子よ、お前はふびんな子じゃ」


 私の話をしっかり聞いていた晴盟さんは、しばらくじっと目を閉じて考えて込んでいた。

 でも、静かに目を開いてそう言う。


「できればこの晴盟、お前が何も知らないうちに万事を解決したかったのだがな」


 万事を解決って言うけれど、私は昨日の晴盟さんを思い出す。


「アシダカさんの頼みは断ったのに?」

「あれはお前が見ていたからだ。なるべく、お前とツチグモにつながりを持たせたくなかったのだが、まさか私の知らないうちに夢見と既に会っていたとはな」


 よく分からないけど、晴盟さんはあの時私がいたのに気付いていたみたい。

 晴盟さんは、ツチグモたちが持ってきたこの問題と、私を関わらせたくなかったのかな。


「オオヒメちゃん……どうしてるのかな」


 私がつぶやいたのを、晴盟さんは聞き逃さなかったみたい。

 なぜか猫なで声で晴盟さんは私に言ってくる。


「一つ聞きたい。里子よ、なぜあのツチグモの娘が気になる? むしろ、お前はここでのんびりと事が済むまで待つというのはどうだ? 面倒なことはこの晴盟がすべて片づけてやろう。なあに、お前におごってもらった食事の代金だと思えばよい」


 なんだか、晴盟さんらしくない言い方。

 私は改めて晴盟さんの顔をじっと見る。男の人なのに女の人よりもきれいな顔は、教科書で見た能面みたいに表情が読めない。

 でも、なんとなく分かる。

 晴盟さんは、本当はそんなこと思っていない。


「晴盟さん、嘘が下手だね」

「おうよ。この晴盟、嘘はつかぬ。……基本的に」


 あっさりと晴盟さんは認める。そこはもう少し言いつくろうのが大人じゃないかな?


「晴盟さんがそう言えば、私が全部任せて一人で家に帰ると思っているの? 誰も私に気付いてくれない家に?」


 元から、お父さんもお母さんも夜になるまで帰ってこない家。それに輪をかけて、夜になっても誰も私に気づかない家なんて、絶対にいたくない。息が詰まるどころか、死んじゃいそうだ。


