第7話 轟ちゃんと甘栗くんのクラス交流会①


【俺、明日のクラス交流会参加するわ。】


ーーーそう鳥羽に伝えた。


鳥羽は、本当に嬉しいよ。ありがとう甘栗くん。と

本当に嬉しそうに笑った。

さすがクラス委員長。マジで良い奴なのかもしれない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


時は遡ること昼休みーーーーー



図書室で、城崎がC組とD組のクラス交流会なのに他クラスである双葉を連れてくる話を偶然聞いちまった俺と。



絶賛、屍の轟は………………



城崎と双葉にバレないように図書室を後にしたのだが。



「………自分……毛という毛をもぎ取ったら産まれたての赤ちゃんに、戻るんじゃないかなって思うんすよ。タイムマシンってまだ開発されてないじゃないすか?だから…それの代用で…全身の毛をもぎ取れば…丸刈りになれば…一から人生、やり直せるんじゃないかって……ちょっくら自分、カミソリでも買ってきますわ……。」



轟はショックで完全に頭がおかしくなっちまった。



『…それでやり直せたら髪の毛がないやつは全員赤ちゃんの理屈になんぞ。』



「自分???赤ちゃんなんで???甘栗くんの言ってることぜんぜーーーん!!わかりまちぇーーーん!!!バブバブバブバブ!!!」


………そう言うと轟は、白目を剥きながら自分の親指をちゅぱちゅぱする。



……もはや女である以前にコイツが人間なのかも怪しい。



「明日ぁ!!私はァ!!クラスのみんながいる前でぇ!!こーー公開処刑をおお!!されまーーーちゅ!!!!ばぶーーーーー!!!!!!」



人気がないグラウンド倉庫裏に連れてきて正解だった…。

今のこいつの状態を他人に見られちまったら完全に病院に連れてかれる。



『……もうこうなっちまったら明日行かなくていいんじゃねぇの?』



無理に城崎と双葉がいるクラス交流会に、ましてクラスのやつの目の前で轟とは恋愛感情は全くないなんてーーーー。

城崎に言われるのが確定されているこの状況で行く意味はねぇと俺は思った。



双葉のために正義感ぶってんだがなんだか知らねえが、轟の気持ち。クラスの奴らのことも考えずに行動しようとする城崎と。

轟と絶対思ってもいねぇくせに、仲良くしたいとか抜かしながら。図々しく交流会に参加しようとしている双葉に俺は内心心底ムカついていた。



……轟には申し訳ないがアイツらが付き合うならそれはそれで仕方ない。

だけど他人を巻き込むんじゃねぇよと思う。



「…行きたくないよ。

本当はすっっごい行きたくない。

ただ美月のことを好きでいただけなのに、なんでこんな思いしないといけないのってすごい思う。」


轟は、体育座りしていた自分の膝に顔をうずめる。

その姿はとても小さく見えた。



「こんな嫌な思いしたのに、

まだね、私なんでか美月のこと好きでいるの…。

1回誰かのことを好きになったら、急に相手のことを好きじゃなくなることってできないんだなぁって…。」



脳が心に追いつかないのかなぁと。轟は呟いた。



『…轟。』



こんな時なんて声を掛ければいいのだろうか…。

ーーーー教えてくれ!!!俺の脳内のお袋!!!!


【泣いている女が横にいたら、そっと黙って、抱き寄せてあげんのさ。それが、男ってもんよー…。】


いやこれ俺の親父だ!!!!

出てこいお袋!!!出てこねぇ!!!なんでだよ!!

あーーー!!くそ!!この方法しかねぇのか!!



絶対違う予感しかしないが。俺はそっと、轟の背中に手を伸ばそうとし

「あ、甘栗くん。何とは言わないけどそれは止めてね。」

「そーいうの求めてないから。今。やめてね。」


漆黒の目に包まれ無表情の轟に拒絶された。



『ちげぇよ!!勘違いすんなよ!!』

俺は恥ずかしくてたまらなくなった。

ていうか泣きてぇ。

そういや親父…恋愛経験お袋しかいなかったんだった…。



「私…きっとまだまだ美月のことが好き。

だってずっと好きだったんだもん。例え双葉さんとこの先付き合ったとしても、諦めることできるかわかんない。


ーーーーーーーーーーー。




だけどもだっけどーーーーーーー♫」




轟が立ち上がる。



「今は2人のことが??憎くて、憎くてたまりませぇぇぇん!!!!!!!

しょーーーじき?!!このわたしも?!?!

めーーーーーーっっちゃ腹たっておりますぅ〜??!!!このまま私が泣き寝入りするのは納得いかないんすわぁ〜〜!!!!

どうにかあの二人に痛い目見せられないかと!!思っておりましてぇ!!!意地!!でも!!!明日のクラス交流会には参加しようとおもいまぁぁぁっっっす!!!!」



ーーー出会ってから泣いてばかりの轟だが。


《こいつもしかしてメンタルめちゃくちゃ強いんじゃね?》


と思った俺だった。



「ということで甘栗くん」



「明日の交流会…来るよね?」




お前も当然手伝うよなという、有無を言わせない轟の圧力により。



俺はクラス交流会に参加することになった……。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



クラス交流会当日。




「まっさかー甘栗くんが来るとはねぇ〜。

今日はめーーーーっちゃ楽しもうぜ!!」

ーーうちのクラスのバカ。伏見が俺の肩を組んでくる。



『うるせぇバカ!!くっつくんじゃねぇ!!』

とは言ったものの、こういうノリは久しぶりなので実は嬉しい。



「…で??甘栗くんは誰狙い??」

ボソッと俺に伏見が耳打ちしてくる。


『は?!お前なにいっーー…』


「あれ?違うの?クラス交流会って合コンみたいなもんっしょ!!

他の奴らも結構それ目的だと思うぜぇ〜。」



俺は、ちなみに轟ちゃーん。と伏見は言った。

さすがやっぱモテるな轟。



クラス交流会って合コンみたいなもんなのか??


高校生ってそんな男女が群れると猿山みたいになんのか………。




そしてカラオケに着く。

事前に予約していたらしく、約40人規模の人数がいるカラオケでは、パーティールームというめちゃくちゃでけぇ部屋だった。




すげぇ!!!!!!!


これが都会のカラオケ……!!!



地元のカラオケとは大違いの広さと綺麗さ。

今までは大人数でも、ビチビチに狭い部屋でダチと歌っていたが…。



『これが…カラオケ…!市民館並の広さじゃねぇか…。』



トントンと背中を叩かれる。




「………目的、忘れないでね。」




轟がすれ違いざまに、俺にしか聞こえない声の大きさで話しかけてきた。




『…ああ。わかってんよ。』





座席はくじ引きで、俺は鳥羽と伏見の間の席になった。

なんで女の子の隣じゃないんだよおー!と伏見が嘆いていた。



…そして俺の向かい側のソファには轟が座っていた。




「みんなー!!!青春やってっかぁ〜〜!?

C組、D組、絆を深めるクラス交流会〜!!!

盛り上がって行こうぜ〜!!!まずは手元にあるおしぼりをみなさん全員持って!!

ブンブン振り回すぞ〜〜〜!!!!」


伏見が司会なのかマイクを持って叫ぶ。



「せーーーっっの!!ブンブーーーーー…ン?」



ガチャっと部屋のドアが開く。



「ごめん、遅れて。」



城崎が遅れて来た。



そして、双葉もうしろにいる。




ーーー俺は俺のやるべき事をやる。



しょうがねーから轟のために。






自分の漢気のためにも…!!!


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