第4話秋
夏のむせる程の熱気に豊穣の風が吹き始め秋という季節に移り変わろうとしていた。
夏休みの一件で春と菫の関係は進み側から見れば交際している様にも感じる独特な雰囲気を醸し出していた。
「先輩!好きです!付き合ってくだひゃい!」
春は夢の中で恋愛小説のベタな光景を体験していた。
「!?は?え?どゆこと?てかどっかで見たことあった様な…」
春は記憶を振り返るが朝特有の靄のかかった思考では思い出せず、思考を放棄した。
『それにしても告白されんの初めてなんだけど…てかどうしよう…とりあえず先輩に相談しないとかな…』
登校後、春は早速、菫の元へと向かった。
「あのー菫先輩っていらしゃいますか…?」
初めてくる三年生の教室の雰囲気に気圧されつつも優しそうな先輩に話しかけていた。
「あーー菫ーーーー!なんか呼ばれてるよーーー!」
菫は春が自身の教室に来た事に驚きながらも春の元へ向かった。
「どうしたの春くん?珍しいわね。」
「ちょっと相談事があって、どこか場所移せませんか?」
春は自身を刺すような目つきで見る三年生に若干ビビりながら移動を始めた。
そこは朧げながら来たことがある場所だった。
「それでどうしたの?私の教室に呼びに来るなんて珍しい。」
「それが先輩今日俺告白されるみたいです…」
「私が!?今日告白するつもり無いけど…」
菫の顔はみるみる真っ赤になり湯気が出そうなほどだった。
もちろん春も同じくしてそこには真っ赤な顔で囁くように話す2人が居た。
「えっと先輩じゃないんですけど…夢で誰かは覚えてないんですけどとにかく告白されたんです。」
「なるほど…まぁ私に相談してもどうしようもないし、なんとかなさい。」
「あ、あの!春先輩でしゅか!?」
「ん?あぁそうだけど。」
「先輩!好きです!付き合ってくだひゃい!」
「「えぇ!?」」
春と菫は同時に素っ頓狂な叫び声をあげた。
『まさか、朝だったなんて…勝手に告白と言えば昼とか放課後とかじゃないの?てかそれどころじゃない、一体なんて答えたら…てかそういえばこの子!』
「えっとー確か白空 葵さんだっけかな?」
「そうでしゅ!」
白空
身長は春より低く非常に小動物感溢れており、即決で断ることが憚れる程の美少女だった。
また、春は今現在まで告白された経験はなく、内心は非常に焦っており菫へ視線を向けた。
菫の瞳は口よりも流暢に怒気を含めて言葉を発していた。
『春くん?なんて答えるつもりなのかな?ん?』
「俺は君のことあんまり知らないし、まずは友達からってことでどうかな?」
「そうですね…わかりました!これから色々知ってもらえるように頑張りましゅ!」
葵は少しの間熟考し、そう言い残すと疾風のように消えていった。尚熟考の間、春の脳裏では『やばい、どうしよう』と幾度も叫んでいた。
「あの子、確か君と私が出会ったきっかけの時に居た子よね…?」
「そうですねぇ、それにしてもいきなり過ぎて驚きましたよ…」
「まぁいいわ、とりあえず朝礼が始まるしどうするかは放課後話しましょ。」
「そうですね、それじゃまた後で!」
春は足早と教室へ向かった。
時間は過ぎ春は紫優と昼食を共にしていた。
「聞いてくれよ紫優ーーーー」
「なんだ?珍しく昼食を誘って来たと思ったら、相談とは珍しいな。」
「いやぁ、ここ最近菫先輩と上手くいってるんだけどさ、ほんと今までの夏休みで最高の時だったよ。花火行ったりさ!」
「なんだ?ただの惚気のために昼食誘って来たのか?」
「すまんすまん、そうじゃなくて、実は今日の朝、菫先輩と一緒にいる時に一年生の子に告白されちゃって…」
「おっま、告白されたの!?」
「ちょい声でけーって、なんとか友達からでって言ったけど…まじどうしたら良いのか…」
「まさか春なんかに告白する子が居るなんて、これは夢?」
「うるせーよ!確かにモテたことないけど!万年モテ期のお前と違ってな!」
「いや俺は感動してるんだよ、あの常に無気力だった春が…」
「とにかくどうしたら良いんだ?菫先輩にとっても嫌だろ…」
「まぁ付き合う気ないのなら現状維持でいいんじゃないの?お前は菫先輩が好きなんだろ?」
「そうだけど、なんか申し訳ないと言うかさ…」
「友達からって言ったんなら別に友達のままでいいだろ?変に中途半端になるとどっちも手元からいなくなるぞ?」
「まぁそうだよな、紫優のおかげで考えが纏まったよ、ありがとな。」
それから春ほ葵とは普通の友達付き合いをし、菫とは順調に関係を進展させて行った。
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