第3話
高校3年生になった私は、クラスではただの浮いた存在になっていた。
幸いにも就職組で、受験がないため他の生徒より早く帰れたし、バイトも継続して入り続けることができた。
夏。
父が亡くなって、3年になった。
晴天の空、雲ひとつなく、照りつける日差しが半袖の私の腕には痛かった。
今日は休みだ。バイトは昼には上がって、帰宅して祖母と祖父の面倒を見るつもりだった。
家のドアに鍵はかかっていなくて、玄関には変な空気がただよっていた。
おかしい、なにかがおかしい。直感で、わかる。
私がリビングにいくと、祖母のベッドに腰掛けた母が、息を荒げて低い声を出していた。
『お前が、あの日、外に出たせいで、事故にあって、寝たきりになったせいで』
『私の人生は、もっと、悪くなったんだ』
『お前が、死んだあと、お父さんの首も締めるから』
『そしたら、私も、娘も、すぐそっちに、むかうから』
開いた口から唾が出た、心臓が強く打ち付けて血管が張り裂けそう。
私は母の手を思いっきり引っ張って、祖母の首から離した。
もうすでに、祖母の顔は蒼白で、息もしていないようだった。
「…ばあちゃん死んでるよ、どうするの」
『次は、おじいちゃんのことを殺しに行く』
「何言ってるの!お母さん!やめて!」
祖父の部屋に行こうとする母の顔を思いっきり引っ叩いた。
思えば、高校生活の間こんなことは何度かあった。
母が祖母や祖父に暴力をして、顔にアザを作るのはしょっちゅうあった。
その度に警察を呼ぼうとしたが、少ししゃべれる祖母がやめてと言ったのだ。
『お前を産んだのがそもそも間違いだった。結婚したのも、あんたのお父さんと出会ったことも、すべて不幸になるためのものだったんだ。
ああ、なんで気づかなかったんだろう、私の人生、全部パーだわ』
「お母さん、やめて。落ち着いて」
お母さんはふらふらと台所に歩いて行った。
私はそれを追いかけて、腕を掴んだ。
母が取ろうとしたであろうキッチンナイフを、私は手に取った。返せと言う母の腹を蹴っ飛ばした。
「今、落ち着いてくれないから、私は最悪の手段をとってでも、お母さんを止めるから」
頭が混乱していたのは、私も同じなのに。
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