第8話 女勇者ユリシアの帰還
広い平地のど真ん中に、威風を
かつてそこを通って魔王討伐に赴いた女勇者ユリシアが、今度は帰還してくるとのことだが、民の反応はといえば。
『聞いたか? 例の〝裏切り者の勇者の娘〟が、もう帰ってくるらしいぜ』
『魔王が討伐されたって噂も無けりゃ、四天王〝豪炎の魔将〟も健在だって話だし、結局なにも出来なかったんだろうな』
『ケッ、何しに行ったんだか……顔を見たら、大いに笑ってやろうぜ』
『……にしても、帰ってくんの早すぎないか? 途中の街や砦で見かけたって話も、全く聞かなかったし……国境を越えて魔族の地に行った、ってのは確認されてたはずなのに。そもそも、帰還の話とかって、どっから伝わってきたんだ?』
『さあ? なんか街の衛兵が騒ぎ立ててたし、急に空から大量のチラシがバラまかれたって噂もあるけど……詳しい話なんて知らねーよ』
『オオ勇者、何をも成せず敗北者、魔王を倒せず責をも果たせず逃げ帰る、勇者は勇者は敗北者……♪』
何やら
街の外側の方から、
『! オイ、勇者が帰ってきたってよ!』
『ったく、どのツラ下げて……ん? え、あれ……どのツラが勇者だ?』
『えっ、どれって、アレ、あの………は、あ………あえ?』
『『『――――――――――』』』
煩雑に騒ぎ立てていた、民衆たちが。
外側から、順次、静まり返っていく。
おめおめと帰還した女勇者を、
金色の瞳を陽光に反射させて輝かせる、ドレスと鎧を融合させてなお、
「……………………」
『……………ハッ!? ふう、やべえやべえ、気絶して白昼夢でも見てたぜ、疲れてんのかな……ってヒェェェェッ夢じゃねぇぇぇぇぇ!?』
『あ、あああ、アレが勇者……? しゅ、出発ン時は男か女か分かんねぇような、みすぼらしい格好だったのに……べっ別人じゃねえか!』
『フッ、可憐だな……スンマセン、漏らしました。あまりの可憐さに驚きすぎて。そんなおれをどうか許してほしい、これもきっと思い出になるから……フッ』
『オオ勇者♪ その眼差しは闇を裂く陽光、流れる髪は夜空を
『オイそこの歌ってるヤツ引きずり降ろせ! さすがに調子良すぎんだろ腹立つわ! 全員でボコれボコれェ!!』
ある者は
それも当然だろう、今の勇者ユリシアは、旅立った時の姿とは全くの別人。
手入れもされず伸びっぱなしだった前髪は、軽めに切りそろえられ、潤いに満ちて傷んだ様子も一切ない。
金色の愛らしく
小柄ではあるものの、無駄のない肉付きの四肢はスラリと伸びて。
細やかな
一目で
(……うわ、うわ、うーーーわーーー! なんか人も多いし、変に注目されてるし!? 魔王の魔法で飛んできたのが数時間前なのに、何で帰還が知られてるの!? うう、嫌われ者の私がこんな格好して、どう思われてるのか……)
『! う、うへへへ……ど、どもッス……』
(うわあ目が合った人から気持ち悪い感じで笑われた! や、やっぱり似合ってないんだ……ていうか皆に、変な感じで笑われてる気がするしっ……)
その自己評価の低さは問題だが――さて、注目を集める原因は、ユリシアだけでなく。
彼女の右後ろを、付いて離れずの距離で歩く存在にもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます