第8話ブレイズに指環を届ける
自由ギルド指環屋の領域でクグと約束した日
ナラクは円釜の出入り口に近づくと熟成された指環が出現。その指環を右手に取って確かめる。
問題無く完成した指環を視てナラクは頷く。
ナラクは歩いて立て札の前で止まり触れる。メッセージを仕込み中から慣らし中に変更しレベルも一に変更。レベルは出来るだけ一気に変えてはいけない。領域がへそを曲げて牙を剥く、例えこの領域の主人であるナラクでも。だからレベル零からレベル二に変えるのはナラクにとってもギリギリの線。そのギリギリの線でも顔色一つ変えずに出来るのもナラク。歩いて領域を出た。
朝七時
昼時に人が賑わう繁華街は開店準備に忙しい。
ナラクは通り抜け中古の砦をカスタムされたギルドブレイズの拠点に着いた。
門は閉まっており門番がナラクに近寄る。
「何だお前は?」
「指環屋だよ、注文通りのものが出来たから届けに来た」
門番は首を傾げる。
「お前があの指環屋だって言うのか?明らかに俺よりも弱いお前がか?」
ナラクは自分の好調子に内心喜ぶ。
「そうだよだからナマナさんを呼んできてくれ」
目に怒りを宿した門番の槍一突きをナラクは右人差し指で防御。本来なら傭神の一撃で指は千切れる。しかしナラクはエナジーをノータイムで使える。エナジースキルは使うのには初期動作とエナジーを必要な分集中させなければ使えない。だがナラクはすでに思うより早く使える。それを可能にしているのが左手人差し指の指環。ナラクが玄武と名付けた指環のお蔭でそれが可能。なのだが恐らくは他の人に玄武を創っても使えないだろう。なにせ条件がエナジーを極め過ぎた、この一点。誰もが馬鹿にするような条件だがナラクは齢十の時に達成している。ナラクの指環を創るのに必須であり最低条件だから。なのでナラクは常にエナジーを纏っている。その理由の一つが自身の実力を隠す、下級傭神にではなくもっと実力を隠しておいた方が良い、ナラクが敵と見なした相手に一定の効果があるから今でも鍛錬感覚でやっている。それを知らない下級傭神ではエナジーの膜で充分対応可能、なんてたかが門番に気づける訳がない。だから自分の槍を人差し指で受け止めているナラクに困惑。この理屈を知らない下級傭神は距離を取って槍を構え直す。たった一度の攻撃で情報過多になった下級傭神は息を荒らげる。そんな下級傭神を無視して
「指環屋だ!約束の午前八時まで待ってられなくなったから来た!門を開けな!もし開けないなら門をぶっ壊す!」
ナラクはエナジーフィールドを展開、その場を容易く支配する!下級傭神は指先一つ動かせない。門が開き出て来たのは特級傭神クグ。
「お前ぇ何でもう来てんだ?約束は午後二時だったろ!」
「昨日思い出したんだよナマナさんとの先約をな、それが午前八時のここなんだよ」
クグは眉間に力が入るのを自覚。
「どういう約束だよ?」
いちいち訊いてくるクグにナラクは呆れる。
「俺は指環屋なんだから指環を届けに来たに決まってんだろ。取り敢えずギルドマスターの部屋にまで案内しろ。お前の指環もメンテナンスが終わって持って来た」
「もしかしてギルドマスターの分もか?」
「当たり前だろ」
ナラクは軽く言い切った。クグはもう心身がギリギリ。
「連れて行くからエナジーフィールドの支配を止めてくれ、これ以上はもう耐えられん!」
クグの心からの訴えに支配を解く。すると門番下級傭神はその場に崩れる。クグも息を思いっきり吐く!この程度で済んだのは幸運と言っていい。後一分もあれば門番は廃人確定。クグは当分口を聞けなくなっただろう。こんな体たらくだからこそナラクは傭神に見向きもしない、術の一つも試せない脆弱な存在、傭神に。
その後すぐにナラクはクグにギルドマスターの部屋に案内。クグはドアをノック。するとおめかし済みのナマナがドアを開ける。
「待ってましたよナラク♡さあ中へ」
ナラクとクグはギルドマスターの部屋に入った。そこには腕を組んで椅子に座っているギルドマスターに
「あんたは相変わらず俺に抵抗しないと気が済まないのかデンガ?」
ナラクは戦意をエナジーに乗せてぶつけようとする。デンガは堪らず立ち上がって頭を下げて謝る。
「勘弁してくれ。それを食らったら俺はどうなる?」
「デンガって中級武神だったな。そうだな死にはしないだろ」
「それは答えになっていない」
デンガの声には確かに抵抗感が出ている。しかし皮鎧大男の顔には汗がにじんでいる。ナラクは趣向を変える。エナジーの質を上げていく。その質の高さだけでこの場を支配する前に
「止めてナラク!」
ナマナが堪らず割って入る。その責任感に免じて戦意を乗せたエナジーを消す。
「相変わらずナマナさんは大したもんだね。このギルドはナマナさんで持ってるのも納得が行く☆」
黙れないデンガは
