第8話 轟ちゃんと甘栗くんのクラス交流会②

「ごめん、道に迷ってて少し遅くなった。」


城崎の後ろには双葉がいた。

城崎の背中に隠れるように、おどおどとこちらの様子を見ている。


ーーーー案の定周りがザワつく。


【え…あれB組の子だよね?⠀】

【この前城崎くんにおんぶされて、噂になってた…】

【なんでここに?】

【…双葉さんってあんまりいい話聞かないんだけど…。城崎くんと付き合ってるってこと…?⠀】

【今日ってC組とD組の交流会だよな…】

【あれって轟さん大丈夫なのかな?⠀】


……まあ、周りの反応は予想通りだ。



「…え〜っと城崎くん。この子は…?」

伏見が困った顔をして城崎に聞く。



「この子、B組の双葉 桃菜さんって言うんだけど。

中々自分のクラスに馴染めないみたいで。

他クラスだけど少しでも皆に仲良くしてくれないかなって思って連れてきたんだ。

…みんな、どうかな?」



「城崎くん…やっぱりみんなに悪いよ…。

私、迷惑だから帰ったほうがいいんじゃないかな…。」

双葉は涙目で城崎の方を見る。

こういうのが女子から反感食らうところだよな。



「あ、あー…みんなどうしよっか。俺は別にいいと思うんだけどー」

伏見が周りの奴らに相談する。



ーーーまた他の奴らがザワつく。

…そして、轟の方に視線は集まった。


「野乃亜ちゃんは大丈夫なの…?」

C組の女子が轟に聞いた。



「別にいいんじゃないかな?

C組とD組のクラス交流会だとしても、目的はクラス同士の仲を深めるための会でしょ?

B組の双葉さんがいたって何も問題ないじゃない。

それに、少しでも人は多い方が楽しいと思うな。」


ニコーーーっと女神のような微笑みで轟が賛同する。



ーーーーー俺と轟の計画はこうだった…。



あの二人に痛い目を見せたいー…。

これが当初、轟が考えていたことだが。

俺も轟も相手を裏で貶めるような、汚ぇマネはしたくねぇ。



…それに、痛い目はどっちにしろ周りの反応で多少なりとも食らうだろう。



ーーなら俺と轟は今回のこのクラス交流会で、何を阻止するのか。


轟的には城崎と双葉が付き合うのを1番やめさせてぇ所なんだろうが…。



【周りの奴らに轟が振られたと思わせてしまうこと】


【城崎と双葉が付き合ってる噂が立つこと】


【轟に双葉が近づくこと】


…結局は轟が苦しむのはこの部分だ。

城崎は双葉をクラス交流会に連れてきて、轟と双葉を関わらせるつもりだ。

そして轟に、城崎と轟にはお互い恋愛感情はないと周りの前で言わせようとしているー…。



ーーこれを俺と轟は絶対に回避しないといけねぇ。

轟の精神がこれ以上崩壊しないために……。



「…轟さんは賛成しているみたいだけど、皆は双葉さんも一緒に参加して大丈夫かな?

俺も轟さんと同じで人が多い方が楽しめるし、轟さんに賛成かな?」

さっきまで黙っていた鳥羽が周りの意見をまとめようとする。



周りは、轟さんが言うなら確かに…と双葉を受け入れることになった。



田舎時代ーー。

男同士の集まりに自分の女を連れてこようとするダチがいた。

周りの奴らは人が良いヤツばかりだから、そいつの女がいても気軽に受け入れた。

だが内心…、男同士でしか話せない、盛り上がらない部分がある。やっぱりどうしても気は使っちまう。

最初から紹介するつもりで会うなら良いが、毎回女がいたら楽しめない。

【こいつを誘うと毎回女が付いてくる⠀】

そうなると段々誘うことも少なくなっちまうし、関係もあまり良くならなくなっちまう。

まあ、そのダチは結局女に振られて元に戻ったがー…。


城崎がやっていることは似たようなもんだろう。

こんなんじゃ余計双葉が周りと打ち解けることは難しい。



「よーーっし!!!じゃあ仕切り直して歌おうぜ〜!!!」

城崎と双葉が空いている席に隣に座ってたところで、伏見が場を切り替えようとする。

伏見はバカだが、意外とこういう気が使えるらしい。



各々曲を入れ、順番に歌い出すー…。



俺が今回やるべきことは………



今回のクラス交流会で、城崎と双葉に周りの視線が集まらないよう……。



【俺が誰よりも目立つことだ!!!!!⠀】



『次は、俺が歌うぜ。』



人間、印象が強いことがあると他の些細なことは忘れる。

城崎と双葉の印象が薄れるぐらい、アイツらを喋らせる暇がないくらい。俺が目立てばいい。


幸い俺は学園唯一の不良で、浮きに浮きまくっている。

ーーー大体のやつの俺の印象は、近寄り難い怖いヤツって感じらしい。

そんな俺がここでイメージチェンジを計れば周りは俺にしか目がいかなくなる。



らしい。これは轟が考えたことだからよくわからねぇが。

「友達がいない甘栗くんにも皆と馴染めるキッカケになる良いチャンスでしょ。」

……そこは本当に、余計なお世話だが。



『ーーおいお前らァ!!!俺の熱いソウルを聴けぇぇぇぇ!!!!!!!』



久しぶりのカラオケ。ずっと行きたかったカラオケ。

俺はカラオケにはうるせぇ。カラオケは楽しんでなんぼだ。



俺が入れた曲はーーー

この歌は誰よりも上手く歌える自信がある曲。

ダチとよく盛り上がった定番曲だ。



今人気絶頂アイドルーーー




『ときめき♡にゃんにゃんハートブレイクうううううう!!!!!!!!』




『にゃんにゃんにゃにゃにゃん♫

ブレイクハートで!!!こ!!ん!!!に!!!ち!!!わ!!!!♫』

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