第10話 人間の(放っておいてもその内、勝手に終わりそうな)王
人間側の王国で、最高権力者たる者が
謁見の間には、国の大臣や近衛兵らが多く集まり、左右に控えていた。
赤いカーペットの
果たしてその王が座したまま、
「ええい、魔王討伐の任を果たせぬまま、おめおめと逃げ帰るとは……魔王を滅ぼすまで、王国の地を踏むことは許さぬと言ったはずだが、忘れたようだな! ……しかも勇者本人が謁見の間に訪れぬとは、どういう
「えっ」
「「えっ」」
王の思いがけぬ言葉に、勇者ユリシアが思わず伏せていた顔を上げ、傍に控える近衛兵も
が、そんな反応に気付くこともなく、王は得意顔で続ける。
「ふふん、大方、罰を受けるのを恐れ、雇った者でも送りつけてきたのだろうが……そのような
「……お、王よ、自分は近衛兵ですが、失礼します! 勇者はそこに――」
「ムムッ!
「どうすりゃイイんスか一体!」
(何したいんだろ、この王様……)
陽の高いうちから酔っ払っているのだろうか、近衛兵を
「あ、あの、勇者は、目の前におります。あの、控えている……可憐で愛らしく円らな瞳が特徴的な少女が……勇者殿です」
「
「クッソ腹立つな
「ええい愚か者! 王族のような高貴なる者は多忙なのだ、いちいちそのようなもの読んでいられるか! というか何だ、それではまるでワシが、男か女かの見分けも付けられんような節穴の目だとでもいうようでもないか!」
「はあ、まあ……そういうことに、なっちゃいますね……」
「ふんっ、なるほどな~! やれやれ、全く……勇者が女だとぉ? どらどら、どんな顔をしておるやら……ふんふん、ふぅん? ほぉ~~~ん……?」
玉座から身を乗り出し、前のめりになって、女勇者ユリシアを凝視すると。
王の口から、漏れ出た言葉は。
「……えっ、
「王?」
「おっと、ゴホン。……ふう、さて」
一つ咳払いし、王は――にっこり、穏やかな笑みを浮かべつつ言う。
「よくぞ帰ってきた、
(……以前の態度と違い過ぎて、心の底から気持ち悪い……)
王たる者の高貴なる笑顔は、ニタニタと粘着質で目つきは湿っており。
―――だが、さすが心がお広いのだろうか、まさかこの場に〝人ならざる者〟が(まさか三人も)紛れ込んでいるとは、夢にも思っていないらしく。
……さて、メイド姿の美女と、兜を外しもしない重装騎士は、ちょっとした異変に気付いており。
「……さて、あの残念な
「……あ、主、我らが主よ、どうか落ち着いてくだされ……」
冷静なメイドと、震え声の重装騎士の、視線の先には。
勇者ユリシアへの悪態、からの不快な湿度の色目、それを放っている王へ。
「……フ、フフ、フ、フ、フ……フフフフフフ」
尋常ならざる威圧感と魔力と共に、
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