第4話 声の人から連絡来たけど?
もうすぐ成人を控えて、孤児院のみんなも身の振り方を決めるため、各職業のギルドを回ったりして落ち着かない日々を送っていた時、突然それは訪れた。
『タロくんお待たせ!神様からのお願いを伝えにきました!お手伝いの内容をお知らせするよ~』
「うおっ、びっくりした。神様のお使いすか? え、まじすか? あれ現実だったんだ」
ベッドに入って寝たはずなのに、俺は気付けば白い部屋の椅子に座っていた。周りを見渡すが、声の主の姿は見えない。あ、夢の中か、と漠然と思った。
『そろそろ勇者の物語が始まるからね。君のお手伝いも始めてもらわないといけないからね~。タロ君には、勇者君の背中を押す役をしてもらいたいのよね。勇者君が、真の勇者として覚醒するためのきっかけになってもらいたいのよ~』
「……はあ。勇者とか、なんかゲームみたいっすね。そんで、なにをすりゃいいんすか?」
『うん、まあ神様が作った脚本どおりに進めるって意味じゃゲームと同じかもね。その、脚本どおりにってのが難しいんだけどね~案外上手くいかないもんでさ、もう何度も失敗してやり直ししてんの。タロ君ならきっとやってくれると信じているよ!』
俺をおだてながら声の人はお手伝いの詳細を話してくれたが、その内容がとんでもないものだった。
神様が作ったこの世界は、勇者が魔王討伐に向かうという、まさにゲームの基本設定みたいな脚本だが、勇者となった者が、真の力に目覚めるきっかけとなるのが、親友の死なのだという。
この世界の勇者は、突然『勇者』に指名され、魔物と命のやりとりをしなくてはならなくなったことに、心のどこかで蟠りを持っていて、勇者は本当の力を発揮できずにいた。
だが、親友が勇者の危機に身を挺してかばい、死んでしまったことをきっかけに、勇者は己の使命に目覚め、魔王の討伐を成し遂げ世界平和をもたらす……というお話を、神様はこの世界の脚本として作ったらしい。
声の人は、脚本通りに進めるための舞台監督みたいな役目だそう。
『で……タロ君は、その『勇者をかばって死ぬ親友』ポジなんだ』
「いやですけど!?」
まさかの死亡キャラ設定の人にされていた。死ぬ前提の役目なんていやに決まっている。一番大事なとこを隠して役目を引き受けさせるなんて、悪質な詐欺でしかない。
「俺って死ぬためにこの世界に連れてこられたんっすか?」
『まあ、端的に言うとそう。この役目がひっじょーに重要なのになかなかなり手が見つからなくてねえ。たまに引き受けてくれた人がいても、やっぱり途中で逃げ出したり設定どおりに動いてくれなくて、何度も失敗してるの。このイベントをこなさないと勇者が真の力に目覚めないし、一番大切な役目なんだ。よろしくね』
「いやいやいや、無理っすよ。俺ビビりだし、たぶんできないんで他の人に頼んでください」
『いやいやいや、こっちこそもう無理だよ。だってタロ君もう勇者の親友ポジについているし、今更他の人に代われないんだって。親友が勇者の重圧に苦しむってわかっているのに、タロ君は彼を捨てて逃げ出すの?』
ん? もう親友ポジについてる? 俺の親友って、一人しかいないけど……え、嘘だろ……。
「あの……その勇者って、もしかして」
「うん、君の親友の、レオンハルト君だよ」
……まじかー。
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