第14話安価品の行方

ナラクはギルドブレイズの面々の所に転移していた。そして突然現れたその男を見て面々は絶句。ナラクは気にせず口を開く。

「えっと名前知らないけど中級傭神になったお前にこれから起こるかも知れないその指環の件について言いたくて来たんだが、どうした変な顔してるぞ?」

最初に正気になったナマナが慌てた声で

「どうしてここに転移してくるんですか?というか今まで力を隠してたんですか?ここまでとは思ってなかったです」興奮気味。ナラクは

「言っとく件があるって言ったし隠してた覚えは無い」サクッと答える。

そこにバゾは

「俺の指環に何の用っすか?」怯えている。

デンガとクグも正気を取り戻しクグが問う。

「指環を返せとでも」「安価品って言ってもその指環はお前のもんだよ。但しこの前言った通りそれは一週間の寿命しかない。性能を確保するのに寿命を代償にしたからな。俺はその指環を好きにしろって言いに来た」

四人共何を言ってるのか見当もつかない。ナラクはこれからその指環について予測する。

「いいか?その指環の価値をその中級が見せた。だからその指環を欲しがる奴が出て来ても可笑しくない。だからもしそれを誰かに売るつもりなら売っていい。というかそのつもりだろ?」

バゾは思わず口に出る。

「知ってるならはっきり言うっす。確かに売るつもりっす。これはもう俺の物ですからどうしたって文句は言わせないっす」「だから売っていいって。俺が言いに来たのは売るつもりなら手を挙げてる奴の中で一番強い奴に売ってくれ。俺がお願いしたいのはそれだけだ」

そこにナマナが入って来る。

「どうしてそんな注文を?」「それは言えないな。但しブレイズにとってちゃんと旨味がある」「どういう意味ですか?」「売った後にやって来るから楽しみにしときな、じゃあな」

ナラクは用件を済ませたという顔でどこかに転移。ブレイズの面々は互いの顔を見る。だがこれからする指環売却についての誰に売るかの方針が決まった。

翌日

ギルドブレイズの拠点に百名近くの候補がやって来た。この光景を見ているクグは

「随分集まったもんだな。この指環の寿命も一緒に伝えたのにな」苦笑。

「そりゃあ集まるだろ。なんたってグレード2から3に押し上げた指環だからな。それに皆考えてる妄想は一緒だろうからな、ガハハ」

ブレイズのギルドマスターデンガは大笑。それを冷静に見るナマナが口を出す。

「正直ここまで人が集まるのは予想外でした。この光景をナラクは予想していたのでしょうか?」でしゃばるのはバゾ。

「そんなのどうでもいいっす。取り分の三割をくれる約束は守ってもらいますよ」そこにクグは呆れた声で「アホ。この光景を生んだのは間違い無くナラクのあの戦いっぷりだよ。お前は単なるおまけ。そのおまけがでしゃばるな。金額一割にするぞ」一喝。

「それは勘弁して下さい!」クグに土下座で拝むバゾにナマナは「そもそもあの指環は兄さんの機転で手に入れたんですからあなたがデカい口を叩くのはお門違いです。もっと控えなさい!」更に釘を差す。

デンガはこの場を収める為にクグとナマナに両手のひらを見せながら「まあその辺にしとけ。バゾの頑張りがあったからこその今日だ。そんなにピリピリするな」たしなめる。それに

クグは「了〜解」ナマナは「はい」の一言。

デンガはバゾに「お前もデカい口を叩きたいならせめて下級戦神ぐらいになったらにしろ。納得したなら立ち上がれ。もうそろそろ始まるからな」促す。

今日ここで始まるのはオークション。但し試合をしベスト8まで残った者達だけがオークションの権利を手に入れる。戦いのルールは素手とエナジーのみ。普通は文句のオンパレードだろうがナラクのあの戦いを見た者達が集まっている。文句どころかあの戦いはもう憧れ。あんな戦いをしてみたい者達の集まり、皆了承済み。

戦いが始まる。ナラクのあの戦いの再現が出来る者はいない。だが全員が奮闘する。全ての戦いが終わり、残った八人の中にエアロルのギルドマスターバルカもいた!

それを知った四人は状況が飲み込めない。

バルカ以上に目立った者はいないが顔をフードで隠していて体つきから男のような怪しい奴もいるが危険は無さそうとブレイズの面々は判断した。

オークションを開始。会場は砦の中で一番広い場所、元は宴会場。そこにはベスト8だけでなく負けても誰が手に入れるのかを確かめたい観客もいる。司会者はナマナ。

「勝ち上がった皆様おめでとうございます。これよりオークションを始めさせて頂きます。

と言ってもこの指環だけですが」

ナマナはポケットから指環を取り出し目の前の机に置く。

「では早速始めます」ナマナは世間一般的指環の上限額とされる「十万ルブから」オークションが始まった。

最初に手を挙げたのはバルカ。「五十万ルブ!」いきなり値段を上げたバルカにベスト8の半分は諦める、持ち金が五十万ルブ以下しか持って来ていない。その者達はうなだれるしかない。勿論ここで終わらない。

「百万ルブ!」

会場がどよめく。たかが指環に払う額ではない、そうバカにしているが内心は本当にその程度の代物なのか、もっとしても良いのではないかという疑問。それに応えたのはバルカ。

「二百万ルブ!」

百万ルブと手を挙げた者は全身をワナワナさせクソと言わんばかりの落胆。五人目の脱落者。

この流れで声を挙げる者は

「三百万ルブ!」勝ち誇る。だが考えが甘い!

「五百万ルブ!」バルカが上乗せ。

 勝ち誇っていた者は天を仰いだ。六人目。

会場はこれで決まったと確信したがその程度の考えだから負け犬。それを証明したのは怪しい奴!

「一千万ルブ!」高らかな声。

バルカは引き下がらない。

「二千万ルブ!」この時点で安価品の適正価格を超えた!ブレイズの面々、観客も流石にこれ以上は無いだろう、その考えは怪しい奴がドブに捨てる。

「三千万ルブ!」

バルカは歯を食いしばる。これ以上はギルド運営に支障が出る額。ギルドマスターとしてそれはしてはならない。もう誰も手を挙げない。それを確信したナマナは宣言!

「三千万ルブで決まりです。おめでとうございます」

そこにいる者達はまだ納得していない。それに含まれるバルカが怪しい奴に向かって

「あんた何者なんだい?顔ぐらい見せな!」

それに応えるように立ち上がりフードを脱ぐ。

その顔は周囲を騒がせた。怪しい奴の正体は

「まさか、ルーク騎士団団長レブル?」バルカは戦意喪失。そう金銭面でグレード3のギルドでは騎士団の財力には勝てない。

レブルは気にするでもなくナマナの所へ。ランスロット大金貨六枚を机に置く。

「ではその指環を頂こうか」ナマナは平常心を保ちつつレブルに指環を渡した。レブルはもう何も言わずにこの場を去って行った。

それをただ見届けた者達はざわめく。指環をどうするか?ベスト8に残った者達どうにかそのおこぼれにあずかれないかを考え始め、ブレイズの面々はナラクの思惑通りになったのに驚くばかりだった。









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