第2話 生まれ変わったらしい

どうやら自分は生まれ変わったらしい。

そのことをはっきり意識したのは6歳になった頃だ。それまでは主観的に物事を見ながらも、頭の中で見たこともないような映像を観ているような、例えるならば作業をしながらも頭の中で映画のワンシーンをはっきりイメージする。


そんな漠然としたものだったが、6歳になる頃にははっきりと全ての記憶が蘇ってきた。自分は前世の、しかも別の世界の記憶を持ちながら、この世界へと産まれてきたのだと。


チベットの高僧が輪廻転生したときもこのような体験をするのだろうか?尤も彼らは同じ世界で、こちらは別の世界への輪廻転生なのだから比較なと出来ようはずもないのだか。


私が産まれたのは18世紀後半から19世紀前半の頃のヨーロッパのような雰囲気を持つリザート帝国という群雄割拠が立ち並ぶ大陸の中でもかなりの大国だ。


これは両親から教えてもらったのだか、この世界には魔法というものが実在しており、他国では魔法使いというのが多く存在しているようだが、私の国ではほとんどの人が使えない。しかし、魔法を使える者が優遇されているわけでもない。


魔法が使えない代わりとして、所謂科学である魔工というものが発展している。その魔工技術が魔法より開発が早く、それが軍備の充実や生活の質を高くしているため、この国では魔法は時代遅れの扱いなのだ。

その魔工という技術も人が作ったものではなく、ゴブリン族という深緑のような肌を持つ民族の技術らしい。 


ゴブリン族以外にも赤鬼のような大柄の体格で男性しか存在しないオーク族。耳の長いエルフのような外見を持つエルヴィス族など多種多様な民族がこの国で生活している。


この国の特徴として教育が普及していることだろう。文字の読み書きや簡単な計算を平民は寺子屋のような所で学び、貴族は両親から学ぶ。

そして貴族の子供は8歳から13歳まで全寮制の幼年学校、その後14歳から18歳まで高校と大学を合わせた高等学校に入ることを義務付けされているらしい。これは他国にはないシステムだそうだ。


多民族国家なら争いの種になりやすい宗教もかなり緩くそれぞれの宗教やそれらを混ぜてできたような宗教もある。

そのため一神教を信仰する他国の人達から見れば邪教徒の集まりにも見えるようだ。


このような世界に前世の記憶を持つ稀有な存在として生まれてしまったが、生まれ落ちてきたのだから仕方が無い。


前は典型的なアジア人の顔をしていた自分の顔は欧米系とアジア系のハーフかクォーターのようになり、髪、目の色は黒から茶色へとなっていた。


身分は平民ではなく男爵位を持つ貴族。

貴族と言いつつも、その生活水準は平民とさほど変わらないほどの貧乏貴族なのだ。従士はいることはいるが、そこに身分の差はあってないようなものだ。

そう言えども貴族であることには変わりはない。


治める領地、ヴォーダン領の約6割がヴォーダンの森という富士の樹海のような鬱蒼としげる森がある領地。

こんな場所を発展させていくことは容易なことではないが、貴族として生まれた以上はやっていくしかない。


文化レベルもそれ相応のレベルはありそうだ。これなら前世の、前世で身に着けた経験や知識はこういった所でも大いに役に立つだろう。

やりたいことは山程あるが地道にやっていけば形にはなるだろう。



小田重蔵改め。ジュドー・ヴォーダン。

俺はこの世界で生きていく。



「まあ…異世界というより、昔に戻ったという感じなんだがな…」


今の生活レベルも前の自分が生まれ育った昭和初期の頃の田舎を思い出すような、その頃より少し不便な生活レベル。

比べたら確かに不便ではあるが、昔もこんな生活だったよなと思えばなんてことはない。

必要ならば知識を活かして作っていけば良いだけ

だ。


新しい世界。新しい人生。楽しまなければ勿体ない!


「とは言え…できることなんか限られているしな…」

所詮、一人でやれる影響力などたかがしれているし、下手に前の知識を活かして文明のレベルを大幅に進めるような行為はリスクが大きすぎる。

下手なことはせず、この時代にあったこととすれば。


ここでジュドーの頭の中を走る天啓!

圧倒的閃き!


そうだ!

今なら出来る!

俺なら出来る!



「領地を発展させて!俺はハーレムを作る!」



前世では法律上出来なかったが、今ならなんのお咎めもない。貴族は一夫一妻よりも一夫多妻を推奨されている。

自分の父親も妻が二人いる。それが姉妹ということに若干の抵抗感があることはあるが…それでも問題があるわけでもない。

前世では仮に法律上出来たとしても前世の妻が怖くてできなかったが、今ならできる!


「よ〜し!ヤッてやるぜ!!」


俺は拳を強く握りしめ天に高く掲げた。











同時刻。某所。


イラッ


「お嬢様?如何されましたか?」

「…いえ、なんでもありませんわ」

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