第3話 女勇者に相応しい衣装とは、果たして――?
「っ……く、ううっ……こんな、こんなこと……信じられない、なんて……なんて非道な仕打ちなんだっ……!」
手にお皿と、取り分けてもらった料理を持って。
「こんな、こんなっ……おいしい料理、生まれて初めてだっ……お肉が柔らかくて、舌の上でとろけてほぐれるなんてっ……こんな魔法のような現象が、この世に存在するのかっ……たったの一食で、
『クックック、勇者よ、どうやら
「っ、見くびるなよ、魔王! 私は十年前に両親を失って以降、
『そうか。……そうか……まだまだ料理はあるから、たんとお食べ……』
「ふ、ふんっ、別に魔王に
『シェェェェェフッ!! どんどん作って持ってこォォォいッ! ジャンジャン作ッチャッテー! ジャンジャン食ベサセタゲテー!!』
「もぐもぐ。……あっ、忘れるところだった。コホン……お料理、ありがとうございます。とてもおいしいです。……か、勘違いするなっ、恩を受けたらちゃんとお礼を言わないとって、お母さんからの教えで……それだけなんだからっ!」
『クッ、クッ……クウウッ……礼儀正しい、イイ子すぎるぅ……もはや一体何を勘違いしてはいけないのかも分からぬが、何にせよ幸せになってほしい……』
魔王の顔を
まあそれはそれ、と食事を続ける勇者ユリシアに、メイドの中から一人が声をかけた。
「………勇者様、少しよろしいでしょうか?」
「もぐ? あっはい、何ですか?」
敵対する魔族に
並みいる魔族のメイドたちの中でも、特に
「お食事の最中、失礼ですが……長旅を越えた旅装のままでは、落ち着かないのでは? よろしければ、お着替えをご用意しましょうか?」
「えっ……い、いえ、そんなの悪いです。それにこんなボロでも、動きやすいのは動きやすいですし、戦いには
その戦いに適した格好で争う相手は、彼女たちの主である魔王では、と思うが。
とはいえメイドの美女が言う通り、今のユリシアの出で立ちは、豪勢なパーティー会場(※恐るべき魔王の玉座の間)において、少々
旅装だから、という以上に、そもそもが安物の布地を
クリーム色の長髪も伸びっぱなしで、前髪はほとんど両目にかかっていた。
そもそも
「そ、それに、私は戦いにのみ生きる勇者だっ。衣服なんて、これだけで充分っ。余分に着飾るなんて、私には必要ない――」
『ふむ、着替えか……クックック、面白い! まあ勇者の気が進まぬなら、
「えっ、ドレスっ!?」
『ククク?』
「あっ。……いや、その……」
何だか
「ば、ばかにするなっ……私はそんな、ドレスになんてっ、興味ないぃっ……そんな、フリフリした可愛いフリルとか、ふわふわしたファーみたいのとか、フワッとしたスカートとかぁ……そ、そんなの、戦いにくそうだしぃ……ぜんっぜん、これっぽっちもぉ……興味、ないんだからぁっ……!」
『何やら具体性に
闇の渦巻く顔、名付けて闇顔(なんだそれ)に片手を添え、考え込んだ魔王が――改めて口にしたのは。
『クックック、勇者ともあろう者が、片腹痛いわ! 用意したドレスは貴様……貴様っていうのヤダな、やめよ。とにかくキミ専用に
「っ、な、なんだとぉっ……見くびるな、魔王! 勇者として、私は救ってみせる! それが魔王の用意したドレスだろうと……あれ、ドレス? いい、のかな? うーん……まあでも、救えるなら、まあ……?」
『うんうん、よかったよかった。ちょっとコツを心得てきたぞ、よしよし……』
何だか
「それでは勇者様、ついでなので旅の疲れも洗い流すべく、
「あっいえ、宝石とか高価なのって本当に苦手で、落ち着きませんし……好み、っていうなら、モフモフした感じのとかが……あっ、というかその、聞くの遅れちゃってごめんなさい……お姉さんのことは、何て呼べば?」
「お姉さん。……何やら胸がホッコリしますね……おっと、わたくしは水の、えーと……サラ、とでもお呼びくださいませ。ではお手伝いしますので、コチラへ――」
サラと名乗ったメイドに招かれ、ドギマギして付いていこうとする女勇者と、ワクワクとした魔力(?)を放出して待つ魔王……と、その時。
ドン、ドン、と地鳴りのような重い足音が響き、何かが接近してきて――
「―――ええい、何をしておられる魔王様! 愚かしい人間共の刺客、その筆頭である勇者を魔王自ら歓待するなど、正気の
『何だうるさいな。ツッコミでも来たのか』
「何を訳の分からぬことを言っておられる!? ええい、ご自身の立場を理解しておられぬのか、アナタは――!?」
一体何が訪れたのか、全く全然これっぽっちも見当はつかない、〝ツ〟から始まる役割なのかも定かではないが――
いかにも重厚な金属質の鎧を身に纏った、魔族の騎士は何を
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