「このギルドは俺が築いたんだ!ナマナが築いたわけでは無い!」
必要以上に主張。ナラクは呆れながら
「そんなのここの連中なら常識だろ。いちいち言ってたら自分の格が落ちるぞ」
指環をデンガに渡し
「これから少しは指環にもそれぐらいの気持ちを込めてくれ、リペアって結構難しいんだぜ」
デンガを注意し
「そのせいでもうその指環、リペア出来なくなったからな」と忠告。
そのナラクの言葉にデンガはまるで細心の注意で指環を扱っているかのように憤るが
「リペア出来なくなるとどうなるんだ?」
ナラクに強く言えない。ナラクは前にも言ったような気がして思い出す。
「クグの指環は二つ目だよ」
そう言ってクグに指環を渡す。クグは文句も言えずただ受け取り指環をはめた。それを見ていたナマナは我慢出来ずに
「ナラクさん、私のは♡?」
居ても立ってもいられない。そんなナマナにナラクは指環を渡す。
「取り敢えずテストして下さい。不備があれば調整するので」
ナマナは指環をはめてその力を展開。それにクグとデンガは待て待てと止めに入ろうとするが特に何も起きない。二人はナラクに説明を求める。ナラクは馬鹿達に説教臭く説明。
「あんたら指環の力が戦闘行為にしか使えないとでも?」
二人は堪らず
「「違うのか?」」マヌケな顔を並べる。
しょうもない二人にナラクは仕方なくナマナに創った指環の機能を伝える。
「いいか?ナマナさんに創ったのは事務専用だ。決して戦闘行為の代物ではない。ただあの手の指環は色々細かい設定が必要でな、何度か使い手のデータを取らないといけなくて、それで会う度に取ってやっとナマナさん専用の指環が完成したんだよ。と言っても今やってもらってるテスト次第で調整が必要になるかもだけどな」
そこでクグは疑問を口にする、指環を知っている者達で器が小さいなら尚更な
「ナマナの指環はいくらだ?」値段。
「本当に馬鹿だなあんたら」ナラクは呆れる。
クグは当然の疑問をぶつけただけで馬鹿扱いするナラクに詰め寄るのはクグでは不可能。その場に立ち尽くすクグ。すると
「ナラクさん!これ最高です!私はこういうのが欲しかったんです。本当にありがとうございます!」ナマナはナラクに向かって深々と頭を下げた!そして頭を上げたナマナは自分の兄に向かって
「また馬鹿を口にしたの兄さん?」
クグは食い下がる。ナマナの兄として言って置かなければ
「その指環いくらした?」
このギルドの財力で買ったのであれば見過ごせない。そんなクグにナマナも呆れるがこれでも自分の兄。ほったらかしにもして置けない。
ナマナは子供を諭すように口を開く。
「兄さん、この指環は私のお金で買いました。決して安い買い物ではありませんが本当に私のお金で買いました。値段は二百万ルブです」
「何だ、寝たのか?」クグの失言。
「ホントバカだな、そんな訳ないだろ。本来なら五百万の所をデータ料を差し引いて二百万なんだよ。そもそもナマナさんが俺を求めるとでも?」
「私は求めてくれればいつでも良いですよ♡遊びでも構いませんから」その立ち姿は艶めかしい。このギルドに所属している者達なら誰もがそれを言われたい!だが
「それで俺がその気になったらどうするんですか?少しは御自分を大切にした方が良いですよ」ナラクはその気にはならない、あくまで客でしかないからだ。
それを前に聞いていたナマナは下唇に力が入る。その姿を見ても可愛いぐらいにしか感じないナラクはデンガに訊く。
「クグの部下っぽいのはまだ来ないのか?」
そうだった、三人はバゾがまだ来ていないのに気付く。ドアにノック。ナマナがドアを開けるとそこには入りづらそうにしていたバゾの姿。ナマナはバゾに促す。
「入りなさい、後はあなただけよ」
バゾはどういう状況か把握出来ていないが言われるがまま部屋に入る。そこにはあの指環屋もいる。バゾはナラクを指差して訴える。
「何でこいつがここにいるんすか?」
相変わらず生意気なバゾにナラクは告げる。
「それはお前の指環を届けに来たからだな。それでこれが十日間お前の相棒になる指環だ、ほれ」
ナラクは指環をバゾに渡す。バゾはすぐにその指環と世間に広まっている指環の違いに驚く。
「何すかこれ?本当に指環っすか」
ナラクは促す。
「どの指でもいい、はめてみな」
バゾは何となく右人差し指にはめると
「なんだコレ?」
バゾは異常と言えるその感覚を味わっている所にナラクは今日のバゾのメニューを告げる。
「あんたにはこれから明日の中級昇格試練を確実に突破する為の訓練を受けてもらう、拒否権は無い」
バゾは何をさせられるのか、ただ一つ確実なのは未知の経験を積める楽しみしかない。対してナラクは遊びがいのありそうなオモチャを見る目だった。
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