第7話 ギルド登録と草むしり


………………

…………

……


「んー姉ちゃん、もう一回……」

「起きろ、相棒」

「んー姉ちゃん、もう一回……」

「起きろ! 相棒!」


 スラのんの体当たりが腹に命中したレンは、苦痛の声を上げた。頭を掻きながら寝ぼけ眼でスラのんを見つめると、数秒間の沈黙の後、「おはよう?」と言った。


 朝日はすでに昇りきっていて昼が近づいていた。


「あ、今日はミッドラル王国のギルドに登録するんだったな」

「早く行こうぜ、相棒」


 レンは支度を整えるとスラのんを肩に乗せ、ボロ小屋から出発した。




【ミッドラル王国】


 ミッドラル王国に着いたレンはギルドの受付でギルドへの登録を済ませた。


「こんにちは、私はギルド受付の ミア です。レンさんはギルドランクFですので、Fランクの依頼のみ受付可能です」

「Fランク、Fランク、と」

「Fランクはまあ、ミッドラル王国周辺の草むしりだけですね」

「そ、そうだな」

「報酬は100ゴールドです。早速依頼を受けますか?」

「おう、よろしく」

「分かりました。道具などは有料ですが、使いたい場合はお申し付けください」


 レンは道具を使わずに素手で草をむしることにした。

 依頼場所はミッドラル王国の東門周辺。スラのんも手伝って、草むしりを開始した。


「おー、スラのん、頑張ってっかー?」

「頑張って食べてる」

「草って上手いの?」

「美味しくはないよ」

「あれ、そう言や、取った草はギルド受付に持ってくんじゃね?」

「そうだね」

「いや、そうだねじゃなくて、」

「でももう食べちゃったよ」

「ま、まあ、食べた分は仕方ない。スラのん、ちみは草むしりしなくて良い。俺に任せろ」

「いや、でも」

「しゃーないから、俺の肩に乗ってろ」


 レンはスラのんを肩に乗せ、ひたすらに草をむしっていく。

 すると、


「痛っ!」


 地面から声が聞こえた。レンが再びひっぱると、


「痛っっ!!」


 また地面から声が聞こえた。


「ちょっと、兄ちゃん、俺っちの頭を引っ張らないでくれよ」

「お、なんだなんだ?」


 ぽーん!

 地面からグリーンスライムが姿を現した。


「兄ちゃんに言ってるんだよ。せっかくの日光浴が台無しだよ」

「おお、すまん」

「じゃあな、もう二度と俺っちの頭を引っ張るなよ」


 グリーンスライムが土に潜る。頭の葉っぱがゆらゆらと可愛い。

 レンは「よし」と言いながら、もう一度グリーンスライムの頭を引っ張った。


「なにが「よし」だよ! あんな~俺っちは今、日光浴してんだよ。邪魔すんなよ~」

「よし! 臨時報酬だ」

「ちょっと待てよ兄ちゃん、俺っちをギルド受付に差し出そうってのかい? 後悔するぜ?」

「しかしだな」

「じゃあこれやるから見逃せ」

「何?」


【レンはグリーンスライムから 花のタネ を受け取った】


「食えんのこれ?」

「観賞用だな」

「まあいい。マジックポーチに収納しよう」

「じゃあな」


 グリーンスライムはレンの三度目の正直を回避すべく、その場を去っていった。

 そして、グリーンスライム以外の草をむしり終えるとレンはギルド受付へと向かった。



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