第3話 轟ちゃんとカレー②
〈カレー好き?〉
轟 野乃亜のその質問に思わず『好き』と答えちまったために俺はそのまま轟の家に連行された。
東京の女ってこんなホイホイ男を家に入れるもんなんか??
ーーーまてよ俺。
女の家に行くなんて初めてじゃねぇか俺?!
こういうのって普通付き合ったりしてからが男の通りなんじゃねぇのか?!いいのか俺?!
付き合ってもいねぇ、今日初めて話したばかりの轟の家にお邪魔すんなんてダセェ男のすることじゃねぇか!!!
ーーとは頭では思っていたんだが轟の勢いに負けちまった。
「カレー作ったんだけどさァ…一生懸命昨日の夜から煮込んでね…美月カレー好きだから喜ばせたくてさ…。」
「な!の!に!あいつ!!あいつぅぅうわぁぁぁ!!
カレーより!!女とりやがった!!あいつやりやがった!!やりやがったんだよ!!私の作ったカレーよりあの眼鏡外してもパッとしなさそうなブス選びやがったんだよ!!もうあのカレーなんてさぁ!!う○こにしか見えないんだよ!!う○こカレー!!カレー味のう○こ!!!!私のさァ!!ゲロ処理してくれたんだからさァ!!う○この処理くらい今更変わんないよねェ?!?!?!」
学園の正統派美少女で性格も良い設定じゃなかったか?こいつ。
自然に双葉のことをブスって言ったぞ。
確かに轟 野乃亜の幼なじみであり好きなやつ、城崎 美月と一緒に帰った女生徒双葉ー…。
俺にはわかんねぇが、好きな人には好きそうな見た目ではあるが…。
轟 野乃亜のレベルまでいくとその他の女はブスになっちまうのかもしれねぇが。
ーーさすがに双葉も、天を仰いで叫びちらしながら白目を剥いている今の轟、お前にはブスとは言われたくねぇと思うぞ。
有無を言わせない轟の叫びで、悲しいことに俺の初女の家訪問の理由は、う○こ処理となったー…。
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『ごちそうさん。うまかった。』
空になった皿を轟に渡す。
轟にとってはう○こになってしまったカレーだが、前日から煮込んだからか、入っている肉も柔らかく。
お世辞ではなく本当に美味かった。
あれ、これも俺初の女の手料理じゃねぇか。
「それならよかったよ。ーー…もう私これ食べる気しなかったからー…誰かに食べてもらえてウレシイヨ。」
なんで最後カタコトなんだよ。
『ーーそういや家の人は?俺なんか家に入れちまって大丈夫なのか?』
田舎の一軒家とは違う、いかにも都会の感じの縦長のキレイな一軒家だった轟の家。
俺と轟しかいない整頓されたこの空間の中で。
今更ながら轟の親御さんのことが気になった。
「あー、大丈夫。今日みんな帰り遅いみたい。
いつも美月とご飯食べる時も2人のこと多いから大丈夫だよ。」
俺と城崎は違うだろうと思ったがこれ以上確認するのも疲れたからやめた。
「…あのね、甘栗くん。私ね、好きな人がいるの。」
え、なに?急に話ぶっ込んできたなこいつ。
お前の好きなヤツって城崎だろ。知ってんぞ。
さっきから俺が知ってるかのように城崎の話してただろ。
とりあえず俺は知らないフリをして轟の話を聞くことにした。
「小さい頃から家が隣の幼なじみでね、ボソツ…甘栗くん学校で浮いてるし友達いなさそうだから知らないかもだけど。
同じ学校の城崎 美月って人なの。」
こいつ今俺の事ディスったよな喧嘩売ってんのか?
「…美月とは家が隣なのもあって家族ぐるみで仲良くてさ…。美月昔から私もだけどよくモテてて。
美月ってね、一見冷たそうに思われがちなんだけど…本当は口下手なだけで、すごい困っている人を放っておけない優しい人なの。そういうところが私すごく好きで………。
…あ、ほらさっき双葉さんを助けたり…とか…。
こ、困っている人がいたからさっき助けたのかな?
美月は優しいから、あの状況が双葉さんじゃない人でも同じことしてるかもしれないよね…?
そ、そ、そ、そ、そうだよね…???」
轟ーー…お前自分で自分の首絞めたな。
「……ま、まあ??そんな美月に釣り合う女の子でいれるように。勉強も、人当たりの良さも、見た目も、おっぱいも大きく成長させたんだけど…。
美月大きいおっぱい好みじゃないって中学生の時男子と話してるの聞いちゃって…男の子ってみんな大きいおっぱい好きだと思って、美月も好きだと思って大きくしたんだけどね……アハハ。
まぁそんな感じで大変努力したのですよ私は。」
ーーなるほど、それで学園の正統派美少女。
轟 野乃亜ができたってわけね。
……確かに轟のおっぱい…シャツ越しに見ちまったがあれはGカッ………おっぱいの話は知らん。聞かなかったことにする。考えるな。俺。
「…普通漫画とかでさ。幼なじみって小さい頃結婚の約束とかさ…なんかそういう展開よくあるじゃん?
私可愛いし「大きくなったら結婚しようね」とか言わたり、「お前に貰い手なかったら俺が貰ってやるよ!」とかさ…。」
まぁよくある話だよな。俺もさっきまで轟と城崎はそういう関係なんだと思ってたが。
「ーー……私…一度も美月にそういうこと言われたことないの。」
おい、不憫すぎねぇか轟 野乃亜。
「いくら周りに私との関係聞かれても、こんだけ一緒にいると母親と変わらない。母親に恋愛感情抱かねぇだろって…」
轟は俯きだし、握っている拳が震えだす。
「母親はないだろおおおお!!せめて兄妹とか!!兄妹なら?!兄と妹の禁断の愛とかさ!!恋愛に発展する可能性あるじゃん?!?!オカンって!!!マイナーすぎるだろぉ!!!巨乳ゆえの包容力かゴラァァァ乳削ぎ落としたろかァァァァ!!!!」
食卓テーブルをガンガン叩き、おえおえと泣く轟 野乃亜。
ーー俺の初めての女の家訪問、初めての女の手料理。
普通なら甘酸っぱい期待があるはずだろうが…。
『…食卓テーブル叩くのはまずいんじゃねぇか?』
俺は、轟 野乃亜にただただドン引きしすぎてそれしか言葉が出てこなかった。
《ピンポーン》
そんな中鳴るチャイム。
「ヴェっっっ?!?!」
さっきまで泣き叫んでいた轟の顔色が変わるー…
「野乃亜、いる?」
インターホン越しの声は、城崎 美月だった。
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