第44話

「考え、の答えが出たから。……私も付いて行きたいな、と」

「考え中って言ってたやつか。…いや、何で。その答えが出ると、迷夜が殴り込みに付いて来ることになるんだ?」

「………。…稜星さんの申し出を受けようかと」

「? ……。………!」

 すぐに理解出来なかったのは、自分でも仕方が無い、と言い訳する。いや、だって。既に少し巻き込んではいるが、こんな、しっかりと巻き込まれたら厄介な話をしておいて、迷夜本人も憂欝そうで、なのに求婚の答えを承諾している、とはちょっと信じられない。

「……遠回しだな」

「…直球で言うのは、ちょっと」

「宰相の娘とか、その他の妃とか、伯父上に意見するのは直球なのに?」

「うぅ…」

 痛いところを突かれた、みたいな顔だ。

「それにしても、いきなり何で」

 遊道たちは当然、この会話が謎なので首を傾げている。

「……。稜星さん、流石に昔話を聞かせただけ、だとそこで終わらせるでしょう。それ以上は巻き込めないって。口止めして、その程度で。だから…全力で巻き込んでもらうには、こちらも相応の決心が必要かなって」

「決心…」

「本当は、巻き込まれるつもりも、決心するつもりも無かった筈なんだけど。でも、そうしたいって思っちゃったから」

 そうしたい。…巻き込まれても、良い、と? 稜星の傍に居てくれるのか。

「手段、とか言ってたけど。…あれって巻き込まれるための手段ってことか…」

 求婚の承諾を手段として考えているとは。一筋縄ではいかないところが迷夜だ。

「俺は迷夜が受け入れるって言うなら、遠慮なく付け入るぞ?」

「……うん」

 あまりに不本意そうなので、逆に稜星は笑ってしまう。迷夜が更に少しむくれた。

このやりとりを見て、梢花は何かを察したらしい。

「旦那様に、文を出します? 迷夜様」

「なっ、ちょっ…と。お義母様じゃなくて、父様に文なんて、普段出さないのにっ。…そこまで話は進んでないわよ?」

「俺は進めても良いけど」

「稜星さん…っ」

 困惑しているところ悪いが、照れているのが可愛らしい。

「まずは、殴り込みに行くんでしょっ」

「ま、そうだな」

 この辺りで、孝心と矢厳が悟ったようだ。

「え。そんな話になってたのか?」

「この妃が、相手…か。随分変わった趣味…。悪い人間ではなさそうだけど、何か、色々…。うーん…。稜星様が幸せなら良い、か?」

「お兄様? 矢厳も…何の話?」

「また今度、お話します。彩維様」

 遊道と彩維はきっと分かっていない。そして、遊道は迷夜関連で疲れ切っていたらしい。

「あー。じゃあ、もう。今から行くか」

 実に投げ遣りなまとめに入り、それこそが次の行動の指針となった。


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