第8話買い物と夜ご飯

「そういえば渚」

「はい」

「まだバッシュ買ってないね?」

「ばっしゅ?」


私はその言葉の意味がわからませんでした。

何の略語でしょうか

「いやいや、昨日言ってたじゃん」

「…すいません、昨日の記憶がほとんど無いんです」

「そっか、じゃあ、今から買いに行こう」

「わかりました」

「ちなみに、今何円ぐらい持ってる?」

「えっと、約2万円ぐらいです」

「…もしかして、どれは全財産?」


どうしよう

ここは正直に全財産ですって言ったほうがいいのかな、でも、その程度の財力しか無いとか思われないかな……蒼麻君はそう思わないはずです

私は蒼麻君がお金で決める人じゃないと信じて首を縦にふりました。


「はい」


大丈夫かな

何も思われないかな


「じゃあさ、今日の夜ご飯おれの好きなものにしてくれない」

「いいですけど、なんでですか」

「バッシュって安くても1万ぐらいは絶対にあるんだ、だから、ここでお金消費したらもう少しで5月になるけど、苦しくなるでしょ」

「…では、今日は蒼麻君の好きなものを出しますので、お願いします」

「いいよ、お金はたくさんあるから」


…どんなバイトしてるんだろう、そんなことより、私もバイトか何か始めようかな


蒼麻君に連れて行かれ同じ階にあるスポーツ用品店にきました。


「蒼麻君はいつもここでばっしゅ?ていうのを買ってるんですか」

「そうだね」

「今更感がありますが、バッシュってなんの略ですか?」

「バスケットボールシューズの略だね」

「そのまんまでしたね」

「それに気付けてないけどな」

「確かに」

「ここがバッシュのフロアだね」

「…豪華なバッシュもありますね」

「そっちは高すぎるから渚はこっちから選んで」


蒼麻君が指した方を見ると私でも知っているレベルで有名な会社から出ているバッシュがたくさんありました。


「で、いまからバッシュの試着するんだけど、バスケの靴下を履かないといけないんだ、だから、これ履いて」


バスケの靴下とかあるんだ、普通の靴下と何が違うんだろう

私はそんな疑問を持ちながら指示に従った


「なんか気に入ったのある?」

「えっと…あれでお願いします」


私は白がメインでアクセントとして水色があるバッシュを選びました。


「だと思ったよ」

「自分に似合う色はこの組み合わせだと思いますから」

「じゃあ次はサイズだけど、魔法高専に行く時の靴は何センチ?」

「20.5です」

「じゃあ21.5にするか」

「なんでプラス1センチするんですか?」


成長する可能性はまだあるけど足はそんなに大きくならないと思うけど


「どうせ、身長150無いでしょ」


その言葉に少し怒りが芽生えましたが黙っておきましょう


「ギリですけどね」

「じゃあ何センチ」

「149.7ですけど」

「…どんまい」

「私の心に傷をつけないでください」

「…でまあ、バッシュとかの日常で履く靴は今の足のサイズから0.5とか1とかプラスにしたほうがいいんだよ」

「そうなんですか、じゃあ早く探しましょう」

「……あったよ」


私は蒼麻君から箱をもらい開けてみた


「おー、これが私のバッシュですか」

「うん、履いてみて」


足を通した瞬間、柔らかい素材がしっかりとフィットしたように感じました。

普段履く靴とは違って、軽さとクッション性の良さに驚きました。


「どう?」

「…自分の足にしっかりフィットして歩きやすいです、買ってくれてありがとうございます」


私は満面の笑みで蒼麻君の方を見て感謝の言葉を言いました。


「っ、ど、どういたしまして…じゃあ帰るか」

「はい」


そして私達は電車に乗りました。

たまたま人があまり乗っておらず椅子がたくさん空いていたので私達は一緒に座りました。

雑談に花が咲き、雑談が終わり少しの沈黙が流れました


「今日のもしかして、怖がらせちゃった?」


蒼麻君が申し訳なさそうに呟きました。

その声には本当に心からの謝罪が込められているのがわかりました。私は彼の顔を見つめ、深く息を吐いてから、穏やかに答えました。


「大丈夫です。私が大変な時に、守ってくれてありがとうございます。確かにちょっと驚きましたけど、蒼麻君がいなかったら、あの変な人達にいろいろされていたかもしれませんし。」


