第4話 悩み事とパンツ

 突然だが、今とてつもなく悩んでいることがある。それは部活に入るか否かだ。

 運動は好きだけど強制させられるのはなぁ…。中学の時だって一年で辞めたし…。

 しかし、俺の一日の運動量といえば登校だとバス停までの徒歩十分のみ。

そう考えると少し不安になることがある。

 ま、入部届の提出日までまだ時間はあるしゆっくり考えるか。


「…今日は挨拶しようかな」


 いつものように凛として座っている彼女の姿。少し早歩きでベンチまで向かい、深呼吸をする。


「お、おはよう」


 彼女は俺の言葉に驚きながらも、ゆっくりと本を閉じてこちらへ顔を上げて微笑み、返してくれる。


「おはようございます」

「隣…いい?」

「はい、どうぞ」


とは言ったものの、やはり照れがあったので、彼女との間に一人分のスペースをあけた所に腰を下ろした。

——気まずい、何か話題を振らないと…。


「本が好きなの?」

「はい。昔、病気でずっと病院にいた私にいろいろな本を読み聞かせてくれる子がいたんです。それがきっかけですかね」

「そっか。実は俺もこう見えてよく休日は家で本読んでるんだ」


 彼女にとって会話しやすそうなものといえばこれしかなかったのだが、やはり正解だった。出会って間もない俺に彼女はいろいろな話をしてくれた。

 病弱で、ほとんどを病院で過ごしていたという幼い頃の話。そして、その時に出会い、よく喋りかけてくれたという男の子の話。楽しそうにそんな話をする彼女との時間は、時の流れを忘れてしまうほどに楽しかった。

 これから毎日、ここではこうやって過ごせるのだろうか。そんなことを考えていると、いつの間にかバスが来てしまっていた。


「バス、来ましたよ」


 そう言って立ち上がり、俺に背を向ける彼女の後ろ姿を見て、俺の口からポロリと言葉が出てしまった。


「白…」

「えっ?」


 振り向き、あることに気づいた彼女は慌てて

カバンに引っかかったスカートを下ろした。

 顔を真っ赤にしてこちらを睨みつける彼女から目を逸らす。


「えっと…ごめん…」

「見ましたよね…?次は許しませんからねっ!」


 そう言ってから、頬を膨らませバスの乗車口まで歩き、立ち止まった。


「一緒にどうですか?」

「どういうこと?」

「一緒に、席に座りませんか?」


 意外な誘いに戸惑いを隠せなかった。

しかし、これからバス停での十分間——そしてバスの中での十五分間きみと二人で話ができると言うのなら、それ以上に嬉しいことは無いだろう。


「…えっと、よろしくお願いします」

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