第4話 ツッコミ・ジ・エンド――魔王の恐るべき嫉妬が襲う相手は――!?
パーティー会場(※恐るべき魔王の玉座の間)に踏み込んだ全身鎧の騎士が、
「四天王たる地獣王より魔王様に、
『勇者ユリシアを幸せにしたい一択』
「魔王の言葉じゃないでしょーが選択肢を幅広く持ってくださいよ、トップならさあ! ええい本当、部下の話を聞かないし、話が通じないし……ですが、それも今日まで! 今すぐ忌まわしき勇者を
『長いな、土属性っぽいしツッチーでいい?』
「聞けよ!! クソが!!!」
ついつい感情のままに
……ツッチーに、メイドのサラが無造作に声をかける。
「アース、ウ、えーと……ツッチー様、魔王様に対して
「いやツッチーと呼んでんじゃねーわ! というかメイド
「はい、まあ」
「ハイマーではないわハイマーでは! 貴様、同格の同僚がメイドなんぞやっているのを見るコッチの気持ち考えたことあるか!? 四天王だぞ我ら、国でも序列上位の由緒正しい血筋だし、人間で言えば公爵とか伯爵とかだぞ!?」
「そうは言いますが、職に
「そういうこと言ってんじゃないんだよコッチは! そもそも四天王の能力や裁量でやる仕事じゃないだろが!」
「はあ、そうでしょうか」
「気が無いな返事に! 少しでもいいから興味を持てよ我の言葉に! 全員に言ってんだぞ、この場の全員に! ええい、このっ……!」
重装に包まれた握り拳にギリギリと力を
「とにかく! 魔王が勇者と
「……そうだよ、その通りだっ……」
「おお、我に同調してくれる者が! 何だコレすごい嬉しい! ……って、ん? あれ、貴様は……勇者?」
「そうだっ――この人(魔族)の言う通りじゃないかっ! 私、何してたんだろ……勇者として、魔王と戦わなくちゃ! えーと……ツッチーさん、ありがとう!」
「ツッチーじゃねーわ! くっ、まさか敵である勇者に
「はっ……し、しまった! 油断したっ……きゃあっ――!?」
敵地のど真ん中で元気一杯に油断していたユリシアに、魔王の配下――取り分け最高戦力と知られる四天王の一人が襲い掛かる――!
無防備なユリシアに、抵抗の暇はなく……されど、そんな彼女を救ったのは――!
『やめんか
「ガルルゥ―――えっ? ……ぎゃ、ぎゃわーーーーんっ!? えっ、ウソ……今、魔王四天王が魔王に蹴られて……えっそんな話ある!?」
重装鎧に包まれた巨体を、軽々と蹴飛ばして。
魔王配下の四天王から勇者を救ったのは魔王で――アレっ?
……とにかく、横倒しにされた身を起こしたツッチーが、魔王の
「な、何をなさるっ……ご乱心なされたか、魔王様――!」
『あ゛? 貴様こそ何をしようとした、俺は魔族全体に
「ひっ……わ、我は、そんな……魔王様と、魔族の未来を思って……」
『―――――消すぞ』
「……ひっ、ひいいっ……」
大きな図体ですっかり
「――何してるんだっ! 敵の私ならともかく、ツッチーはおまえの部下なんだろ! 仲間に乱暴するなんて、それが魔王のやることか! やることかもなぁってちょっと思ったけど……勇者として見過ごせない! やめろ、魔王――」
『わかった、キミが言うならやめる』
「判断が早い! 魔力も威圧感も一瞬で治まったし、私なんかの何がおまえをそうさせるんだ!?」
戸惑うユリシアの、小さな背中に――庇われていたツッチーの口から
「……
「いや勇者だけど。あ、ツッチー、大丈夫か? 怪我とかない?」
「……己を襲おうとした敵を、案ずるとは……そうか、これが勇者の度量……なるほど、我が
「えっ? ……―――!!?」
軽く身を起こしたツッチーが、そのまま低い姿勢で
一言で表すなら、狼男――ツッチーが、少々
「フッ……人間から見れば、恐ろしい異形と映るやもしれませぬが……これも由緒正しき上位魔族の騎士としての礼儀。
「わ~~~モフモフ~~~♡」
「人ってそんな感じなんです? もしくはそれも勇者の度量?」
「さ、触ってもいいかな……? 犬とか猫とか、好きなんだ……でも生活に余裕がないから、一緒に暮らしたりはできなくて……」
「犬じゃないですし、狼というか、魔狼なんですが。……やめなされ、やめなされ……顔の横をモフモフするのは、やめなされ……
既に屈して〝ワン〟とでも鳴きそうなツッチーだが、その時、気付いた――己が置かれている窮地に、魔王からの尋常ならざる威圧感に。
「ん? ……――!? ヒッ……あ、あの、魔王様……?」
『…………ニッコリ』
「いや闇で笑顔とか見えませんし!? ナニコレ、上司からの威圧感、っていうか殺意の波動が
「わ~、なんか鼻が湿ってる~。ワンちゃんっぽい~♡」
『ゴゴゴゴゴゴ……』
「わ、ワォーーーン!?」
嫉妬する魔王、冷や汗をかく勢いのツッチー、モフモフを堪能する勇者――三者三様、今まさに、玉座の間にて激闘が繰り広げられている――……。
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