第7話 私
彼、いえ、カトウはとても面白い人でした。私とカトウは相性が良かったようです。話は途切れることなく、日が暮れるまで続きました。
カトウと話す時間は楽しくて楽しくて。私は時間を忘れて話し続けました。
「わあ、もうこんな時間! 僕、帰らなきゃ」
カトウは「すまほ」という平べったい光る物体を見て、焦った声を上げました。
残念ながらお別れの時間のようです。
「そっか、じゃあまたね」
「あ、うん。また」
私はカトウは別れると、海に潜りました。家まで帰る途中、私の頭の中はカトウでいっぱいでした。
カトウにまたすぐに会いたい。
私はカトウに、完全に恋をしてしまったようでした。
その後も、私は毎日のようにカトウに会いに行きました。カトウは最初の頃と違い、いつも一人で岩場にやってきました。カトウと二人きりになれるので、私には好都合でした。
「ねえカトウ、人間の街ってどんな感じなの?」
「都会は背の高い建物ばかりさ。人がたくさんいる。車という乗り物もあるよ。僕は逆に、人魚の国に行ってみたい」
人魚の国にカトウを連れて行けたら、どんなに良いでしょう。喜んで案内するのに。残念ながら、カトウは人間でした。
「人魚の国は、とても穏やかよ。皆、優しいし、面白いの」
「素敵な国なんだね」
カトウは少し微笑みました。私はそんなカトウに釘付けになります。私の大好きな、カトウの笑顔です。
「いつか、案内したいわ」
私は胸元の貝殻のペンダントをぎゅっと握りました。
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