第10話 僕

 レイと過ごす時間はとても楽しかった。僕はレイの仕草の一つ一つに、目が離せなかった。

 僕は多分、レイに恋をしている。

 最初はこの感情がよくわからなかったが、レイに会うたび、恋をしているのだと思うようになった。

 レイに会うと、鼓動が早まり、頬がなぜかとても熱くなるからだ。

 僕は、レイが好きなのだ。


 そんなある日のことだった。


「カトウ、良かったらこれもらって」


 レイが差し出してきたのは、白い貝殻のペンダントだった。


「もらっていいの?」


 僕が聞くと、レイは小さく頷いた。


「この貝を開けると、願いが一つだけ叶うんですって。お守りみたいなものよ」


「へえ」


 僕はありがたく受け取ることにした。貝は白く輝いていて綺麗だったし、何よりレイからの贈り物ということが、とても嬉しかった。


「願いが叶う、か」


 僕は家に帰った後、レイからもらった貝殻のペンダントを見ながら考えた。

 僕が願うとしたら、なんだろう。成績アップ? 志望校への合格? 運動神経が良くなる?

 いや、僕は。レイと両思いになりたい。だが、僕は人間だ。レイはきっと、人間の僕には振り向いてくれないだろう。

 そこでふと、人魚姫の話を思い出した。人間に恋した人魚は、人間になりたいと願うのだ。

 なら、願うことはただ一つ。


 僕は、人魚になりたい。

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