その言葉を伝えると、蒼麻君はほっとした表情を浮かべ、少し安心したように見えました。

電車の揺れに合わせて、私は蒼麻君を完全に安心させるために蒼麻君の肩に寄りかかりました。

私たちの間に流れる穏やかな時間が、あの出来事の余韻を少しずつ和らげてくれるのを感じました。


駅から家に帰る途中にあるスーパーにつきました。


「蒼麻君の好きな料理はなんですか」

「そうだね~、じゃあ炒飯で」

「わかりました」


私は早速野菜コーナーへ向かった。炒飯に欠かせないネギや玉ねぎを手に取ります。もちろん新鮮なものを選びました。

今度はお肉コーナー

炒飯にいれるお肉は豚肉がオーソドックスでしょう、しかし蒼麻君はスポーツマンです、ここは鶏胸肉のほうがいいのではないでしょうか


「お肉は鶏胸肉と豚肉、どっちがいいですか?」

「鶏胸肉でも作れるの?」

「まあ、作れますね」

「じゃあ、鶏胸肉で」

「わかりました」


だったら片栗粉も買わないと


「塩と、胡椒と醤油はありましたよね」

「さすがに買ってるよ」

「よかったです」


あとは卵だけかな


「よし」

「これで終わり?」

「はい、後は会計だけです」

「…アイス買わね」

「いいですね」


そしてアイスを買い会計を済ませ家に帰りました。


「すいません荷物、持たせてしまって」

「いいって、荷物持ちは男の仕事だから」

「…わかりました」

「どこに置いとけばいい?」

「キッチンでお願いします」

「了解」


まずは鶏胸肉に下味をつけるところからですね


「じゃあ、おれは風呂掃除してくるから」

「いいですよ、家事は女の仕事ですから」

「いいって、今日は渚も疲れたでしょ」

「まあ、はい」

「だったら、体には正直にならないといつか壊れるよ」


その言葉にはなぜか説得力がありました。


「普通におれも入りたいからね…風呂掃除が終わったら洗濯もするから見られたくないのは今入れてくんない」

「わかりました」


私はパンツと下着を洗濯機に入れキッチンに戻った。

蒼麻君の期待に応えたい気持ちで、少し緊張する。でも


「大丈夫、頑張ろう」


自分に言い聞かせ、材料を切り始めた。

まず塩、胡椒、少量の醤油に鶏胸肉を10分ぐらいつけ、その後片栗粉をまぶし、ネギ、玉ねぎ、片栗粉をまぶした鶏胸肉を炒めます

程よく炒まったところで卵を流し入れ、ご飯と一緒にさっと炒める。最後に塩胡椒を少しまぶし、蒼麻君の目の前に出した。


「できたよ、蒼麻君」


私は笑顔で風呂掃除を終えバラエティー番組を見ていた蒼麻君に声をかけ、テーブルに運んだ。


「これ…すごく美味しい!鶏胸肉が柔らかくて、炒飯とのバランスも完璧だよ。」


その言葉に、私の頬がほんのり赤く染まり、思わず視線をそらす。


「そ、そうですか?ちょっと手を加えただけですけど…」


心の中で、蒼麻君の反応にほっとしつつも、少し照れくささがこみ上げてきます。こんな風に褒められるなんて…少し恥ずかしいけれど、やっぱり嬉しいです。


蒼麻君がさらにもう一口食べるのを見て、私は満足げに笑顔を浮かべ私も食べてみた。


「美味しいですね」

「だよな」


自分でもこれは上手いって自身を持って言えます


bbbサイド


ごめんね、渚ちゃん、これはあの人の指示だから、耐えてね、蒼麻君もね


渚サイド


体が暑い


「はぁ、はぁ」


私は蒼麻君が食器を洗うといったのでお言葉に甘えて、私はお風呂に入りリラックスタイムに突入し、ついさっき、髪も乾かし終わったところでした。


「なん、で」


私は、自分の身体の中で何か変なことが起きているのを本能的に理解しました。


「そうま、くん」


私はその言葉を最後に記憶がありません

しかし、これだけは言えます

この日を境に蒼麻君が私のことをいつもと違うように見られる感じがします。










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