第9話 轟ちゃんと甘栗くんのクラス交流会③
【周りの奴らに轟が振られたと思わせてしまうこと】
【城崎と双葉が付き合ってる噂が立つこと】
【轟に双葉が近づくこと】
ーーーこれらを俺と轟は、今回のクラス交流会で避けねばならねぇ課題だ。
そのために俺は……
『にゃんにゃんにゃにゃにゃん!!!ハートブレイクブレイク!!こ!!ん!!!に!!!ち!!!わ!!!!
女の子にはね〜♫時々ムラがあるの♡
それを理解できない男の子は♫(`・д・)σ メッなんだぞ!!!はい!!!
にゃんにゃんにゃにゃにゃん!!!ハートブレイク!!こ!!ん!!!に!!!ち!!!わ!!!!』
俺のやるべきことは、この場で1番目立ち、俺以外の印象を残さないことだ。
ーーーだが目的を忘れるくらい俺は、全力でカラオケを楽しんでいた。
「甘栗く……ぶは!!!ぶはははははは!!!
ギャハ!!!ひ…ひぃーひゃひゃひゃひゃWWW
甘栗くんそれ何ギャハハハハハやべえってそれはWWW苦しぃ…ひぃー…笑いすぎて死ぬ…ひぃーWWW」
伏見は何故か息が出来なくなるほど涙を流していた。
…こんなに感動してくれたのか。俺の歌に。
周りのやつら、あの城崎も双葉も全員が俺に視線を集中させ、あ然とし俺を見ている…。
歌唱力には自信があるからな、皆驚かせちまったか。
轟は…
うわぁ…とゴミでも見るかのような目で俺を見ていた。
(甘栗くん…確かに誰よりも目立って欲しいとはお願いしたんだけど…間違いなく目立ってるけど…その曲のチョイスはちょっとごめんキモイよ。)
…轟の心の中ではこう思っていた。
断ったら死にそうな勢いで頼んできたくせに、つまんなさそうな態度しやがって轟。
城崎と双葉の前にお前を先に殴ってやろうかとも思ったが。
「最高!!まじ最高すぎるよ甘栗くん!ぶは!ぶははは!!WWW」
伏見を筆頭に、他の男子達(城崎を除く)が乗ってくれだし、女子に関しては…まぁ、すごい顔をされたが。歌っていて最高に気分が良いから轟への恨みは先々に取っておくことにしてやる。
そして俺の曲が終わり、俺への男子達の株がありがたいことに急上昇となったのだが…。
「城崎くん…私カラオケ初めてで…何歌えばいいのかわかんないよぅ…。」
目をぐるぐるさせ城崎と曲を相談する双葉ー…。
一緒にタッチパネルを見る距離は、相変わらずすげぇ近い。
無事目立つことができた俺だが、女子の目線は城崎と双葉に向き出すー…
「やっぱりあの2人ってー……」
コソコソと女子同士で耳打ちする姿が目につく……。
くそっ!!これじゃただ俺が気持ちよく歌っただけじゃねぇか……!!
チラッと正面の轟の方を見ると、案の定ーー…。
曲を探すふりをしながら轟の目はグルングルンに回っていた。
……ガッツリダメージを食らっているようだ。
そんな中、轟が歌う順番になるーー……
「次野乃亜ちゃんの番だよ!はい!」
とクラスの女子にマイクを渡され轟が入れた曲は……
「追いかけて、追いかけてもー…あなたの背中の端も見えない。一度だけ願えるのーなら……あなたに好きと言われたいーー……♫」
お前ええぇぇええええええええええええ!!!!
バリッバリの大失恋ソングじゃねぇかぁぁ!!
何故このタイミングでその曲を選んだ!!
今の心境すぎるだろ轟……!!!
俺と轟の計画は、轟の歌う曲のせいで台無しになろうかとしていた……。
察しが良いのはやはり女子で、轟の歌を上手いと褒めつつも、
「やっぱり失恋したのかなー…」
……という雰囲気なのか轟に対して気を使っているのが目に見えてわかる。
ーー男子はバカなので学園の美少女が歌う曲に、ただ可愛いを連呼していた。
轟は女子のあからさまな気遣いをビリビリ感じたのか、ドリンクを取りに外に出ようとした。
俺の方をチラッと見て顎をクイッと前にする。
ああ、表出ろっつーことね。
俺は飲んでいたコーラをグビっと一気に飲み干して外に出た……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「野乃亜ちゃんは大きなま〜ちがいをしてしまったようだよ〜。」
ーーー……某お茶の間アニメの弟のモノマネのような口調で喋る轟は絶望していた。
『……なんであんな歌わざわざ歌っちまったんだよ。どう考えても周りの女子察しちまったぞ。』
「…だって、歌う曲ってその時の今の心境で選んじゃう時ってあるじゃん。何歌おうかなーって思ってたら…なんか…つい。
どうしよおおおおおおお甘栗くん。」
地面に轟が沈み込む。
ーーコイツ、頭は良いらしいが本当なのか?
