第4話

母は泣きながら、私の目見て言った。



『殺して』と。



悲しかった、母のその顔も、祖母がもうこの世にいないことも、全部。


信じたくない、信じられない。


私は高校でいじめにあっていることは一切伝えていなかった。母が家を守ってくれている以上、私は自立しなければと思っていた。


母の口から出る愚痴や希死念慮はずっとずっと聞いていた。

いつも、もう少し頑張ろうと伝えていた。


母は、とうに限界だったのだ。辛かったのだ。




「お母さんは、よくやったよ。自分の親の面倒もみて、家のこともしてくれて。」



“でも、私のことは一切見てくれなかったね”



その言葉は、喉の奥にしまった。




『お母さんもう辛いわ、生きてるのも。

どうせ、私はもう親殺しだから、今死んでも構わない人間になったのよ』


「…そうだね、殺したのは事実だから」




思えば、私の人生は親に振り回されていたな。

島に残りたかった私を無理に連れてきた母。

その気持ちもわかるし、私は幼かった。


祖父母の事故、いじめ、母の精神の崩壊。


もうとうに私も、限界だったのかもしれない。




「楽になろう、お母さん」



私は泣きじゃくる母を抱きしめた。


震える肩、ぬくい背中、辛そうな声、柔らかい腕、ごわごわの髪


全てを、この手この目で確かめて、



「お母さん、私をここまで育ててくれてありがとう

これからもずっと、忘れないからね」





母の背中にナイフを__

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