第15話馬鹿馬鹿しいミス
レブルはルーク騎士団領に戻っていた。その足で真っ先に向かったのが治療室。そこにはもう九割方回復していた
「ラダン、調子はどうだ?」生意気男が身を起こした。「団長、何かおかしな顔してますけどどうかしたんですか?」「私は今そんな顔をしているのか?」「そりゃあもう何から言うべきか迷ってる顔ですよ。それでまず何が言いたいんです?」
レブルは一呼吸。
「死にそうな声をあげていたのでな。まあ見た感じ大丈夫そうだな」「大丈夫ではありませんよ。いまだにショックは受けてますよ。なんたってあれだけのハンデを要求したのに俺は勝てなかった。あんなの怪物です。明らかにどう育てばああなるか見当もつかない」
ラダンはあの時食らったダメージを思い出してしまった。もう回復している。しかし今でもあんなのは本物の神業、騎装だけを断ちダメージは与える。しかも剣の騎装は金色騎士の騎装!
あんなものに勝てる奴がいるのか?それらが頭の中をかき回す!
「クッソ。何とか出来ねぇのかあの怪物に立ち向かえる力がどこかにないのか?」
どうやら心は折れかけているだけで完全に断ち切れてはいないのを確認出来たレブルは用件を口に出す。
「あるぞ、ここに」
レブルは指環をラダンに見せると
「どうしたんですかこれ、ていうかこれをどうして団長が持ってるんですか?これあの傭神が身に着けてた指環ですよね?」「ああそうだ、あのギルドはオークション形式でこの指環を売ったのだ。そしてそれを私が手に入れた」「嘘だろ?いや、でも、間違い無い。でもこれをどうするんですか?」「量産する」
レブルの言葉はラダンの願望に突き刺さる。もし出来れば今より上に行けるとラダンは確信し
「もし叶えばポトアは俺の所に来る。もうあの怪物の所に行く必要が無くなるんだからな。団長!あんたは最高だ!」喜びに震えていた!
レブルに早速訊く。
「誰にやらせるつもりですか?」「お前だよラダン」「は?俺には道具を創るスキルはありませんよ」「最後まで聞け。お前にはこの指環の解析をやってもらう」「俺がですか?」「そうだ。ルーク騎士団で一番なのは黃都で学んだお前だからな」
レブルの指摘は間違い無く解析を高い精度で出来るのはここの工房で働いている者達ではなく聖騎士ラダンが一番。
「セキュリティとか大丈夫なんですよね?」
レブルは笑う。
「それもお前がやるんだよ。では行くぞ」
ラダンは首を傾げる。「どこにですか?」「勿論この騎士団の工房にだ。流石にここで解析は出来ないだろ?」「そりゃあそうですけどそんなに急ぐ必要あります?」「この指環は後、数日後に消えて無くなる代物らしくてな。だからその前に解析をする必要がある」
「待って下さい。指環がまだ形を残してるのが信じられないんですが?」「それがあのナラクという男の創る指環の力らしい。だがそれも解析すれば解決だ。ほら行くぞ」「着替えぐらいはさせて下さい」
三十分後
ルーク騎士団工房にはレブルとラダンのみ。他の者達は人払いしている。解析後その情報を盗まれるのを回避する為。レブルは
「準備は済んだろう、始めてくれ!」冷淡に命令し檄を飛ばす!ラダンは「応!」集中!
指環を解析する。それは海に潜ったようなイメージをラダンに突きつける。それも恐ろしく深い。潜っても潜っても指環の核は見えない。それでも潜った!それが幸いしたのか城壁のようなものが見えた。手の届く所まで潜ったラダンはその城壁に触れた。それが運の尽き。ラダンはその城壁に飲み込まれた!
指環はラダンを栄養にして魔力を展開!黒い濁りが発生。襲ってきたそれをレブルは聖域を展開して応戦。だが少しずつ侵食されて行く。たまらず剣の騎装を出現させその濁りに聖撃。だが少し揺らぐだけで効果は薄い。工房の脱出を試みる。とにかく聖域と聖撃を展開し続けた末、脱出に成功。だが濁りはレブルを囲み人型を次々と展開。その人型はレブルを襲う。聖撃を放つが今度は全く効果が無い!それどころか更に数が増える。レブルは仕方なく転移しようとすると発動出来ない。レブルはどうしようもなくその濁りに飲まれる。その後ルーク騎士団領は黒い濁りに占拠された。被害者は把握されていない。これが後の呪怪展開事件である。
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