第2話 轟ちゃんとカレー①

18時ー…


何故か俺は轟 野乃亜の家でカレーを食べている。


「……美味しい?」


向かい合わせに俺と轟 野乃亜は座っている。


『ああ、まあ、美味いな。』


「もーー、こういう時はもっと大きく感想言わないと。食べさせがいがないでしょー。」


何故この状況になったのか。時は遡ること1時間前。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「リーゼント…」


俺は学校のグラウンド倉庫の裏でタバコを吸っていたところ、偶然学園の美少女轟 野乃亜と、その幼なじみ城崎 美月とぽっと出の女双葉との恋愛模様?を見てしまい。城崎と双葉から置いてけぼりになってむせび泣く轟 野乃亜に遭遇してしまったわけだがー…。


「…D組の甘栗くん。だよね?」


「その…見てたの?」


なにをだ?どこからを指しているんだこいつは?

お前が好きなやつに幼なじみムーブをかましていたところからか?それともお前の目の前で城崎と双葉がラブコメしていたところからか?

お前が置き去りにされて泣いてゲロ吐いたところか?


『…とりあえず顔なんとかしろよ。ゲロまみれだぞ。』

『女が人前で吐くなよな。水買ってきてやっからそこにいろよ。』


俺は頭の中の硬派な男らしいセリフを吐いた。


ーーそれが轟には地雷だったらしい。


「吐くよ!!そりゃぁ!!女だってあんなもの見せられたらァ!!吐くよ!!?!わかる?!?人間って精神的ストレスがかかるとね?胃が気持ち悪くなって限界来ると吐くの!!!?!ゲロ吐いちゃうくらい私には精神的に追い詰められたの!!君だって人前で吐いたり漏らしたことあるでしょー?!!私も小学生のとき漏ら」


『わかった。悪かった。俺の言い方が悪かった。』


あやうく聞いたら申し訳ねぇ話まで聞くところだった。


ーーーーーーーー『ほらよ、水。』


「ありがとう…。」

轟は、ペットボトルの水を受け取り蓋をあけてグビグビ飲んだ。と思ったら残った水を頭から被った。


まあゲロまみれだしな。頭から水被らねぇと落ちねぇか。


轟と地面は水浸しになった。

ー俺の退学届も。


水浸しになった地面を見つめた轟は、俺の退学届に気づいたらしく手に取った。

「…これ、甘栗くんの?ごめん私のせいで汚しちゃったみたいで…。なにこれ、んー…退学届?

甘栗くん…退学するの?」


『あー…今日そのつもりだったけど、今更いつ辞めても変わんねぇからいいよ。気にすんな。』


轟は俺の目を見て、触れちゃいけないことだと思ったのかそれ以上は何も聞かなかった。


『制服クリーニング出さないとだよな。

…その格好じゃ家帰れねぇだろ。』


水浸しで少し制服に残ったゲロがついた女子高生なんて、その格好で歩いたら事件に巻き込まれたのかと思われるだろう。

あと普通に今気づいたが。


ーーーめっちゃくちゃブラジャー透けてる!!!

めっちゃくちゃ透けてる!!!

白いシャツの胸元から水色のレースが見える!!

目のやり場がねぇ!!!

お袋以外のを生で初めて見た俺は、視線を轟から避けた。


俺は中に着ていたTシャツを脱いだ。


「っっえ?!甘栗くんまって!いくら私が落ち込んでいる水浸しのいたいけな美少女だからとはいえそんなヤンキーに犯されるエロ漫画みたいな絶好の展開とはいえ私には美月がいるからちょっとダメああ!」


こいついちいちエロ漫画で物事例えてくるよな。


脱いだTシャツを轟に渡した。

『わけわかんねぇこと言ってねぇで、とりあえずこれ着ろよ。』


本当はダチがくれたモノだから人に渡したくはねぇけど。こんな状況だから仕方ねぇ。


「あ、あーーー…Tシャツを貸してくれるってことね。そ、そうだよねー…ありがとう。」


何を想像してたんだこいつは。


轟は俺から視線を外して濡れたシャツの上からTシャツを着た。


「…ねぇ、甘栗くん。」


『なんだよ。』


「カレーって…好き?」


『は?』


ーーーーーーー18時、現在に至る。

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