『もう周りにお前が失恋したことバレないようにするのは無理があるぞ…』
「失恋って言うなよ!!まだ失恋してませんからー!!!!!????勝手に終わらせないでもらってもいいっすか?!」
この後に及んで失恋を否定し出す轟。
いや、お前それは無理があるって。
『…まあ、周りの女子にバレるのはもう諦めろ。』
「今後どういう顔でクラスにいればいいの私…。
女子の優しさが逆に心エグって来てるんですけど。」
そこはもう自分でなんとかしてくれと轟を突き放し、
「もういい!!お花摘んで来る!!」とトイレに行った轟を後にし、飲み物を入れて俺は部屋に戻ろうとしたのだがーー……。
さて、あとはもう城崎が轟とは何もないと否定することと……双葉と轟の接触を避けないといけないが。
『どうすっかなぁ…』
ーーーと考えながら歩いていたのだが。
「双葉さん、どういうつもり?」
ーーー部屋の近くで女子数人が双葉を囲んでいるところに、俺は直面した。
「…ど、どういうつもりって…な、なにがですか?」
下を向いてオドオドしている双葉。
…城崎は部屋にいるのか。たまたま飲み物をつぎにいこうとしていたのか、そのタイミングで女子に囲まれたらしい。
「城崎くんのことよ。他クラスのくせにクラス交流会参加するとか図々しいと思わないの?」
「ご、ごめんなさい私そんなつもりじゃ…。」
「第一、轟さんに遠慮して身を引こうとかそういう気持ちにならないわけ??」
女子にガン詰めされる双葉。
轟がいない間に女子同士で結託したのだろう。
ーーー…いくらなんでも。
こういう数人で固まって1人を寄って集って詰めるのは俺は見ていて気分が良くねえなと思った。
「わ、わたし城崎くんとはそんなんじゃ…ただ、良くしてもらってるだけで…。」
いや、それはどう考えてもないだろ双葉。
「…っ!嘘つくんじゃないわよ!」
1人の女子が苛立ったのか双葉のことを押そうとしたのでーーーーーー
パシっと押そうとした女子の腕を俺は掴むーーー
『…よって集って1人をイジメてんじゃねぇよ。』
……俺はつい、双葉を庇ってしまった。
やべ、これ轟に怒られるかもしれない。
さすがに目の前でいじめられる双葉を放っておくことはできなかった。
「ひっ!あ、甘栗くん…。
な!なによ!そうやって男に頼るから嫌われるってこと自覚したほうがいいわよ!双葉さん!!」
とにかく城崎くんに近寄らないで!と言って女子達は部屋に戻っていく。
「あ、あのぅ…あ、ありがとう…。ございます。
助けてくれて…。」
双葉がオドオドと俺の目を見てお礼を言ってきた。
つい、助けてしまった俺は城崎が放っておけないと言った理由もわかる気がした。
『…ああ。つかお前もお前なんだよ。
女子に嫌われるようなことしてるって自分でわかってんだろ。なんでこんなとこ来たんだよ。』
「…はい、わかってます。
でも…仕方ないじゃないですか。
私…上手く人と喋れなくて、でも、なんでか城崎君はわりと…良くしてくれて…。」
私、友達いないしと双葉は後に続けて喋る。
「あ、あなただって…友達いないみたいですし。
わ、私の気持ち…わかりませんか?
1人だけ…自分に優しくしてくれたら…そ、その人と……一緒にいたいって思う…のは。
悪いことでしょうか…?」
ーーーーーーー俺は双葉が言ったその言葉を否定することはできなかった。
……確かに俺も、轟が普通に接してくれて嬉しかった。
だからこそ、轟の為に気づけば俺は協力している。
多少間違っている気がすることでも、何故か。
双葉が、自分に優しくしてくれる城崎と一緒にいたいという気持ちは確かにわからないことじゃなかった。
ーーーそれが轟を傷つけることに自然と繋がっていても。
『…悪いことでは、ないな。
ーーーだけど1人の人間がいればそれで生きていけるわけではねぇだろ。
城崎がいたからって、他のやつらに嫌われたらお前が生きづらいんじゃねーの。』
双葉は、カァっと顔を真っ赤にして俺を睨んだ。
ーーーーオドオドとか泣き顔とか以外に。
……恐らく城崎も見た事は無いかもしれない。
初めて見る双葉の表情だった。
「…だ!だったら……。」
あ、あなたがなってくださいよ。と双葉が口にする。
「あ、あなたが、私の友達に…なってください!!」
『…は?』
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