「……オオヒメちゃんは、私が来ると喜んでくれたんだ」


 私は、夢で見たあの大きな家の中を思い出す。

 クモに案内されてたどり着いた先の部屋にいるのは、赤い着物を着た一人の女の子、オオヒメちゃんだ。


「オオヒメちゃんは、誰もいない家に一人きりで寂しそうにしてた。私も、誰もいない家に一人きりでいることの寂しさは、少しは分かるんだ」


 オオヒメちゃんは、自分が一人きりなのはお役目だって受け入れていたけど、寂しいのは本当だと思う。

 もしあの子が目を覚ますためになにかできることがあるなら、私は晴盟さんを手伝いたい。


「オオヒメちゃんが目を覚ませば、この変なことは終わるんでしょ? そして、私にもできることがあるんでしょ? だったら私を必要としてよ、晴盟さん」

「しかし……里子よ」


 本当に珍しく、晴盟さんがためらう。

 いつもの、どんなことも受け止めて、嘘とも本当ともつかない言葉でのらりくらりとはぐらかす晴盟さんじゃなくて、ごく普通の男の人みたいだった。


「はっはっは! おい晴盟よ。何をたじろいでおる。天下の陰陽師、安倍晴明も語るに落ちたものじゃなあ。ははははは!」


 私たちのやり取りに、突然導満君が大笑いと共に割って入ってきた。


「夢見の小童がそこまで覚悟を決めておるのに、お主が右往左往してどうする。それでも拙僧の好敵手か? 情けない奴じゃ」


 心底嬉しそうに晴盟さんをバカにする導満の態度に、私はむっとした。


「導満君は黙ってて。これは私と晴盟さんの問題なんだから、口を挟まないでよ」


 私がはっきりそう言うと、導満君はびっくりした顔で口を閉じた。


「う、うむ……。拙僧としては、むしろお主を後押しするつもりじゃったのだが……」


 すごすごと引き下がる導満に、アシダカさんが肩を叩いて慰めている。


「気を落とすな、法師。女心は難しいのだ。俺も妹で身に染みている」

「ニャン、いい気味ですよ」


 寅吉はさっき導満君に捕まえられたのが気に食わなかったみたいで、導満の足にしっぽをぺちぺちと叩きつけてる。


「ならば、お前は知らなければならない。ほかでもないこれは――」


 晴盟さんは立ち上がり、私を見下ろす。

 その目は澄んでいて、まるで作り物みたいだった。

 いつもの晴盟さんが、そこにいる。


「――お前が七歳の時の神隠しと関係があるのだからな」





 加茂神社を後にして長い階段を下った先で、私は晴盟さんたちを引き連れて町のあちこちを見て回っていた。

 なんとなく嫌な感じがする方向に向かって歩く。

 寅吉も同じものを感じているみたいで、ヒゲをセンサー代わりにして一緒にみんなを案内してくれた。


「あった、ここだよ」


 郵便局の裏手を回ると、そこには真っ黒な裂け目みたいなものが広がっていた。

 じっと見てるとすごく気持ち悪くなる。

 周りの道路も建物も全部現実なのに、そこだけ絵になってるみたいに現実感がない。裂け目からは黒いもやが立ちのぼっていた。


「よし、行け」


 導満君が寅吉に命令する。


「さっきからなんで僕が一番乗りなんですか……」


 寅吉が頭を上げて導満君に文句を言う。


「お前が一番小さいからじゃ。ほら、もたもたするな」

「人使いじゃなくてネコ使いが荒い人たちですね……全部終わったら白秋様に言いつけてやりますよ」


 ぶんぶんと不機嫌そうにしっぽを振りながら、それでも寅吉は仕方なそうに裂け目に飛び込んでいった。

 少し待つと、嫌な雰囲気と黒いもやが少しずつ消えて、だんだん裂け目が広がっていく。

 色もどんどん透明に近づいていき、くぐった先がどうなっているのか見える。その先は、特に周りと変わってない。


「はい、これでどうですか?」


 それまで見えなかった寅吉が、裂け目からぴょんと出てきた。


「うむ、ごくろう」


 導満君がそう言って、一番最初に裂け目をくぐる。

 私たちもその後に続く。何だか、神社でやったことがあるの輪くぐりを思い出すなあ。


「何回繰り返しても何も変わらないね。同じところをぐるぐる回ってるだけじゃないの?」


 半透明の裂け目をくぐったその瞬間だけは、なんだか周りの景色に違和感があるけど、すぐにその感覚はなくなっちゃう。

 私はついそう言ってしまった。


 さっきから私たちはずっとこんなことを繰り返している。

 私と寅吉で町のあちこちにある裂け目を見つけて、寅吉がそこに飛び込んで裂け目を広げて、みんなでそこをくぐる。

 やっぱり私たちは町の人に気付かれないし、アシダカさんが「悪性」って呼んだ嫌な黒い影もあちこちにいる。


「夢見殿、夢とはこういうものなのじゃ。ほれ、あれじゃあれ」


 導満君が私の疑問に笑いながら答えた。


「あれ?」

「あの……舶来はくらいのこけしのようなものじゃ。人形の中にまた人形が入っているあれじゃ」

「あ、マトリョーシカだよね?」

「そうそうそれじゃ。夢は入れ子じゃ。夢から覚めたらまた夢だった、なんてこともあるだろう。今拙僧たちはそれと同じことをしておる」


 じゃあ、私たちは同じところをぐるぐる回っているんじゃなくて、どんどんと深いところへと下っているのかな?

 導満君はここを「夢」って言ったけど、じゃあ私は今も家のベッドで寝ているのかな?





「うわあ……なにこれ? 気持ち悪い……」


 ……裂け目を見つけてくぐるのを何回繰り返したのかな。

 その裂け目をくぐった瞬間、私は今までしてきたことが同じことの繰り返しじゃないことがはっきり分かっちゃった。


 空の色が急に変わっている。

 どんよりとした嫌な夕暮れのような色。

 街の建物は急に全部古びてしまったみたいで、どこにも人がいない。

 ゆらゆらと人の形をいた悪性があちこちをさまよってる。

 風邪を引いたときに見る一番嫌な夢が、目の前の現実を塗りつぶしちゃったみたいな感じだ。

 絶対に、ここに長い間いたくない。


「いよいよ夢の深みにまで入り込んだか。そうなると、行くべき場所は加茂神社だな」


 それまでずっと私と寅吉に案内させていた晴盟さんが、先に立って歩き出した。

 私はようやく道案内が終わってほっとして、晴盟さんの隣で並んで歩く。

 悪性はここでは大人しくて、私たちがすれ違ってもあまり反応しない。

 じっと立っていると私たちに気付くみたいだけど、そのまま晴盟さんについていけば特に追いかけられることもない。


 それよりも、街のあちこちがおかしくなっているなあ。

 郵便局の建物の中から大きな木が生えて天井を突き破って伸びているし、道路を横切って大きな川が流れているところもある。

 加茂神社に続く階段を登っていくと遠くまで見えるから、ますます変なところが見えてきた。

 線路の向こう側は切り立った崖になっていて滝が流れ落ちてるし、反対側は砂浜になってものすごく大きなクジラの骨みたいなのがある。

 あちこちで雨が降っているのに天気は晴れているし、よく見ると建物そのものがゆっくりと動いているところもあるし。


「なんなのここ……。私の知ってる八百古里市がめちゃくちゃになってる」

「それはもちろん、ここが夢の中だからだな」


 私のつぶやきに、晴盟さんが答えた。また、ここが夢の中だって言われた。


「誰の夢なの?」

「お前の夢、とも言えるし、オオヒメの夢、とも言える。もちろんこの晴盟の夢とも言えよう。夢はすべて深いところではつながっているのだ。そしてその最奥には……あれが横たわっている」


 加茂神社に私たちがたどり着くと、晴盟さんは手に持った扇で野火桜の方を指した。


「なに……これ?」


 野火桜の根元が大きく裂けて、真っ黒な穴が空いていた。

 そこだけ夜になっているみたいに、どんなに見つめても中がどうなっているのか見えないよ。


「里子よ、この野火桜の木の下には何が埋まっていると思う?」


 晴盟さんは恐がらないでその穴に近づき、手招きしながら私に尋ねる。


「――死体?」

「ははは、そういう言い回しがあるようだな」


 なんか「サクラの木の下には死体が埋まっている」って言葉を聞いたことがあったから、なんとなくそう言ってみた。


「だが当たらずとも遠からず、と言ったところか。この野火桜の下には、いや、この日ノ本の下には――オロチが眠っておる」


 それまで、五郎丸にも多聞丸にも、忍君にもアシダカさんにも平然と受け答えしていた晴盟さんが、わずかに恐がってるのを私は分かった。


「オオマガツヒ……」


 アシダカさんが言ったあの名前。

 オオヒメちゃんが言ったけれども聞き取れなかったあの名前。それを私は口にした。


「そうだ。すべての幻想の源であり、この世そのものを夢見る大いなるオロチだ」


 アシダカさんが私の隣に立つと、憎らしそうに穴の中をのぞき込んだ。


「俺の妹の夢から……オオマガツヒの夢があふれ出そうとしているようだ」





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