第5話

眩しい、視界がぐにゃぐにゃになっていく。


気がつくと僕は、学ランを着て学校の前に倒れていた。


「おい、お前大丈夫か」


声の低い男の人が声をかけてくる、身長は僕より高く縁の無い眼鏡をかけて、僕に手を差し伸べている。片手には『雷桜』という小説を持っていた。


「あ、ありがとう。所でここはどこですか?」

「僕と同じ学校の制服着てるから同じ学校なんじゃないの」

「なるほど」


僕は困惑していたので少々たどたどしい返事になってしまった。


彼の名札には外山と書いてあった。


「外山……僕の名前だ」

「僕の名前は外山だが、君は外山じゃない。頭をぶつけて混同しているんじゃないか?保健室まで連れていこう」


外山と名札に書かれた彼は細い体で僕をひょいとおんぶすると、校門を通り抜ける。


どこか街が古い感じがする、それに外山という彼の名前。まだ確信は持てないが僕は、本を介して過去に来てしまったのかもしれない。


周りの視線が痛い、女の子たちが僕を見てくすくす笑っていたりする。


「外山さんは恥ずかしくないんですか」

「恥ずかしくなんかないさ」


僕は恥ずかしさでいっぱいなのに。

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あの夏に追われて。 ちキ @09039921018

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