第42話

「さておき、別の質問なのですが」

 何かもう、迷夜は己の速度で生きている。他者を巻き込みながら。

「つい先日、王様の遺言状が王族の方々の前で発表されたのですよね? 間諜を放っているのでしょう? 遺言状には何とありましたか? 私の推測では稜星さんの血筋についてと、現在の王族の皆様の血筋の真実について、だと思うのですが」

「……。よく分かるな」

「だから、宰相様は先王と同じく襲撃命令を出したのでしょうし、遊道様も『王族による同族経営の弊害』と仰ったのかと」

 遊道は遺言状の内容を知っているからこそ、宰相に食って掛かったのでは無いか、と。

 今後、伯父は迷夜の前では隙を見せないように振る舞うだろうな、と思う。彼女を敵に回しても良いことなど無い。

 一方で、稜星は遊道が彩維を後宮の妃にしたのは、万が一、に備えてだとも理解している。それぞれに他に気に入った相手がいないなら、の選択肢の一つとして。無理に縁付けようとするのでは無くそれが幸せに繋がるのなら、と。主従でありながら愛し合った氷輪と喜雨のことも念頭にあったのかも知れない。…万が一、は無かったのだが。

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