第5話 A組とイケメン転校生
「HR《ホームルーム》始めるから席につきなさーい」
教室に入ってきた先生の言葉を聞いた生徒は全員席に着き、当然、異変にも気づいたようだ。
「ねぇ、あの男の子だれ?」
「結構イケメンじゃない?ウチ、狙っちゃおうかなー」
そんな会話があちこちから聞こえてくる。
確かにあいつはルックスは悪くはないんだけど…。
「えー、みんなが察している通り、彼は転校生です。学園のアイドルと仲良さげに職員室まで来た男ですが、男子は嫉妬しないように。以上」
先生は軽く流すように学園のアイドルとの話をするが、当然クラスの者はそれを聞き逃さなかった。もちろん、私もだ。
まったく、あいつはどこまで女好きなんだ…。
「自己紹介しなさい」
自己紹介をするように促された彼は、一歩前に出て口を開けた。
「今日からこの学校に通うことになった久城楓です。よろしくお願いします」
軽い自己紹介を終えた久城楓に歓声と拍手が上がる。多分、あいつの性格を知っていたらこんなことにはならないと思うけど…。
「久城くん、きみの席は橘の隣だ」
「分かりました」
『久城くんは彼女いるのー?』なんていう質問攻めを受けながら、彼は私の隣の席に向かってくる。変な問題を起こさなければいいんだけれど…。
「まさか、隣の席になるとは思わなかったなー。ね、幽香ちゃん」
「…えっ」
転校生でイケメンだというイメージしかない王子様的な存在になりつつある彼に、下の名前で呼ばれた私をクラスの女子が一斉に睨んできた。
「どうしたの?幽香ちゃん」
はぁ、このバカ。めんどくさい…。
「人違いじゃないですか?私はあなたのような人知りません」
「えぇ⁉︎ひどい!朝だって一緒に登校してきたじゃないか!」
より一層、周囲の者からの視線が痛くなった。ダメだ…これ以上やっても、墓穴を掘るだけだ…。慌てて私は久城の耳を引っ張り、彼にしか聞こえない程の小声で言う。
「私たち二人の関係は周りの人にバレちゃダメなのよ」
「分かったけど、その…さきからずっと胸が当たってる…」
「えっ?」
下を向くと、久城の言う通り、私の胸に彼の肩が埋まっていた。一気に顔が熱くなったが、ここで騒いではいけないと、なんとか感情を抑えた。
「とにかく、あまり学校で目立った行動をしないようにすること!分かったわね?」
「今の時点で、俺たち目立ってるっぽいけどね〜」
アンタのせいよ!はぁ、先が思いやられる。まさか転校生一人でこんなに大変だなんて…。
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