第4話 電話番号教えて
ぽたぽたぽたぽた……
朝から降り続いている雨は止むことなく地面を撃ち続けている。
「今日は一日雨だったね」
「仮に。仮にだよ? このあとすぐに雲一つない青空になったとしてもわたしの勝ちだと主張するほど器は小さくないよ」
「間違いなく今日の天気は雨。朝から放課後まで降ってるのならそれはもう雨なのよ」
「はぁ……全然当たらないなわたしの占い」
「本格的に占い師として商売をする前で良かったよ。今のうちにスランプになってれば将来は絶対当たる占い師ね」
「スランプじゃなかった時期? えーっと……最初からスランプだったかな。若い時の苦労は買ってでもしろ的な?」
「のりたま占いかぁ……準備はしてあるの。でもまさか自分でやることになるなんて考えてなかったから、その……大容量のを買ってきちゃって」
「花占いってあるでしょ? 好き嫌いって言いながら花びらを取っていくやつ。でもあれって花びらの枚数を数えたら偶数か奇数で結果がわかっちゃうじゃない? それに花もかわいそうだし」
「だからわたしは考えたの。花の命を無駄にせず、すぐに結果がわからない占い方法はないかなって。そして辿り着いたのがのりたま占いってわけ」
「のりたまの中のたま……黄色いやつを好き嫌い好き嫌いって言いながら最後の一粒になるまで分け続けるんだ」
「苦労した分なんだか当たる気がしない?」
「でもでも、たまじゃなくてのりでやってもらおうと思ってたの! 数は少なめだし大きいからやりやすかなって」
「その『でも大容量だしな……』みたいな目をやめて。わたしが悪者みたいじゃん」
「もし心が折れて逃げ出しそうになったら個包装のやつでいいよってちゃんと情けをかけようと思ってたから」
「と、いうわけでさ。心優しいわたしに免じて個包装ののりたまで占ってもよろしいでしょうか?」
「え? 個包装に代えていいかをのりたま占いしろって? それはその……あまり意味がないんじゃないでしょうか……」
「わたしは別にやってもいいんだよ? でも、見届け人は必要だと思うの。絶対に不正はしないと占いの神様に誓ってもいいよ。ただ、それでもあとで疑われるのは絶対にイヤ」
「間違いなくひと粒ひと粒、丁寧に分けて占う過程を見てもらわないと意味がないと思うんだよね」
「本当にこの大容量パックを使っていいんだよ? その代わり、一緒に地獄を見ることになるよ? それでもいいの?」
「うんうん。そうだよね。苦労をすればいいってものじゃない。そういうのは昭和で終わり。わたし達は令和を生きていて占いで未来を明るくするんだから」
「とりあず少しでいいからやれって? そ、そうね。別に中身を全部出すことはないもんね。あー……出したのりたまをまた戻すのは不衛生だから明日の昼休み……はまたなんか言われそう」
「あの、よかったらだけど……休みの日に会えないかな? 放課後だけだとやれることに限界があるし。それこそのりたま占いなんてすっごい時間が掛かるしさ。占いに使ったのりたまはわたし達がおいしくいただきます」
「ほんと!? じゃあ、今度の土曜日にうちに来て。そう、うち。外じゃダメだよ。風で飛んでっちゃうから」
「っていうかさ、わたし達こんなに占いの練習してるのに連絡先知らないってすごいよね。クラスのグループには入ってるからなんとなく聞いてなかった」
「せっかくだから電話番号占いしようよ。下四桁の数字を足していって、一桁の数字になるまで繰り返すの」
「だ・か・ら。電話番号教えて」
「見事に数字がバラけてるね。わたしなんてほら、ふふん。ぞろ目だよ」
「占いの結果にはあんまり関係ないんだけどね。えーっと、じゃあ数字を足していって……8ね。え? 7? あははは。計算間違えちゃった」
「7の人は今年運命の出会いがあるかも、だって。やったね! ちなみに8だと出会い運は最悪って書いてある。よかったね。わたしの計算ミスに気付いて」
「そういう意味では運命の出会いなのかも。なんてね」
「わたし? ふっふっふ。なんと同じく7です! 運命の出会いがあるかもしれないしれない二人が出会った。これは完璧に占いが当たってるね。まあ、結果をスマホで調べただけで占ったのはわたしじゃないんだけどさ」
「ねえねえ、料金プランはどんなやつ? 電話し放題……ではないよね。五分までは無料のやつ? あ、わたしと一緒だ」
「運命の出会いをした者同士さ、たまには電話しない? アプリの通話機能じゃなくて、あえて電話。絶対縁起がいいもん」
「それに、うっかり他の人にかけちゃうこともないだろうし」
「星を見ながら占いの練習をするのに電話したいの! リアル星座占い的な」
「五分で終わるから! ね? 電話の方がいいでしょ」
「さすが、理解があってたすかるー」
「の、のりたま占いのことは忘れてないよ。話を逸らすためじゃないし。うちでやるって決めてるし」
「すごーく地味な占いだから覚悟してね」
「それじゃあ今日はもう帰ろうか。夜に電話するから絶対出てね。雨が降ってるから星が見えないって? それはどうかな。なんだかこれから晴れそうだよ」
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